西南 of the dead

プレーリードッグ

プロローグ

漆黒の闇だった。

先程まで辺りを照らしていた月明かりは、雲に遮られてしまい、もう届かない。
何も見えない。だが、その気配はひしひしと感じていた。闇の中に、確実に奴らがうごめいている。

刀の柄を握る右手が、じわりと汗ばむ。こんなことなら、もう少し剣の鍛錬を積んでおけば良かったと、今更ながらに後悔した。

いや、後悔というのなら、まずこんな場所に来るのではなかった、というところからだろう。随分と安請け合いをしてしまったものだ。

一体二体……三体……。周囲の唸り声から察するに三体、いや四体か?

「来るなら来い……化物め」

こんなもの、幕末に比べればなんてことはない。そう無理矢理自分に言い聞かせた。そうでもしなければ、とても冷静さを保てない。

過去、幕末の動乱の中に身を置き、化物のような剣士を何人も見てきた。それが明治の世になり、そんな化物共を相手にせずともよくなったと大喜びしたものだが、まさかこんな日が来ようとは。

「ぁ……ゔぁぁ……」
「ぐぉぉ……ぅ」
「っげぅ」

聞くだけで寒気がするような、この世のものとは思えない、低く掠れた唸り声。比喩ではなく、本物の化物が相手なのだ。唸り声から位置を推測し、刀を振り上げる。

今日は長い夜になりそうだ。

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