59話 敗北のあとの無双

ユウ、小宮、松山、江ノ島side
「てっきりお前らと一緒にいると思ったんだけどな、橘と天城。」
「…一緒じゃないわよ。」
「あの二人だからね…無闇に突っ込んでないといいけど…」
「さすがにあいつらもそんなに馬鹿じゃないだろ？仮にもお前らのグループリーダーなんだろ？」
「…違うわよ。私たちは彼のグループ抜けたわ。」
「どうしてやめたんだ？」
「天城くんの身勝手な行動についていけなくなってね…」
「なんかあったのか？」
「…そう言えば私たちのことちゃんと話してなかったわね…神崎くんって覚えてる？」
「ああ、橘の…」
「…その神崎くんがリーダーを務めるグループが、スフランで全員殺されちゃったの…」
「神崎が？死んだのか？」
「うん…ほかの4人も…副委員長の花園さんだって…」
「誰に？」
「魔族の男と魔神の妹のミーシェだ。その二人に神崎達は殺された。」
「そいつら探さなくていいのか？」
「探してるさ。でも桁外れに強いんだよ。アーメルに巨人が攻めてきた時だって一人で一掃してた。」
「…ふーん。」
「その時のこともう1回あの時のダンジョンで特訓することになったんだけど…私たちのグループ、グランドドラゴンっていうレジェンド級の魔物と会っちゃって…小宮くんのおかげでなんとか倒せたんだけどね…」
「大体予想はつく…大方天城が手柄をかっさらってったって所か。」
「そのせいで小宮くんが怒っちゃって…」
「僕は別に…」
「…さすがに天城くんとは一緒に居づらいと思って小宮くんについて行ったって訳。」
「あいつらなかなかやってんな。」
「あの時も無鉄砲に突っ込んでたから…今回はそんな事になってないといいんだけどな。」
「まあ、俺たちの中で一番強いのは天城だろ？なら心配ないだろ？」
「うん。」
「…一番強いのは藤山くんだと思うけど。」
「まあ強いのは確かだ。余計な心配はいらないだろう。」
「…そうね。」


天城＆橘side
「そんな空にいないで降りてきやがれ！」
「それは出来ない相談です。私は綱渡り担当ですので。」
「何ふざけたことを言ってるんだ！早くこの扉を開けろ！」
「せっかちですね。申し遅れました。私はマリク様率いるサーカス団の綱渡り担当、ピエールというものです。」
天城と橘は綱の上でこちらを見つめるピエールと言う男と対峙していた。
「とにかく落ち着いてください。ショーはまもなく開始致しますので。」
「ショーだと？」
「はい、私の仕事はここに来たお客様を取っておきのショーで歓迎することです。」
「ごちゃごちゃ言ってねえでとっとと降りてこいっつってんだよ！」
「乱暴な言葉遣いですね…私のショーに野次を入れる気ですか？静かに見ていてください。」
そう言ってピエールは綱の上で逆立ちしたりなどの、ショーを始めた。
「くそっ！とっとと扉を壊して次のところに行こう。あんなのに構っている時間はない。」
「…でも一発ぶん殴らねえと気がすまねぇ！そうだ天城！お前の魔法であんな綱切っちまってくれよ！」
「そうだな！、シャイニングアロー！」
「おやおや、直接邪魔をしに来ましたか…ですが私の綱は特別製です。そう簡単には切れませんよ？…それともう1つ魔法は跳ね返すのです。」
「なんだと？！」
綱に当たった魔法は2人の元に跳ね返ってきた。
「くそ！避けろ！賢治。」
間一髪でそれをかわした。
「てめえ！卑怯だぞ！とっとと降りてきやがれ！」
「まあまあ落ち着いてください。では次はこのフラフープを使って端から端まで渡ってみせましょう。」
「そんなのはいいから降りて来いって言ってんだ！いい加減殺すぞ！」
「ははは…サーカスの最中にそれはよくありませんね。そろそろ私も怒りますよ？」
「知るか！天城、斬撃ならどうだ？！」
「わかった！聖剣波！」
聖剣術で斬撃を飛ばした。
「何度も言っているでしょう？野次はいれないでください。仕方ないですね。」
ピエールはフラフープでそれを止めた。
「そんな…」
「さあ、練習は終わりです。ショーの時間ですよ。」
そう言うと壁から無数の綱が出てきた。
「なんだ！？」
「この空間に綱がある限りあなた達に勝ち目はありません。さあどこからでもかかってきなさい。」
ピエールは一番低い綱まで降りてきた。
「は！そんな低くていいのかよ？殴り放題だぜ！」
そう言って橘が突っ込んだ。
「言ったでしょう？私の綱は特別製なんです。」
壁から飛出てきた綱が蛇のようにうねり、橘に向かっていった。
「がはっ！」
「賢治！でくそっ！よくも賢治を！はあ！」
「頭がないですね…それでは二の舞ですよ？」
バシン！
「ぐえっ！」
「あなた達は本当に勇者ですか？」
「く…そ…」
「え？まさか今から気絶する気ですか？あれだけで？それはつまらないのでやめてください。」
綱が天城と橘の腕を掴み吊るしあげた。
「はな…せ…」
橘は気絶している。
「つまらないですねぇ…」
「ぐあぁ！」
綱がうねり、天城の体を打つ。
バシン！
「ぐはっ！」
バシン！
「か…あ…」
「そっちで気絶している勇者を起こしなさい。」
綱が橘の体を打った。
「があぁぁ！」
「賢…治…」
「本当にこれで終わりなんですか？私たち血の教団の幹部、マリク様と同じ幹部のラギス様を倒したと聞いたのですが…」
バシン！
「ぐあぁ！」
バシン！
「げぇ！」
橘が嘔吐した。
「おやおや、私の美技に酔ってしまいましたか？酔い醒ましにどうぞ。」
ピエールが指を鳴らすと綱から電流が流れた。
「ぐあぁぁぁぁぁー！」
「ぐぅぅぅあ！…頼む！やめてくれ！」
「ん？何か言いました？」
バシン！
「ぐあぁ！…はぁ…ぐっ！」
「本当につまらない…」
「だのむ！…やめでぐれ！」
「汚いですねぇ、嘔吐物まみれではないですか。」
バシン！
「きえぇ！」
「汚い悲鳴だ。これが女性だったら楽しかったんでしょうが…男となってはただただ汚いですねぇ。」
「お、お願いじまず！だずげで！」
「聞こえませんね…」
バシン！
「くはっ…！」
「本当に失望しました。…弱すぎる。そろそろ幕引きの時間ですね。トドメをさしましょう。」
電流を帯びた綱が二人の首目掛けて放たれた。
「ぐ…ぞっ…」
「賢…治…」
スパン！
綱は二人に到達する前に切れた。
「誰ですか？私のショーの邪魔をするのは？」
「はぁ…ショーだのなんだのうるせえな、お前ら。」
ピエールが放った綱は優が投げたナイフによって切れたのだ。


優side
「おや？私の綱をナイフで一発ですか…なかなかやりますね。」
「藤山。」
「…私と菜々で援護する。二人はあいつを…」
「いい。面倒だ。」
「でも！」
「藤山、それはさすがに…」
優は懐から数本のナイフを取り出した。
「すぐ片付ける。お前らは天城と橘のこと頼む。」
「…わかったわ。」
「松山…」
「…彼なら大丈夫よ。行きましょう。」
「優くん…気を付けて…」
「ああ。」
3人は2人の元へ駆けていった。
「本当に1人でよかったのですか？後悔しますよ？」
「ご心配どうも。でも自分の心配をした方がいい。」
「ふっ…口だけは達者ですね！」
ピエールはフラフープを取り出し、こちらに投げてくる。
「…いや、使い方違うだろ…」
優はそれを難なく躱す。
「まだまだ、団長程ではありませんが…ジャグリングも得意なんです！」
数発の玉を取り出したピエールはそれを空中で回すとこちらに投げてきた。
「客に向かってジャグリングを投げるなんてな…」
「ごちゃごちゃうるさいですねぇ！」
「お？このジャグリング追尾能力でもあんのかよ！」
ジャグリングの玉は進路をかえ、こちらに飛んできた。
「ちっ…」
優はその玉一つ一つにナイフを器用に投げ爆発させた。
「なんだよその玉！危険だろ？！」
「まだまだ行きますよ！」
ピエールはまた、玉を取り出した。
ヒュン！
「な！？」
取り出した直後に玉にナイフが刺さった。
「取り出すのが遅いな。俺のナイフの方がお前のジャグリングより早かったらしい。」
「くそっ！」
ピエールはその場から飛び退き爆発から免れた。
「やりますね…どうです？マリク様のサーカス団にいらっしゃいませんか？ナイフ投げとして。」
「…めんどくさい。」
「そうですか！」
ピエールはフラフープをふたつ取り出し片方を優の後ろに投げた。
「なんだ？」
「私はこんなこともできるのですよ！」
ピエールはフラフープをくぐるとその場から消え、もうひとつのフラフープの中からその姿を現した。
「うお！あぶねえ…すげえなそれ。」
「よく避けましたね…でもこれならどうでしょう！」
ピエールはフラフープをいくつも取り出し周りを埋めつくした。
「なるほど…お前が持ってるやつが全部に繋がってるわけか…」
「ではこれでも喰らいなさい。」
ピエールは自分が持ってるフラフープにジャグリングの玉を投げ入れた。
「ちっ…まさか…」
優の近くのフラフープから玉が現れ、爆発した。
「はははははっ！どうです？すごいでしょう！」
「ちっ…なかなかきいたぜ…」
「あなたに勝ち目はありません！死になさい！」
「なるほどその原理が正しいのなら…」
「何を…」
優は後ろにあるフラフープに無数のナイフを放り込んだ。
「…まさか！」
ピエールが頭上に掲げているフラフープから無数のナイフが現れた。
「やっぱりこっちからも繋がってるんだな…」
ザクザク！
「ぐはっ！」
「策士策に溺れるとはこの事だな。」
「く、くそ…貴様ぁ…」
「おいおい、敬語設定どうした？」
「黙れ！」
この空間にある綱がいっせいに優の方に向いた。
「…死ね！」
「優くん！」
「…藤山くん…」
「藤山！」
「…はぁ…」
「優くん！」
「…めんどくせ…」
ドゴォン！！
「はははははっ！見る影もあるまい！」
「…お前のフラフープ便利だよな。」
「何？！」
その場に優の姿はなく、ピエールの後ろのフラフープに優はいた。
「貴様…」
「お前自分の技に足元すくわれすぎ。」
ザシュッ！
「が…は！」
優のナイフがピエールの心臓に刺さった。
「馬鹿…な…」
「トルネード。」
ピエールの体の中で竜巻が起こりピエールの体をバラバラに切り刻んだ。
「ふぅ…終わりっと…松山、2人の様子はどうだ？」
「…気絶してるだけよ…それよりも…そこまでする必要あった？」
「何が？」
「なかなかすごい殺し方するな…藤山。」
「魔物に食べさせたお前が言う？」
「やっぱりすごい…優くん。」
「それよりも2人はどうする？とっとと起きてもらはないとめんどくさいんだけど。」
「…時期に起きると思うわ。」
「それにしても…汚ねえな…」
「ま、まあ仕方ないよ。」
「おーい、大丈夫かー？」
「ん…こ、ここは？」
「起きたか天城。」
「藤山…そう言えばあいつは！？」
「そこでミンチになってる。」
「…言い方考えて。」
「お前が…倒したのか？」
「まあな。」
「くっ！…負けたのか…俺は…」
「橘と仲良くな。やられたショックでゲロった時はどうしようかと思ったぞ？」
「優くん！」
「冗談だよ…」
「賢治は？」
「あいつはここまでだな。ダメージがでかい。ここで休んでてもらうか。」
「そうか…」
「おら、とっとと行くぞ。」
「あ、ああ…」
やっと合流した6人はマリクが待つであろう宝玉が封印されている、地下室へと足を進めた。


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説明に「」が着いていました。
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