野生でもお嬢様は育ちますか?

石堂雅藍

ゴブリンと賢狼とワイルドボア

 ワイルドボアから逃げ切った後、ペリトとミウイは川を迂回し集落のある方を目指してテクテク歩いていた。歩くこと間も無く、見憶えのある道に出たので、二人で先程起きた出来事を村長に報告する為、今持っている情報を纏める。

「今日は、なんか色々ありすぎたよな」
「そうね。色々ありすぎたわね」

 先程まで俺たちは、ある意味大冒険をしていた。滅多に見つからないタマゴダケの群生地を発見し、お宝を手に入れた気分になっていると、これまたこの辺りには居ないはずのワイルドボアというC級討伐対象の魔物に出くわした。そして、命からがら逃げ出してきたのだ。大人であれば深刻な事態なのだろうが、子供の俺たちにはそれが大冒険にしか思えず、興奮しきっていた。

「いや〜、しっかし死ぬかと思ったよな〜?」
「一時はどうなるかと思ったわよ!まさかの、ワイルドボアよ?あり得ないでしょ!」
「だよな〜!でも、その後ミウイが急に泣き出した時の方が焦ったけどな!」
「もう!それは言わないでよ!私だって恥ずかしかったんだから!」

 ミウイが顔を赤くしてそっぽを向く。でも本当にびっくりしたんだ。普段しっかり者のミウイが泣く事なんて滅多に無いから、まさか怪我でもしたんじゃないかと思ってしまったくらいだ。泣き止んだ後に話を聞いて見ると、タマゴダケの入った籠を忘れたのが悔しくて泣いたらしい。こいつ意外と食いしん坊だったんだな。そんな事を思いながらミウイを見ると、なによと言ってまたそっぽを向いてしまった。

「でも、なんて報告するんだ?タマゴダケの事は良いとしても、ワイルドボアはな〜。あんなの、大人達でも倒せないだろ!」
「うーん。簡潔にワイルドボアが出ました!って報告じゃ駄目かな?ちゃんと報告だけはしておかないといずれ犠牲者が出ちゃうわ。大人なら逃げ切れるかもしれないけど、採集に行く子供は私達だけじゃないし。それに、出た場所があまりにも集落に近すぎるわ」
「あ〜確かにそうだな。だけど信じてくれるか?しっかしワイルドボアはヤバイよな。隣の家のポクテなんか、ドンくさいから絶対に一発で喰われちまうよな!」
「あはは!確かにポクテなら…って笑い事じゃないわよ!」
「いやいや!笑ったのお前だからな!俺が笑ってたみたいに言うなよ!」
「あら!そうだったかしら!まぁ、どうだって良いじゃないそんな事」
「そんな事って、お前……」

 ひでーなこいつと心の中で思っていると、自分たちの向かっている方角から、風を切り裂きやって来る白銀の大きな狼の姿が見えた。

「あっ!賢狼様だ!おーい!」
「ほんとだ!タルフェ様~!そんなに急いでどうしたんですか~?」

 くぅ〜、やっぱりかっけぇなぁ!あの堂々とした姿!生まれついてのハンターって感じだぜ!いつか俺も賢狼様のようなかっこいいハンターに絶対なってやるんだ!そんな事を考えながら、俺たちは大きく手を振りながら賢狼様に声を掛けた。

「おぉ!おぬし達か!すまぬが、今は立て込んでいてな。子供達が怪我をしてしまったので、エントの泉へ向かっているところじゃ。それではの!」

 だけどとっても急いでいたのか、賢狼様はすれ違いざまにそう言い残し、立ち止まることなく風のように去っていった。あんなに急いでどうしたんだろう?賢狼様とおしゃべりできなかった事を残念に思っていたが、ふとあることに気が付いた。

「ペリト残念だったね。賢狼様とお話しできなくて」
「な……なぁ……ミウイ。今、賢狼様なんて言ってた?」
「ん?なんか子供たちがどうって言ってたわね。」
「あのさ俺、見ちまったんだ。賢狼様が咥えてた籠の中に傷だらけのチルチル様がいたぞ」
「えっ!?」
「だから!ぐったりした血だらけのチルチル様が入ってたんだって!」
「み……見間違いじゃ……」

 俺が見間違いじゃないと言いうと、ミウイの顔がみるみるうちに真っ青になる。これは大変な事になった!チルチル様が大怪我をして死にそうだ!互いに顔を見合わせ、早く村長に知らせなくてはと集落へ急いだ。

 息を切らしながら村へ戻り、俺達はまず大人を探す。しかし、どの家を覗いても、大人たちは居なかった。今は昼どきを少し過ぎたあたりだから、きっとまだ狩りから戻ってきていないか、村の畑で作業をしているのだろう。二人で必死に大人を探していると、村共有の薪置き場に人影が見えた。あれは、ピルクおじさんだ!

「お~い!ピルクおじさ~ん!」

 見つけるや否や大声で名前を呼び、ピルクおじさんも気がついたのか大きく手を振っている。

「おー!ペリトとミウイじゃねーか!今日も元気いっぱいでなによりだ!つうか、いつも一緒で本当に仲がいいなお前たちは!がはは!」

 ピルクおじさんは、「お熱いねーお二人さん!」と言い盛大に笑って、ミウイは顔を赤くしながら言い返していた。

「そ、そんなことないわよっ!変なこと言わないでよ!ピルクおじさん!」
「そうだぜ!んな下らないことを言ってる場合じゃないんだって!大変なんだよ!」
「くだらなっ!?」
「お~?なんだなんだ?大変なことって」
「チルチル様が大怪我をしたんだよ!」
「お、おいっ!それは、本当のことかっ!?」

 横でミウイが遠い目をしながら何かブツブツと呟き、ピルクおじさんはこれでもかという程に目を見開いて、俺の肩をガクンガクンと前後に揺さぶる。

「ペリト!どうなんだっ!早く言えってんだ!」
「い、痛てぇっ!お、おじ、ささささんn!や、やめ!あばば」
「って!お、おじさん落ち着いて!ペリトが白目を剥きかけてるわっ!」

 ミウイが必死に止めると、ピルクおじさんは少し落ち着きを取り戻したのか、「あぁ……すまねぇ……」と謝りながら、再度確認をとってきた。

「ゲホッゲホ!あぁ、間違いないぜ!俺、この目で確り見たんだ。血だらけのチルチル様を!その……ぐったりしてて今にも死にそうだったんだ……」
「おいおい、それが本当だったらえらいことだぞ!賢狼様は何か言っていなかったのか?」
「だから言ってんじゃんか!大変だって!」
「確か……子供が怪我をしたから、エントの泉へ行くって言っていたわ!」
「エントの泉か……こ、こうしちゃおれん!俺はこの事を長に知らせてくるから、お前たちは村の皆を集めておいてくれ!皆畑にいるはずだ!よろしく頼んだぞ!」

 そう言うなり、ピルクおじさんは村長の家まで走っていってしまい、残された俺たちもすぐさま畑に向かい、大人たちを呼びに行った。その後はもう大変だった。ピルクおじさんから話を聞いた村長が緊急の集会を開き、村長の話を聞いた村人たちで広場は阿鼻叫喚と化し、集落の男どもはおいおいと泣き喚き、女たちはあまりの知らせにその場で倒れる者まで出ていた。そもそもなぜ、俺らゴブリン族がこんなにも慌てふためいているのかというと、百年と少し前まで遡らねばならない。

 当時、ナベリスク平原にあったゴブリン族の集落では、人間たちの狩りと称した虐殺、拉致の被害にあっていた。そのあまりにも酷い行いに最初は抵抗したそうだが、人間の使う武器と数に圧倒され、その時の村長がウベスクの森へと移住を決断した。しかし森で一から住む場所を開拓するのは容易ではなく、襲い来る魔物との死闘の連続であったという。今でこそ狩りも採集も出来るようになったが、元々ゴブリン族は農耕の民で争い事は苦手としており、防衛や狩りすらも満足に出来なかった。このままでは持っていた食料も尽き、行き着く先は全滅かと半ばあきらめかけていたゴブリンたち。そんな時に現れたのが白銀に輝く毛を持つ大きな狼であった。その白銀の狼は名をタルフェといい、高い知性を有し、怯える村人たちに何か困ったことは無いかと食べ物をわけてくれ、良き隣人として歓迎すると迎えてくれたそうだ。タルフェの優しさに大層感謝した村人たちだったが、魔物が頻繁に遅い来る現状を鑑みると、この森には住めないかもしれないと声を漏らす。するとタルフェが、お前たちの住める森にしてやろうと言い、付近の魔物を駆逐していった。それから、ゴブリン達は安全になった森で村を築いた。最初は小さかった村も時と共に大きくなり、今に至るまでこの村は賢狼タルフェと共に歩んできた。

 この話は村人全員が小さい頃から聞かされており、賢狼様の人気はすごく、賢狼様がチルチル様を産んだ時なんて、村を上げてお祭りが開かれたほどだ。子育てで動けない賢狼様の代わりに、村人全員で食べ物を見繕って届け、その礼にと生まれたばかりのチルチル様を見せてくれた。賢狼様の横で眠るチルチル様は、小さくてフワフワしていてとっても可愛らしかったのを覚えている。そんな頃から知っているからか、村の大人たちにとってもチルチル様は自分たちの子供のような感覚で、だからこそこんなにも動揺するのだ。

「皆の者、落ち着け!チルチル様が大怪我をしたそうだが、今タルフェ様がエントの泉へ連れて行って下さっている。タルフェ様のことだ、助かる見込みがあるからこそ泉へ向かったのであろう。きっと大丈夫だ安心せい。それより我らは出来ることをしようではないか!」

 村長が落ち着くようにと未だ混乱の中にいる皆を諭した。よし、俺たちも出来る事を考えてみよう。

「俺たち子供でも出来ることか……」
「う〜ん、私たちでも出来ることね〜」
「タマゴダケをあげるとか?確かあれ、栄養たっぷりなんだろ?」
「良いわねそれ!体調が悪い時に食べると滋養強壮の効果があるはずよ!」
「なら早速、今ある分を分けなくちゃな!まぁ、数はまた採って来ればいっか!」
「うん!きっとタルフェ様も喜ぶわよ!」

 賢狼様とチルチル様にあげる物が決まり、どう渡すかの相談に入った頃、大人たちの話し合いも終わったらしい。どうやら、今からみんなで賢狼様の住んでる場所まで行く様だ。丁度いい、タマゴダケを渡しちゃおう!とミウイと話していると、父さんと母さんがやって来て子供達は留守番だと言った。これには、村の子供たちから大反発があった。そりゃそうだ。みんな、賢狼様とチルチル様の為に何かしてあげたくてしょうがないんだから。結局、大人たちは、俺とミウイを筆頭に子供たちの激しい抵抗に遭って、あっさり降伏した。よし!これで賢狼様の所に行けるぜ!早く帰って準備をしなくちゃ!










 此処は森の中でも少し開けた場所で、垂直の切り立った壁が天まで聳え立ち行く手を阻んでいる。そんな、誰も寄せ付けないかの様に聳え立つ崖にポッカリと口を開いた大穴があった。そう俺たちは今、賢狼様の家の前に集まっている。眩しいくらいに輝いていた太陽も勢いを失い、見上げた空は夕暮れ時特有のオレンジと宵闇の吸い込まれそうな黒に分かれていた。

「では、行ってくる」

 そう言い、村長は賢狼様の巣穴に入って行くがすぐに戻ってきた。どうやら、中には誰もなく賢狼様はまだ帰ってきていないようだ。

「賢狼様に詳しい話をお聞きしたいので、ここで待つことにする!各々、火を焚いおいてくれ!」

 どうやら村長は此処で賢狼様の帰りを待つらしい。村人全員で野営の設置を終え、少し早めの晩御飯の支度が済んだ頃、暗い森の奥からノシノシと地面を踏み鳴らす足音が聞こえてきた。村の皆が少しざわめく。

「なんだ?大きな足音が聞こえるぞ。結構でかいな。賢狼様か?」
「かも知れないが、熊の可能性もあるし気を付けたほうが良い。おーい、子供は奥に下がらせろー!」

 この辺りはウベスクの森の中でも比較的安全な方だが、魔の森には変わりはなく、いつどんな魔獣が襲ってくるか解らないのだ。警戒する大人たちが手に武器を取り、子供達を奥の方へ避難させる。そして、俺は重大な事を思い出してしまった。やべぇ……ワイルドボアが出た事を村長に言うの忘れてた!どうやらミウイも気付いたらしく、青い顔をしながらこっちを見てくる。そして、二人してすぐさま村長の下へ走り、ワイルドボア出現の一報を伝えた。

「長……その…今いいですか……?」
「ペリトとミウイじゃないか。そんなに改まってどうしたのだ」
「ごめんなさい!俺、大変な事を言い忘れてたんだ!」
「私たち、今日お昼くらいに集落の近くで採集をしてて……ワイルドボアに襲われたんです!伝えるの忘れてました!ごめんなさい!」
「ワイルドボアだと!?この近くでか!なぜもっと早く言わん!」
「その……チルチル様の事があって……すっかり忘れてました……」
「ええぃ!説教は後だ!今は村の者に早く知らせねば!」

 二人で謝りながら言うと、顔を真赤にした村長が警戒している村人のところへ行きすぐさま説明すると、話を聞いた村人たちの表情が固まり、その場は一気に慌ただしくなり始めた。

「長!それは本当のことかっ!」
「なんでよりにもよってワイルドボアが…」
「ワイルドボアだって!?俺らで敵う相手じゃないぞ!に……逃げる準備をしないと!」
「逃げるったってどこにだよ!集落の近くに出たんだろ!?」

 皆が此処にいたら危険だと口々に村長に詰め寄る。

「いや……もう遅いみたいだ」

 村人の一人がそう言うと、凍てつく程の緊張感が辺りに走り、耐え難い絶望が皆を襲う。時間にしてどれ位だろうか?ジッと森の奥を見つめる村人たち。そして遂に、禍々しい気配が漂う暗闇からそいつが姿を現す。凄まじいほどの獣臭、長い二本の牙とまだら模様の巨体が……ドスンと転がり出て襲いかかって……は来ず、ピクリとも動かなかった。

「「「「へ?」」」」

 村人たちのアホっぽい声が響く。それはそうだ。姿を現したワイルドボアは、どう見ても既に死んでいるのだから。

「おお~おぬし達……なんじゃこんな所に集まって。一体何をしておるのじゃ?」

 村人たちが固まっていると、その声の主がワイルドボア(死骸)の後から飛び出してくる。


 皆の視線の先には神々しい程に白い艶やかな毛並みをした賢狼様が立っていた。わ~っと子供達が賢狼様のところへ走っていき抱きつく、その姿を見て緊張の糸が切れたのか大人たちもすぐに後を追う。勿論俺も!

「賢狼様!」
「タルフェしゃま~!」
「お?何じゃ何じゃ?皆して」

 子供達に抱きつかれた賢狼様は嬉しそうに尻尾をブンブン振っていた。






「ははは!成る程のう。それで皆が集まっていたという訳か。しかし、見た時は驚いたぞ」

 あの後、長が揉みくちゃにされている賢狼様を見て、子供たちを叱り飛ばすという一幕があった。そして、解放された賢狼様と焚き火を囲んでの話し合いの席を設けて、賢狼様と長、俺にミウイの四人が集まった。なんで俺とミウイが呼ばれたかというと、報告をした張本人だからだ。うぅ〜……なんだか、緊張してきた。

「それは、申し訳ない事をしました。で、この二人が報告をしてきた者達です」

 長が騒がせた事を陳謝し、俺たちを紹介した。

「賢狼様!チルチル様は大丈夫ですか?」
「私たち、チルチル様が怪我をしてるのが見えて大変だってすぐ村へ戻ったんです」
「そうかそうか。お主たちであったか、それは驚かせてしまったのぉ。すまなかったな。チルチルは無事じゃ」
「よかったぁ~」

 賢狼様からチルチル様が無事だと聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。本当に良かった。

「して、賢狼様。いったい何があったのですかな?」

 長がチルチル様の身に何が起きたのか賢狼様に説明を求めると、賢狼様は真剣な面持ちで語った。チルチル様と平原に出たところ、百は下らないカラスの群れがいきなり現れ襲い掛かってきたこと。チルチル様と分断され、賢狼様だけでは守りきれなかったこと。

「しかし、良くご無事でしたな。いや、無事ではないのですか……今は、良く生きていてくれたと喜ぶところですな」
「そうだな……」
「チルチル様……かわいそう……」

 長と賢狼様が重く静かに言葉を交わし、ミウイがとても悲しそうな顔をする。

「だがな、チルチルも片目を失ってしまったが、なんとか生きていてくれた。それもこれもあの者がいてくれたおかげなのじゃ」
「はて?あの者とは?」

 賢狼様が暗くなった雰囲気を払うかのように言う。

「人の子じゃ」
「人の子ですと!?」
「あぁ、人の子じゃ。分断されてからカラス共の真意に気付きすぐに戻ったのじゃが、それでは間に合わなかったであろう。どうやらワタシが居なかった間、ずっとチルチルを守ってくれていたようなのじゃ」
「不思議な事もあるものですな。して、その人の子は?」
「その者も瀕死の傷を負っていてな。チルチルと一緒にエント達に預けてきたよ」

 本当に驚いた。賢狼様曰く、チルチル様が助かったのは人間の子供のおかげだというのだ。
 人間といえばその昔、平原から俺たちゴブリン族を追い出し、今でも他種族を奴隷として捕まえていると聞く。そのような野蛮な人間の子供が、まさか魔物を助けただなんてにわかに信じられなかった。

「おおそうであった!ワタシからお主たちに頼みたいことがあってな。一つ聞いては貰えないだろうか?」
「なんでも言ってくだされ。賢狼様からの頼みであれば、村の者たちも首も横には振りますまい」
「礼を言う。でな頼みというのは、皆に服と家を造って貰いたいのじゃ」
「服と家ですか?服はどうとでもなりますが、家と言いますと此処より立派な洞穴はそうそうありませんぞ」
「いや、人が住める家と言った方がいいかの。いつまでかは判らぬが人の子の面倒を見る約束をエントとしていてな。どうしても人と暮らせる家が必要なのじゃ」
「なるほど。そういうことでしたら村の者に造らせましょう!」
「すまないが、よろしく頼む」

 またしても驚いた!まさか賢狼様が人間の子供と暮らすだなんて!だって、”あの”人間の子供だぞ?俺とミウイは人間に対して良い印象がなかったから唖然としていたが、賢狼様と長はどうやら違うらしく、そういう事もあるよね!と言わんばかりに話はトントン拍子で進んでいった。賢狼様の話では、俺やミウイより少し小さい人間の女の子で、自分はひどい傷を負いながらもチルチル様の身を一番に案じるような優しい心を持っているという。人間は好きじゃないけど、その子には少しだけ興味が湧いた。

「人の子が目覚めたら、村へ挨拶に行くので仲良くしてやってくれ」

 賢狼様にそう言われたら断れるわけないじゃないか。

「「はい!」」

 俺とミウイは大きく返事をした。
 話し合いも終わり、皆で村に帰りその日は解散となった。が、次の日に俺とミウイは長に呼び出され、ワイルドボアの件で大目玉を食らった。賢狼様が狩ってくれたから良いものを一歩間違えれば死人が出ていたかも知れないのだから当然だ。罰として、人間の子供の面倒を見てやるよう言われてしまった。

 賢狼様は毎日欠かさずエントの泉へ通い、暫くしてチルチル様が目を覚まし、それからさらに一月程経った頃、遂に人間の子が目を覚ましたという知らせが届いた。





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