ボクの楽しい人間生活!

黒川 魁

プロローグ

(…もうすぐで、ボクは…。)
灰になってしまうのだろう。

楽しい思い出が走馬灯となって駆け巡るなか、不思議と死を恐ろしいとは思わなかった。

(なぁちゃんは東京にお引っ越ししてからもちゃんと新しいお友だちを作れるかな?)
いつものなぁちゃんを思い出して、思わず頬が緩む。  

なぁちゃんは、ボクのお友だちで、赤ちゃんの時からずっと仲良し。
ボクはただのぬいぐるみで、1度もお喋りできなかったけど、なぁちゃんの考えてることは何でもお見通しだった。
一緒におままごとをしてて、ママさんの花瓶を落としたときには、二人で起こられたりもしたなぁ。
なぁちゃんが一緒に遊んでくれてすごく楽しかった。

 でも、最近は高校って言うところに行っていて全然遊んでくれなくなって、たまにママさんと喧嘩をして、帰ってこないこともあった。なぁちゃんに遊んでもらえなくなって、ボクはずっとママさんとキッチンにいた。
 ママさんが好きなバラードを歌いながらお料理してるからボク、あの歌覚えちゃった。

 ずいぶん長い間キッチンにいたけど、お引っ越しが決まって、ボクは捨てられることになった。まぁ、物はいつかだめになるって、ママさんがよく言ってたし、仕方ないかな。何度洗っても落ちない、なぁちゃんの落書き。お外で遊んだときの泥の汚れ。最近ずっと座ってたから、埃も薄く積もってる。
だから、
なぁちゃん達やお家にバイバイして、今は“ごみ処理場”って言うところにいる。
すごいんだよ。ここの床は勝手に動いて、
ボク達も一人で歩いてる気分。
もうすぐ、あの赤いところへ行って、ボクは
生まれ変わる。

 次は、
なぁちゃんと同じ人間になりたいなぁ。
そしたら、また遊ぼうね?


(なぁちゃん…。おやすみ。)

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