Umbrella

高嶺

眩い光をおいかけて

目まぐるしい毎日だ。

それでもさくらんぼさんは、ここに来ることを
強制したりはしなかった。


「今すごく辛いなら、休んだっていい。
 雫ちゃんが来たくなったらおいで」



全く、なんでこんなに優しくするんだろう。




でも私の答えは決まっていた。

「明日も明後日も、それから先も行きます」


さくらんぼさんはそれを聞いて、嬉しそうに
何度もうなずいた。

そして言う。


「祇園、いいやつでしょ?あいつのそっけなさ
 は、優しさの裏返しだから」


その言葉は良く分かる気がして、私は確かに
うなずいた。




過去のことを思いだした今は、正直辛い。

忘れかけていた恐怖と絶望で、心が真っ黒に
染まるような気がする。


さくらんぼさんに全てを話したあの日から、
ふとした瞬間にこぼれそうになるものがある。


だけど、あの日のようには泣けなかった。



きっとあれはさくらんぼさんの力で、祇園さん
の言うように、彼はすごい人なんだろう。



いつまでも過去にとらわれる自分が
ひどく情けないけど、私は確かに決めたのだ。



「変わらなくちゃ」




くじけないで。

私はきっと、大丈夫。









「雫ちゃん、ちょっとお出かけしない?」

バイト終わりの夕方、エマさんは私に
笑いかけた。

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