俺の異世界体験法~自分で作った人工異世界で無双します

デコポッジスペシャル

9章「罪の竜と罰の鎖(2)」

「身体能力up」を使用してから既に4分30秒、チートレベルのスキルたちのおかげでもう、罪竜アマルティアのHPゲージの三本目を削りきれそうな所まで追い詰め、そろそろ身を引き回避に専念しようとした時、狂人が罪竜に向けて右手の親指を下に向け首を切るような合図をした。その瞬間、罪竜は俺を追うのをやめ避難した人々に向けて鎖をぶつけてくる。
 街に再び、壮大な悲鳴と甲高い笑い声が混ざり最低最悪な音色が響き渡る。
 「キャアッ」とある1人の女性プレイヤーがバランスを崩し、前へ転倒した。罪竜はなんの容赦もなく、女性を4本の鎖で叩き潰そうと攻撃を繰り出す。本来なら、それでも自分の命を優先して身を引くことが最善だと誰もがいうであろうし、命のかかった人間ならそれをしても咎めるもの誰もいない。だが、俺はもう既に人間をやめ、システムに命を捧げた男である。つまり、そんな普通だの仕方がないなどと言うこととは全く無縁であり、むしろ、
 「何のためにここに来たと思ってんだよ…」
 俺はここで英雄になる。昔見た夢を現実にさせる。その第一歩、前に進む理由はもうとうの昔に決まっている。そして、俺はその女性と畳み掛けてくる鎖の間にもう、身体能力upが切れた状態で4つの鎖を両手の剣で精一杯の力を振り絞り押し返す。
 「うぉーーっりゃあぁぁああああああ」
 そして、俺は鎖をすべて防ぎきったが、
 ガッシャーンと高い音を立てて、右手に持っていたアイアンブレードが破壊された。そこに、再び今度は2つの鎖が俺をめがけて迫ってくる。それを、1本の片手剣で防ごうとするが簡単に吹き飛ばされた。何度も言うが俺はまだLv1の初心者冒険者なわけで、今までちゃんと戦えたこと自体がおかしなわけだが言い訳なんてできない。HPはもう残りわずか、かすっただけで今度こそ死ぬ。すぐに立ち上がろうとするが体が動かない。テレポートも使えない。なんとこのタイミングでスタン状態に陥っていた。やはりそんな俺を見逃さずトドメをさそうとまた鎖が飛んでくる。もうダメだ。これはもう流石にどうしようもない。俯き、握っていた左手の力を緩め、剣を落とし、目を瞑ってしまう。
 「ハッ、情けない。ここまでか…」と勝手に口が動き、ぼそっと呟いてしまった。そして、死を覚悟し、息を吐いたその時、
ガンッキュイイーンと激しく鉄と鉄がぶつかる音と同時に
 「ホンットに情けない。なんでそんな簡単に諦めるのか意味わかんない。これが終わったら、私がお前のその甘ったれた根性1から叩き治してやる。」
 と俺を罵る男じみた、いや、男よりも男らしい、赤髪ポニーテールの女騎士、茜が細剣で鎖を止めていた。
 「あっああ…」
 「何ぼっとしてんのよ、動けるなら手伝うなりなんなりしなさいよ、わたしももうそろそろ限界よ。」
 と弱音を吐き始めたので俺は体がもう動くことに気づき、再び剣を握りしめ女騎士の肩に触れ、試してみたいことを実験してみた。それは、プレイヤーに触れていればテレポートを使用する時、触れているプレイヤーもテレポート出来るのかということだ。実験は成功して俺と茜は向かいの建物と建物のあいだの路地に身を隠した。
 「ちょっと、いつまで触ってんのよ。」
 「ああ、わりーわりー。」
 と、茜から手を離して外の様子を見てみるとアマルティアに向かって光の閃光レーザー弾が打ち込まれていく、ということは…
 「始まったみたいね。」
 「何がだよ、冬弥たちが戦うなら俺達も」
 「いいから、今のあなたじゃ足でまといになるだけ。だからこれでも飲んでHP回復とその身体強化のスキルの回復まで冬弥と碧の戦いを見ていなさい。」
 と言われれば、大人しくポーションを受け取り飲みながら観戦しているしかない。確かに、いまの俺は、スキルも十分に使えないただのLv1プレイヤーだからな。ちなみにポーションはミントの風味のエナジードリンクみたいな感じというのが一番的確な表現だと思う。そうこうしているうちに、アマルティアが冬弥と碧を標的と認識したようでまた鎖で攻撃をした。ていうかこいつ、鎖以外で攻撃は一切してこない。2人はその攻撃を軽やかにバックステップでかわしながら冬弥はレーザー弾を撃ち放ち、碧は氷柱を形成し、アマルティアにめがけて飛ばしている。冬弥は近距離、中距離、遠距離、全ていけるオールラウンダーで、碧が中距離、遠距離型なので2人のバランスがとてもいい。なんかとってもかっこよく、惚れちゃいそう。
 「なんか、あの二人見て惚れちゃいそうとか思ってるかもしれないけれど、あれを1人で半分以上削って戦ってたあんたも充分すごかったから羨ましがったり憎まなくていいのよ。」
 「ああ、ありがとう。」
 なんか微妙な褒め方だが、茜が俺を褒めるような言葉を話すことさえ天変地異レベルなので多分今俺の顔は真っ赤に染まっていることであろう。そして、口元はそれ以上にニヤニヤと気持ち悪いことになっていそうなのでマフラーで頑張って口元を隠した。
 「な、何よ人の顔ジロジロと見て、碧たちの戦いをちゃんと見なさい。」
 「いやー、お前が俺を褒めるなんて天変地異クラスだよなーと思って。」
 「あんたってホント失礼よね。」
 そして、この後、罪竜アマルティアとの戦いは決着を迎える。

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