雪が降る世界

lemon

第28話 〜命の音〜

あれは結局夢だった。先生にドナー聞いてみたけど進展なし。
今日は12月28日…。大晦日まであと3日。
澪と瑠璃の寿命。クリスマス以降瑠璃達とは会っていない。だから。
「まだ大丈夫そうだね。」
「まぁ…。でももう結構しんどかったり…。」
まずは澪に。
別に悲しくないわけじゃない。ただ、自由奔放に生きてる俺が泣いてしまえば澪の頑張りは全て無意味になる。それだけは避けたい。澪が、蟠りを残したまま彼岸に渡らないように。
「璃久、瑠璃のとこ、行ってあげなよ。会いたがってたよ。」
「もちろん行くさ。」



七海が言った通りになったら。
行き場もなく独りになるんだ。
信じてもいない神様に、強く願う…。置いて行かないで、俺からもう何も奪わないでくれ。
「あ、璃久。なんか…久しぶり。」
「そうだね。ごめん、全然来れなくて。」
「いいよいいよ。璃久は私のためにいるんじゃないから。」
「瑠璃は、ずっと…俺のこと覚えててくれるか?」
「忘れたくても忘れられないよ…。こんなに楽しかったのに。それに、また何十年かしたらまた会えるでしょ?」
「ごもっともで。」
薄い梅干しを食べてるような感覚に覆い尽くされる。後味も気持ち悪い。
いろんな人が霊柩車で運ばれるのを見てきた。その時でも、こんな気持ちにはならなかった。…難儀なものだよ本当に。瑠璃だって、そのうちの1人に過ぎない。
「じゃあ…今日仕事あるから、もう帰るね。」
「…モデルだっけ。」
「え、なんで知ってんの?」
「看護師さんに、雑誌貰ったの。」
「へぇ…もう買ってたんだ。来月のも見せれたらなぁ。」
「あはは、できたらね。」



「あぁやっと来た…。遅いよこま。」
「ごめんごめん、病院行ってた。」
「…帰りも行くか?そろそろだろ。」
「いいの?」
「当たり前だろ。」
帰りって…。何時になるか分かんねぇだろう…。やっぱ七海のこういうとこ好きだなぁ。さすが一流…。

「これ…着るのか…?」
「あぁ…。俺もびっくりだ…。」
控え室にあった今回の服は、驚きしかない。高校生なんですが。
「マネージャー、これ合ってる…?」
「それそれ!いいから着替えて!」
俺七海ほどスタイル良くないって。確かに白いけども。いやこの場合白いよりかはこんがりしてる方がいいような気もする。
「ダメージありすぎ意味分かんねぇ。」
「いいじゃん七海完璧なんだから。」
「こまは特殊だろ?」
「まぁ…。」
確かに特殊…。でも大変なんだよ?アルビノって。しかもオッドアイだから視力悪いし…。コンタクトなしじゃ生きてけねぇ。
「これ着る人いんのか?」
「微妙だよな。
それより、モデルとかOK出たの?」
「言ってねぇから。」
「絶対危ないだろ。」
まぁいいか。所詮他人だし。
今年の撮影は今日が最後で次は来月ねぇ。
…本物の俳優になったらもっと楽できるかな。経済的に。いつか七海に言ってみよ。
「終了でーす。」

「よし、急げ!」

やっぱ七海速い…。もう病院見えてきたわ。
「じゃあ俺ここで待っとく。ゆっくりしてこいよ。」
「ありがと。」



「ごめん、大丈夫?」
「え?!仕事は?」
「終わったよ。…心配だから。」
「…璃久らしい。
あーあ、もっと早く逢えてたら良かったね。」
「ホントにな。」
「ねぇねぇ、こっち来て!」
「?何?」
──────…
「えっ、えっ、き、急にどうした?」
「…。璃久の心臓の音、聞いてみたくて。」
本気でビビった…。急過ぎ…。前置きとか言おうぜ。ってかさっき全力で走ってきたんだが。
「私のと、全然違う。力強い。」
「あ…。」

気づいた時にはもう手遅れだった。
「え…璃久…?」
「ホントだ…全然違う…。」
消えかけの、ロウソクみたいで。
自分の力の無さを思い知らされる。
「…璃久、恥ずかしい。」
「あぁ…ごめん。…女の子ってあんまり筋肉ないんだね。」
「うん場所が悪いかな…!」
…?

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