雪が降る世界

lemon

第48話 ~昨日の夢は?~

「眠いだるい今何時…?」
「へー珍しい。まだ一限終わっただけだよ?夜更かししたか。」
「そうじゃないけど。こう見えてモデルって大変なんだからな…。」

昨日の夜のこと、家に帰ったはずの七海から電話があった。
'今日泊めてくれねぇか?'
「…?」

ということだ。深い理由はないとか言ってたくせに大波乱だった。もっと自分の心配すればいいのに。
俺も七海もまぁ目立つ部類で。制服もアレだし。最近は病院と家と学校と事務所しか行ってなくて注意が欠けていたというか…その…。今回の件は、俺が馬鹿で決定だ。
こういう時に楽観的だと周りが困る。それは俺も分かってる。
──
「こま、ここのアパートの入口にストーカーいるから鍵しっかりかけて。」
「え、なんでお前襲われてねぇの?」
「別れる前から分かってたんだっつの。こま気づいてるか心配で引き返して来たんだよ。」
「嘘だろ。いつから?」
「校門出てすぐ。」
それじゃ…通学路も家もバレちゃってるじゃん…。
そんな一般人みたいなことで絶望していると、プロにしか分からない恐怖が追い討ちをかける。
「それに、相手が複数いたらこまはどう頑張っても太刀打ち出来ない。結局、喧嘩に最後に勝つのは力であって理論じゃない。…俺がいたところでどうにもならんが…。」
「大丈夫、ちゃんと戸締りしたよ。」
「だから心配で来たんだろーが。」
「えぇ…?」
「このアパートボロいんだから信じきるな。」
「駄目じゃん。」
「…もし、何かあったら警察来るまで抵抗しなきゃいけない。」
「今呼ぶのはナシ?」
「俺の思い込み説も一応ある。事が起こってからだ。」
さすがじゃん。これでも冷静とか。俺は表には出てないがめちゃくちゃ焦ってるからな!
ご飯食べたり風呂入ったりしてると知らないうちに10時くらいになっていた。
ここまで何もなかったし、俺はもう寝たい。けど七海を起こしとく訳にもいかねぇしどっちかというと俺の方が起きなきゃいけねぇ。それが驚く程に辛かった。日付けがかわっても何も無く。逆にピンピンになりかけていた時。玄関の鍵が開く音がした。
「遅かったか…。こま、開けられちゃったわ。警察呼んで。」
「もっと焦ってもらえますかねぇ…。」
「とりあえずリビングに来られなければ何とかなる。」
そう言ってドアの前で七海は座った。お前怖くないのか。
誤算だったのは、七海が最近運動できないせいで体力がかなり落ちていた事。普通に開けられた。
警察が到着したのは15分後くらいで。それまでは七海がいろんな手で止めてくれていた。俺は部屋の隅に隠れさせてもらって。
──

「俺が行ってやろうか!」
話を聞かせた後、加衣が意味不明なことを行ってきた。そもそもなんで七海があの強面のおっさんずに勝てたかって気になんねぇのかこいつは。
「あのな…。」
「俺だったら力でもいけないことはない気がする。」
「3人いたよ。」
「七海どうやったの…?」
「ちょっとびびったんだけど…。ひたすら憲法を唱えてた…。たまにπの証明はさんで。」
「狂気感じるわ。」
「ぶっちゃけストーカーより怖かった。」

「引っ越しすればいいじゃん。」
「金ないし。」
「はぁ…?モデルだろーがよ。」
「加衣みたいな家柄じゃねーもん。今でもわりといっぱいいっぱいさ。安全なアパートは家賃高いから。」
「春瀬のところで養ってもらうn」
「やめとけ。」


今年は去年と違い、夏が終わるまで基礎力をつける別のカリキュラムに投じられた。もともと理系教科が多めだったがさらに鍛えるらしい。
それを文系チームに言ってみるとよくわからん反応されたな。まぁ俺らに古典とかが増えるようなもんだし。あ、七海は来年理転して好きなことだけやるって。めちゃくちゃ吹っ切ってる。どっちでもいけるっていいなぁ。

「また何週間かしたら模試ね…。多いんだよ。どんだけ受けんだよ。どうせ七海が首位なのにさ。」
「だからそれは違うじゃん。こまだって国語できれば普通に越えれるし。」
「いやハードル高…。春瀬に託すか。」
「待って脱線してる。俺が大変になる方向に脱線してる。君らとゼロ一つ違うんだよ?現実見ろ。頑張れこま。」
「俺さらに1つゼロ多いんだけど何これ?え、異世界?」
「加衣は数学しか出来ないもんな。どんまい。」
「いいよもう…。一番になるから。弓道で。」
「七海が出来なくなったからって…。じゃあ存分に邪魔しようか。」
「やめて。それ昨日夢でみたわ。お願いだからアピールポイントちょうだい。」
儚すぎてなんともいえない。驚くまでの無個性さすがだ。悪いが俺も一番狙ってるよ。

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