人間不信様のハーレム世界

和銅修一

ドラゴンの巣

 高い高い山を超え、四人はあるところに着いた。世界的に有名な上級モンスター、ドラゴンの巣。
 彼は意地でもこの地を奪還したかった。
 というのもあの年寄りドラゴンが自分が好きだったお爺さんに似ていたからだ。
 だからこそあの年寄りドラゴンが困っているのを見過ごせなかったし、この騒動の原因であるドラゴンを放ってはおけない。
 そんな彼だからこそ年寄りドラゴンを倒して洞窟を空けるという考えには至らなかった。
「にしても主や、今回はちと頭に血が上り過ぎてはないのか?」
「かもな、多分あの年寄りたちに決めつけられるのが嫌だったんだよ。ババアにはホグアつけさせられるし、ドラゴンのジジイは俺には倒せねえと決めつけてきやがる。だからムカついたのかもな」
「その憂さ晴らしにドラゴンに喧嘩を売るなどさすが我が主。かっかっかっ、やることが違うわい」
 褒めているのか馬鹿にしているのかわからない笑い声を上げながらさらにドラゴンの巣へと近づいていく。
 だが陽気なのはアリアだけ、悠斗以外の二人は何かを気にしている様子だ。
 勢いでドラゴンと戦うことになったから仕方ないといえば仕方ないだろう。
 だがここまで来て引き返す訳にはいかない。
「ん〜、ここがドラゴンの巣か。思ったより殺風景でつまらんのぉ〜」
 枯れた大地に大きなくぼみ、その周りはただの平地だがあるところから崖となっておりここからだと辺り一面を見渡せていい景色だ。
 その景色を眺めていると、急に後ろにある窪みからズドンという音がした。
「よぉ、邪魔してるぜ」
「人間風情が何の用だ」
 赤い鱗に包まれたトカゲのような翼を動かしながら体全体に染み渡るような声で、偉そうに喋った。
「実はな、こいつの村の食糧庫がここにいた年寄りのドラゴンが住み着いて困ってるだわ」
 ホグアの肩をポンっと叩く。
「あのジジイは俺に負けた。その後にどうなろうと俺の知ったではない」
「なるほど、弱肉強食か。わかりやすくて好きだぜそういうの」
 ドラゴンはヌッと顔を悠斗に近づけさせる。
「お前は肉の方だ人間。俺のテリトリーに入ったからにはそれなりの代償はもらうぞ」
 大きく顎を開けてその鋭利な牙で悠斗に襲いかかる。
 それを避けるのではなく、悠斗はレイナとコネクトして体を強化して剣で受け止めた。
「おいおい、いきなりだな。でもその方が話が早くて助かるぜっ」
 剣を前に押して弾く。機械であるレイナとコネクトした悠斗は力が増しているのでドラゴンは一歩、後ずさりした。
「ほほう、ただの人間ではないな。だが何であれこの俺に歯向かった奴は生きては返さん」
 連続で噛みつき、悠斗を切り刻もうとするがそれはかすりもしなかった。
 ドラゴンの目に映っていた時には姿が変わっていた。
 先ほどの水色の髪ではなく金髪に変わっていて服も黒くなっている。よく見ると目も赤色へと変化している。
「奇怪な技を使うな。だがそれだけでは勝てんぞ」
 今度は爪で斬りかかろうと腕を振りかぶるがその前に足元に隠れていたレイナが搭載されていた高周波ブレードで斬った。
「ぬうっ」
 だが浅かったのか鱗が剥がれた程度で肉までには達しなかった。
「この小娘がっ!」
 不意を打たれたドラゴンは頭に血が上り、尻尾をレイナ目掛けて横に振る。
「ほいっす」
 しかしそれは必死に背中の翼を羽ばたかせてレイナの体を持ち上げたホグアにより当たりはしなかった。
「飛べたんですね」
「はいっす。長時間は飛べないんで普段はしまってるんすけどこれぐらいなら楽勝っす」
 ドラゴンを見下ろせる高さまで上がり自慢する。
「竜の恥さらしめ。こんなところでも邪魔をするのか。だがいくら同族とて遠慮はせん」
 大きな翼を上下に動かして風を起こす。その風でドラゴンは地を飛び立つ。ホグアより遥か遥か高くへ。
「人間の血が混ざった竜人なんぞには本物の竜には勝てんわ」
 大きく、顎が外れてしまうのではないのではないのかというほど口を開けた。
 その中は真っ赤に、グツグツとマグマのような炎が溜まっていた。
「や、やばいっす〜〜〜〜」
 ホグアは危険を察知して翼に力を入れてレイナを持ったままその場を離れる。
「ちょ、俺たちを置いてくなーーーーー!」
 竜の口から火炎弾が打ち出されて枯れた大地に着地して爆発した。
 轟音と黒煙の中、ドラゴンの目は鋭く光った。

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