ヒーロー・メダル

佐藤次郎

鬼の五兄弟

王との面会を済ませた数日後、詰所が用意出来たと聞いて二人は王都内を歩いていた。その道すがら二人はそれぞれの思う所を話し合っていた。

「・・・やっぱ評判通りだったよな、王様の心の広さは。おかげで面倒な事にならなくて済んだのはラッキーだったけどな。」
「そうね。あの人柄なら彼が仕えるのも納得がいくわ。」

王国騎士団長バイル・アームストロングは元々平民であった。
基本的に王というものはある程度高い地位にある家の者しか騎士に取り立てない。
しかし、ロイ・ベルゼブルグ・マクナードはそんな事をしなかった。

そんな事をして軍が弱くなるのであればしなければ良いと言い、兵士として優秀な者のみを選んで騎士に取り立てたのだ。

それがあったから彼は王に忠義を尽くしていると言っても過言ではない。

彼の他にもそういった境遇の者が多いおかげか軍全体としての戦力や士気も高まっている。

そんな事を思い出していると件の詰所が見えた。

 「ここが王国魔物討伐特別部隊詰所か。」

詰所といっても建物はある程度大きな石造りで、二人の家よりもはるかに立派だ。

中を見ると一階は作戦会議用の大きな黒板が壁に取り付けられた共用スペースとなっている。
二階にはそれぞれの寝室が用意されていた。

二人が暮らしていた村では見られない光景にうっとりしていた二人の耳に豪快で野太い声が響く。

「よう!お前さんらが噂の勇者か!俺はバルカン・バトラだ!よろしくな!」

いきなり近寄ってきた赤色の全身鎧フルプレートに身を包んだ大男に二人は圧倒される。

「お、おう・・・。俺が双子の弟のアルスだ。よろしくな。」
「私が姉のネルラです。どうぞよろしく。」
若干引き気味な声が出る。そして、素直なアルスは思った事を口にする。

「所であんた誰だ?」
内心そう思っていたネルラが心の中でグッジョブと叫ぶ。

大男は驚愕の表情を浮かべる。何故俺を知らないんだと言わんばかりの顔だ。

「マジかよ!?俺の事を知らないのか!ならあいつらもか・・・。よし!俺はバルカン・バトラ!この国じゃ有名な傭兵兄弟・鬼のバトラの次男だ!長男から五男までいるから覚えておけよ!」

王の言った通り兵士だけでなく傭兵も雇い入れているようだ。しかも、一応有名人との事だ。より一層重要な位置付けになっている事が伺える。

自己紹介をするバルカンの後ろから細身で身長の高い男が現れた。

男は二人に一礼すると口を開く。

「始めまして。僕が長男のジーナス・バトラだ。バルカンは見たら分かると思うけど戦士で、僕は回復に特化した魔法使いさ。それじゃ、よろしく。」

その声は柔らかで人を安心させるようだった。
とてもあの大男の兄とは思えない。

「ああ、よろしく」
「よろしくね」
二人と握手を交わすとジーナスは、残りの弟を紹介する。

マムト・バトラ
バルカンとは違い防御系の戦技を中心に習得した戦士・重装騎士アーマーナイトの三男。本人曰く、王国騎士団長の全力の攻撃も耐えきれるらしい。

イルダ・バトラ
ジーナスとは違い攻撃系の魔法に特化した魔法使いの四男。実は痛々しい一面を持ち、攻撃系の魔法に特化したのも「破壊の使徒の使命を果たすため」という理由らしい。

マーチ・バトラ
支援系の魔法に特化した魔法使いの五男。役割上前に出ることが最も少ないが、兄達が口を揃えて一番活躍しているのはマーチだと言わしめる程の仕事人とのことだ。

そんな五兄弟を長男から鬼の頭、鬼の右腕、鬼の左腕、鬼の右足、鬼の左足と揶揄されている。

これほどの仲間がいることに安堵しながら、二人はそれぞれの自室に入っていった。




コメント

  • 佐藤次郎

    ご愛読ありがとうございます。こんにちは、筆者です。討伐隊編開始となりました。鬼の五兄弟という仲間でありライバルの背中を追っていく二人の姿を絶賛妄想中であります。稚拙な文章ではありますが、今後ともお付き合い頂ければと思います。それでは。

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