第17話 〜有名人〜 春瀬said

(大事な人材だ──)
「夢依、危ないから。」


割と自由に育てられた方だと自分でも思ってる。身の回りは全部家政婦さんがいて。
『春瀬』
世界でも有名な金持ちの長男として生まれた俺は、いずれ跡を継がなきゃいけない。そのためにいろんな英才教育を受けてきた。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語…。もちろん理系の科目も人並み以上にやった。それが嫌だったわけじゃない。それより、すっごく楽しかった。世界を見ているような、そんな気持ちになれて。
けど世間はそんなことなかったんだ。
面倒くさそう、大変だね、理解できない、遊べばいいのに…。確かに、友達とかと一緒に遊んだことはなかった。俺は友達とわいわいするよりも、頑張って勉強して、父さんやじいちゃんが喜んでくれて、褒めてくれることの方がずっと好きだった。その方が自分のためになる、利益になる。　でも父さんが俺を縛っていたわけじゃない。むしろ友達と遊ばない俺を心配してくれた。まぁそりゃそうだよね。いつか、世界を渡る存在だから。
俺は俺の夢をもって生きていいと。家の人には言ってもらえたから、外国語習って、ダンスやって。それでも。
「いいよなー金持ち。」
「どうせ父親の金だろー」
「…。」
うん…。まぁそうなんだけど。って、何回このやり取りをしたか。
そんなこんなで高校生。一応人付き合いだけ良好にしとけばなんとかなる。今までみたいに頑張らなくても。名門に入れたんだ。1番じゃなかったけど父さんは喜んでくれた。
今思えばここに来たのはある意味で刺激が強かった。
『七海』
彼も俺と同じなんじゃないかと。有名な人の息子。きっと分かり合える。そう思って話しかけた。同じクラスって奇跡じゃん。けど最初は。
「俺と関わるな。鬱陶しい。」
正直、いや、言うまでもなく絶句した。そこまで人を避けるとは。
ミステリアスで謎が多い七海。でもやっぱり無理してたんだと、今はすごく実感してる。
初めて俺に成金だと言わなかった。大変だねとも、言わなかった。理由は俺にも分からない。自分から話してくれるまで、俺は待つ──