聖剣を抜いたのが僕でごめんなさい!
第二十六話 試験スタート?
ーローランド城・騎士の階上広間ー
予定時刻はまだ先にも関わらず、広間には既に結構な人数が集まっていた。
和気藹々と談笑する者、険しい表情で目を瞑り時が来るのを待つ者、仕事の打ち合わせをする者、完全に孤立しうろたえる者。
その中でも一際若く賑やかな集団を見つけると俺とべルルはそこへ歩み寄った。
「何や、お前らも呼ばれたんかいな!」
だから何故関西弁なんだ。
現若獅子会議第5席[シューゴ・ククマリ]の方言は非常にナチュラルだった。
シューゴの一族は皆、この喋り方をするらしい。転生者が興した家系なのだろうか。
「貴重な上級エンチャンターであるべルルはともかく、運で成り上がったお前みたいなのも呼ばれるとはな、、」
「俺だって好きで呼ばれたんじゃないさ、、」
「ユタロウさん、、」
その『運』で一度ユタロウに負けた現第4席の[ハシェード・マルス・ライオット]はわかりやすく嫌味を言う。ハシェードは負けた相手が『聖剣保持者』だとは知らない。
それもその筈。ユタロウは身を守る為に自分が聖剣を持っている事を隠していた。いや、正確にはサイゴーより隠すよう命じられていたのだった。
『未完の勇者』の存在が公になる事は、それだけ危険を孕むと言う事だ。
現生徒で知っているのは、隠す前に会っているべルルと、聖剣に触れてしまった事のある第1席のタケル。第7席のクポルくらいだろう。
「こらこらー!運も実力の内よ。ユタちゃんをいじめないの!」
俺の事を『ユタちゃん』と親しげな愛称で呼ぶのは第2席の[コング・ウルート]だ。
「コンちゃーん!ハシェードにいじめられたよー!」
「よしよし、、ユタちゃんは何も悪くないのにハシェードちゃんったら酷いわねー、、」
長身でサラサラとなびく白髪のロングヘアー、どこかSっ気を感じるつり目がちの瞳に整った鼻と口元。
道ですれ違う男たち誰もが振り返ってしまう美貌持つコンちゃん。
そんなコンちゃんの胸元に飛び込むユタロウに白い目を向けるハシェード。表情は若干青ざめている。
普段ならこう言う状況になると溜息を一つ二つ吐いて『リーン王女に言いつけますよ!』と言いそうなベルルだが、ここではただ達観するだけで口出しはしない。
「うふふ、、」
ユタロウが擦り付ける頭の先に女性特有の柔らかな膨らみは無い。
そう。[コング・ウルート]は『男』だ。
「ハシェードちゃん、、仲良く出来ないなら後で『おしおき』ね♪」
ハシェードは青ざめた表情をしたままにブルブルっと震えると全身に鳥肌が立つ。
「ちっ!ただからかっただけだろうが!これだから『オカマ』は、、」
「今なんか言ったかしら? 」
コンちゃんに『オカマ』は禁句だ。
ローランド北方を拠点に暴虐の限りを尽くしていたレートA級の大盗賊団『黒狼刃牙』。団員1000人を超える殺戮集団は、それが理由で壊滅した。
「2人とも落ち着きましょうよ!ほら、、なんか注目されちゃってますし、、」
周りを見渡すと、微笑ましい光景を見るような眼差しを向ける者や、嘲笑う者、ヒソヒソと陰口を始める者など、どちらにせよ、『場違いな若者集団』と見なされているような雰囲気になっていた。
「俺らの代からは『6人』しか選ばれて無いんやし、仲良くやろーや!な? 」
「ちっ、、」
「わかったわよ、、ハシェードちゃん!見逃すのは今回だけなんだからね!」
「、、、ん? シューゴちょっといい? 」
2人がしょうがなく和解したばかりで申し訳ないが、何やら気になる数字を耳にした気がする。
とりあえずコンちゃんとの抱擁を終え、体制をシューゴの方へ立て直した。
「選ばれて無いメンバーもいるの? 」
「そりゃそうやろ、、何世代分の最強達が集まる思うてんねん!今ここで選ばれようとしてんのは魔王討伐戦の中心となるメンバーや!周り見てみい、、武のオールスターやぞ、、」
「・・・」
ユタロウには誰一人わかる人物が居なかった。彼にはそもそも興味のない話なのだ。
ずっとうるさかったせいなのか、改めて周りを見渡すと一人一人が刺すように鋭い意識をこちらに向けているのがわかる。
「ごめん!誰もわからないや!」
誰もが一度は体験した事があるのではないか。大人数で騒いでいた筈なのに、まるで取り決めていたように一瞬だけ誰も喋らなくなり、まさに『無』になる現象。
ユタロウが声を発した瞬間がまさにそれだった。
「おうおうおう!さっきから黙って聞いてりゃ随分と威勢が良いじゃねえか!」
「どうやら今年の若獅子会議には『新参者』と言う自覚が無いようですね」
「何? ケンカ? 僕も混ぜて!」
ユタロウの一言を合図にしたかのように、第64代若獅子会議に向かい、威風堂々たる数人の先代たちが詰め寄って来た。
その中でも彼らが標的と定めているのは一目瞭然。『標的』とされた男の前に歴戦の猛者が集結する。
「、、、ふぅ」
ギラリと光る目線がユタロウを突き刺す。
ユタロウは静かに後ろを向くと天を仰ぐ。
「早くも、、、めんどくせええええ!!」
「あら、、ユタちゃんはどこでもモテモテねー。」
ユタロウの試験は誰よりも早く始まってしまったのであった。
予定時刻はまだ先にも関わらず、広間には既に結構な人数が集まっていた。
和気藹々と談笑する者、険しい表情で目を瞑り時が来るのを待つ者、仕事の打ち合わせをする者、完全に孤立しうろたえる者。
その中でも一際若く賑やかな集団を見つけると俺とべルルはそこへ歩み寄った。
「何や、お前らも呼ばれたんかいな!」
だから何故関西弁なんだ。
現若獅子会議第5席[シューゴ・ククマリ]の方言は非常にナチュラルだった。
シューゴの一族は皆、この喋り方をするらしい。転生者が興した家系なのだろうか。
「貴重な上級エンチャンターであるべルルはともかく、運で成り上がったお前みたいなのも呼ばれるとはな、、」
「俺だって好きで呼ばれたんじゃないさ、、」
「ユタロウさん、、」
その『運』で一度ユタロウに負けた現第4席の[ハシェード・マルス・ライオット]はわかりやすく嫌味を言う。ハシェードは負けた相手が『聖剣保持者』だとは知らない。
それもその筈。ユタロウは身を守る為に自分が聖剣を持っている事を隠していた。いや、正確にはサイゴーより隠すよう命じられていたのだった。
『未完の勇者』の存在が公になる事は、それだけ危険を孕むと言う事だ。
現生徒で知っているのは、隠す前に会っているべルルと、聖剣に触れてしまった事のある第1席のタケル。第7席のクポルくらいだろう。
「こらこらー!運も実力の内よ。ユタちゃんをいじめないの!」
俺の事を『ユタちゃん』と親しげな愛称で呼ぶのは第2席の[コング・ウルート]だ。
「コンちゃーん!ハシェードにいじめられたよー!」
「よしよし、、ユタちゃんは何も悪くないのにハシェードちゃんったら酷いわねー、、」
長身でサラサラとなびく白髪のロングヘアー、どこかSっ気を感じるつり目がちの瞳に整った鼻と口元。
道ですれ違う男たち誰もが振り返ってしまう美貌持つコンちゃん。
そんなコンちゃんの胸元に飛び込むユタロウに白い目を向けるハシェード。表情は若干青ざめている。
普段ならこう言う状況になると溜息を一つ二つ吐いて『リーン王女に言いつけますよ!』と言いそうなベルルだが、ここではただ達観するだけで口出しはしない。
「うふふ、、」
ユタロウが擦り付ける頭の先に女性特有の柔らかな膨らみは無い。
そう。[コング・ウルート]は『男』だ。
「ハシェードちゃん、、仲良く出来ないなら後で『おしおき』ね♪」
ハシェードは青ざめた表情をしたままにブルブルっと震えると全身に鳥肌が立つ。
「ちっ!ただからかっただけだろうが!これだから『オカマ』は、、」
「今なんか言ったかしら? 」
コンちゃんに『オカマ』は禁句だ。
ローランド北方を拠点に暴虐の限りを尽くしていたレートA級の大盗賊団『黒狼刃牙』。団員1000人を超える殺戮集団は、それが理由で壊滅した。
「2人とも落ち着きましょうよ!ほら、、なんか注目されちゃってますし、、」
周りを見渡すと、微笑ましい光景を見るような眼差しを向ける者や、嘲笑う者、ヒソヒソと陰口を始める者など、どちらにせよ、『場違いな若者集団』と見なされているような雰囲気になっていた。
「俺らの代からは『6人』しか選ばれて無いんやし、仲良くやろーや!な? 」
「ちっ、、」
「わかったわよ、、ハシェードちゃん!見逃すのは今回だけなんだからね!」
「、、、ん? シューゴちょっといい? 」
2人がしょうがなく和解したばかりで申し訳ないが、何やら気になる数字を耳にした気がする。
とりあえずコンちゃんとの抱擁を終え、体制をシューゴの方へ立て直した。
「選ばれて無いメンバーもいるの? 」
「そりゃそうやろ、、何世代分の最強達が集まる思うてんねん!今ここで選ばれようとしてんのは魔王討伐戦の中心となるメンバーや!周り見てみい、、武のオールスターやぞ、、」
「・・・」
ユタロウには誰一人わかる人物が居なかった。彼にはそもそも興味のない話なのだ。
ずっとうるさかったせいなのか、改めて周りを見渡すと一人一人が刺すように鋭い意識をこちらに向けているのがわかる。
「ごめん!誰もわからないや!」
誰もが一度は体験した事があるのではないか。大人数で騒いでいた筈なのに、まるで取り決めていたように一瞬だけ誰も喋らなくなり、まさに『無』になる現象。
ユタロウが声を発した瞬間がまさにそれだった。
「おうおうおう!さっきから黙って聞いてりゃ随分と威勢が良いじゃねえか!」
「どうやら今年の若獅子会議には『新参者』と言う自覚が無いようですね」
「何? ケンカ? 僕も混ぜて!」
ユタロウの一言を合図にしたかのように、第64代若獅子会議に向かい、威風堂々たる数人の先代たちが詰め寄って来た。
その中でも彼らが標的と定めているのは一目瞭然。『標的』とされた男の前に歴戦の猛者が集結する。
「、、、ふぅ」
ギラリと光る目線がユタロウを突き刺す。
ユタロウは静かに後ろを向くと天を仰ぐ。
「早くも、、、めんどくせええええ!!」
「あら、、ユタちゃんはどこでもモテモテねー。」
ユタロウの試験は誰よりも早く始まってしまったのであった。
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