聖剣を抜いたのが僕でごめんなさい!

のだ星じろう

第二十二話 魔王、いきなり反乱される?

ーヘルトピア・魔王城内大広間ー

「はーい。あと10周ですよー。頑張ってくださーい。」

バスケットコート2面分ほどある広い空間に無機質な声が響く。灰色のレンガ造りの城は照明が薄暗く、薄気味悪い雰囲気を醸し出す。
そんな中とことこ走る小太りの『魔王』はせっかくのおどろおどろしい雰囲気をぶち壊しており酷く滑稽だった。

「はぁ、、はぁ、、マグネスの鬼!悪魔!人でなし!!」

「私は『魔人』なので全部ハズレです。もう10周ほど増やしましょうか? 」

魔王の態度に少しイラッとした表情を見せた[魔王軍参謀・魔人マグネス・ユーキリス]は、バインダーのような物に挟んだ羊皮紙へ『魔王自ら希望の為110周へ変更』と書き足していた。

「あー!今なんか書いたろ!この生粋の『魔人』めー!!」

「えーそうですとも。私は生粋の『魔人』でございます。祖父の代から魔王様が復活なされる度にこうしてお目付役を任されている家系のね!御歳300歳となる私の父も今回復活された魔王様の怠惰なお姿に酷く嘆いていますよ、、、」

「お、懐かしいな!親父さん元気か? 」

魔王のあっけらかんとした態度にマグネスは深くため息をつく。と、ほぼ同時に大広間の重量感のある観音扉が開き黒いローブを纏った魔人が入って来た。

「本日も精が出ますね、マグネス殿。」

ローブを纏った魔人は魔王に向かい一礼し、マグネスに歩み寄る。

「ダブールか。北の一件は片付いたのか? 」

「あの国王もなかなか愉快な男でした。人間にしておくには実に惜しい、、まあ取り引きは成立です」

「ご苦労だったな、、」

マグネスがふとダブールのローブの裾を見ると、焼け焦げた跡がある事に気付いた。
二ヒヒと笑みを浮かべるダブールを睨みつける。

「貴様、、また勝手に人間を襲ったな。」

「あー、、バレちゃいました!帰る途中手頃な村が一つ二つありまして。つい破壊してしまいました!」

愉しそうに話すダブールに、魔王と同じくらい深いため息をつく。

「ダブール、、魔王様が完全ではない今、指示以上の破壊活動は禁止と言ったはずだ。人間を侮るな!」

「ええ。私も一回不覚を取った身。重々承知しております」

この戦闘狂が大人しく従う筈がない。
マグネスは心の中でそう思うも、態度には出さず、ダブールの監視をより強くする事を決めた。

「ところで、、魔王様が食事をなさっている様ですが今日の運動は終わったのですか? 」

「なにっ!?」

マグネスは急いで魔王の方向へ振り返ると、どこに隠し持っていたのかヘルトピア名産『シーサーペント』の干し肉にかぶりついていた。

「何をしているのですか!ってかこんな物どこからっ!

「舐めるなよマグネス。この俺が本気を出せば食堂から干し肉を転移させる事など朝飯前だ!」

ここぞとばかりに権力を振りかざそうとする魔王に萎縮する筈もなくマグネスは呆れかえる。

「どこで本気出してるんですか!」

「まあまあ固い事言うなって!これ食ったらちゃんと走るからさ!、、腹が減って死にそうだったんだよ? 」

「、、はは、、ははははあーーー!」

マグネスは一瞬俯いたが、急に大声で笑い出した。

「何?どしたー?怖い怖い」

「もーいいです!魔王様にはそのプヨプヨの贅肉を削ぎ落とし魔界の王として完全復活なされるおつもりが無いようだ、、ええ!いいでしょう!私にも考えがあります」

「何もそこまで言って無いだろ? そんなヒステリックになるなよ、、な? 」

魔王の心配をよそにマグネスは薄ら笑いを浮かべ言葉にならない呻き声を上げながらフラフラと歩き出した。
先ほどダブールが入って来た所とは別の観音扉の前まで行くと魔王の方へと振り返る。

「以前から思っていたんです。魔王様はこの先もずっとプヨプヨのままなんでは無いかと、、今日それを確信致しました。あなたの体は未来永劫プヨプヨです!!」

「うわ、、ヒドっ!俺がこんなに頑張ってるってのに!お前絶対モテないだろ」

「何とでも言いなさい!私の出した結論はこうです!」

そう言うとマグネスは、勢いよく扉を開けた。向こう側には3人の魔人が立っている。マグネスが「お入り下さい」と声を掛けると、貫禄たっぷりな魔人たちがゆっくりと姿を現した。

「わーお!ファンタスティックです!」

『戦闘狂』ダブールの興奮様からも、彼らの強さが伺える。全員が悪名高い伝説級の魔人だ。

「誰だよこいつら? 新入りか? 」

「ふふふ、、これが私の結論、、彼らこそ私自らがスカウトした『新魔王候補』です!!!」

「え、お前そんな酷い事考えてたのかよ、、魔王だって傷つくよ? 」

「ならば戦うのです!ま、今の魔王様には勝てっこ無いでしょうけどね!ハーハッハ!」

『勝てっこ無い』
その言葉を引き金に魔王の周りの空気が一変した。
ドス黒く重量感のあるハイプレッシャーが全員に伝わる。

「まとめてだ」

「は、はい? 」

マグネスはそのプレッシャーに少し緊張して聞き返す。

「全員まとめて遊んでやると言っている」

「ま、まとめてと言いましても。『新魔王候補』の皆さま!お聞きの通りですが、さすがに3対1では、、、ってちょっと!」

マグネスの判断を仰ぐ事なく『国取り級』の魔人たちは魔王目掛けて飛びかかった。

「上等だ、、!」

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