人間不信様のハーレム世界

和銅修一

同盟

「悠斗、なんでここに?」
「ああ、ちょっと襲われたところをトリーたちに助けてもらってな」
「襲われた⁉︎」
 急に美鈴の顔が引き締まる。さすがギルドマスター、切り替えが早い。その後、美鈴にここに来た経緯を話した。
「じゃあ、悠斗はこのギルドに入ってくれるの?」
「へ?」
 確かにこのままバイオレンスキャッツを野放しにしておく訳にはいかないが、ギルドに入ることは考えてはなかった。
 その問いにどう答えようか悩んでいると即座にアリアが立ち上がった。
「おい小娘、主を困らせるな。今回はそのギルドを倒す為に手を貸すだけで入るわけないじゃろ」
 本人の意思を聞かずに確信づいた感じで答えた。
「ちょっと、それは悠斗が決めることでしょ。本人に聞きなさいよ」
 美鈴も立ち上がり、怒り心頭といった感じでまだ考え中の本人を指差した。
 ちょっと顔が怖いが、まぁ正論だ。
「それは必要ないな。主と我は強い絆で結ばれておる。ただならぬ関係なのじゃかな」
 アリアは右手の薬指にはめた小さいリンクリング見せつける。
 それはもうギルドとかの問題じゃあないと思うんですが?と言いたいがこのピリピリムードでは介入不可能だ。
 しかし、トリーは強引にそんな二人の合間に入った。
「まぁよ、一番いいのは入らないことだろ。悠斗の性格っていうか病気(人間不信)上。だからここは同盟ってのはどうだ?ランキング一位とその仲間のラスボス級モンスターがいるならそれでも儲けもんだろ」
 少し顎に手をおいて考えると小さく頷く。
「そうね、そうしましょう。私もムキになりすぎたわ。ごめんなさい」
 会釈し、握手会求めるがアリアはそれに応えずにそっぽを向いた。
「すまんな。尊敬に値する者しか握手はせんようにしておるのでな」
 その態度に自然と顔が強張り、その手を握りしめた。
「ま、まあいいわ。それより悠斗には少し頼みたいことがあるんだけど」
「ん? なんだ」
「実は今さっき、仲間の一人から手紙が届いたんだけど、モンスターに足止めされててここに来れないみたいなの。だから助けてきてくれない?」
 まだ、詳しい作戦は決まっていないが、あのギルドを潰す為には一人でも仲間は多い方がいい。
「わかった行くよ」
「主が行くなら我も行こう」
「それはダメよ。あなたは足が速いんだからトリーと一緒に敵の偵察に行って来てもらわなくちゃいけないから。でも安心して悠斗にはカゲツチをつけるから多分、大丈夫よ」
 多分という言葉に引っかかるがまあいいだろう。まず、レイアに事情を説明しておこう。そうして今日の夜に街を出発するこにした。


 アリアはトリーと偵察の為、一人で宿に戻りレイアに事情を話すと協力したいと申し込まれた。仕方なく美鈴の護衛を任せた。
「じゃあ、俺はそろそろ行くから」
「はい、お気をつけください悠斗様」
 レイナはいつものように笑顔で送り出してくれた。


 外は月と星の明かりがないと歩けないほど暗かった。そんな道を一人歩いて門の近くまで行くと待ち合わせどおりにカゲツチが少量の荷物を持ち待っていた。
 そのまま仲間が足止めされているというダンジョンの方へと歩いて行くと、無口なカゲツチはただ黙ってついてきた。


 森林エリア。
 それほど珍しくないごく一般的なエリアだ。詳しい事情はわからないが、ここの何処かで足止めを食らっているらしい。
「といってもどこを探せばいいんだ?」
 木のせいで見晴らしは悪いし、エリアはかなり広く、一から探すとなると会合の時までに間に合うかわからない。
 そう悩んでいると森の中から銃声が聞こえてきてそこから煙が立ち上る。
「なんだあれは?行ってみようぜカゲツチ」
 二人は急いで煙が立ち上っているところへと走った。
 もしかしたら仲間がモンスターと戦っているか、合図として銃声を発したかだが、どちらも危険信号に変わりはないだろう。
 煙が立ち上っていたところに着くと、ゴーグルをかけた黄緑色の髪をした少女がスナイパーライフルを小脇に抱えながらあるものの上に鎮座していた。
 倒れている巨大モンスターを椅子にして。
「お、お前が手紙を送ってきた奴なのか…?」
 この姿からしてかなりの手練れだろう。しかし、そんか人が応援要請などするだろうかと疑問に思ってしまう。
「そう。あなたが救援の人? カゲツチはわかるけど、あなたは誰?」
 彼女は不思議そうな顔をして首を傾げる。
「俺はお前たちのギルドと同盟を組んだ榊 悠斗だ」
「私はシュエル。見ての通りガンナーよ」
 初見はびっくりしたが悪い奴ではなさそうだ。
「そうか。よろしくなシュエル」
 表向きではそう言うが内心は穏やかではない。ここに来て人でないものに触れてきて少しは人間不信が治ったと思ったが、まだ心の底では人間を受け付けていないらしい。
「早速だけど。おんぶしてくれない?」
「はい⁉︎」
 思わず声が裏返り、シュエルはわざとらしい微笑みを浮かべた。

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