転生屋の珍客共〜最強の吸血鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜
第81話 忘れていた大切なこと
一撃。
顔面に容赦のない拳を放った。
普通の悪魔ならそれだけで絶命するが体が吹き飛んだだけで傷一つついていない。
「やはり一筋縄ではいかないか。おい、ビュート。死なないように気をつけろよ」
流石に蠅を配慮して戦うのは面倒だ。
自分の身は自分で守ってもらおう。
しかし、中身が違うとしても子供を殴るのは気が引ける。だが相手が相手だけに手は抜けない。
起き上がる前に次の攻撃の準備をするーーが、敵もそれを察して倒れた状態で魔力を飛ばして牽制してきた。
だがルインはそれを避けずに受け止める。不死身である彼にとって避ける必要がなく、その一撃は相手が避けさせるための一撃だと知っていたからだ。
蠅の王はルインの強さを肌で感じ取っていた。そして普通に戦っては勝てないと悟って大技を繰りさせまいと牽制をしたがそれは無意味になる。
否、蠅の王は判断を間違えてはいない。ただ彼には策というものは意味をなさない。むしろその血は彼の武器となる。
「ベルの体から出て行け蠅の王」
血の化身。
ルインの中に潜むそれは常に血を欲している。そしてビュートのような使い魔ではないので言うことを聞かないので自分の血を代償としなくてはいけない。
まだ全ては扱えないが今回はその中で一撃が重いのを選択した。
「サタンとやらによろしく言ってくれ」
赤い血は岩のように丸まり、凝固する。そしてそのまま蠅の王に目掛けて高速で発射された。
「ぐ……ぬっ。ここで死ぬわけにはーー」
あまりの速度に躱せず、両手に魔力を集中させて止めようとするが血の塊は回転を増すばかり。
所々鋭利な部分があるので皮膚が徐々に削られ、足元には血が滴る。
「いいや、お前はもう死んでるんだよ。過去に囚われてねえで今を生きるんだな」
その一言と共に限界がきたのか血の塊は蠅の王を壁に叩きつけた。
***
 
洞窟を抜けて、適当なところでベルを寝かせてから数十分。そろそろ不安になってきた頃に彼女は目を覚ました。
「あれルインさん? ここは……私は一体何をしていたんですか」
「蠅の王という奴がお前の肉体を乗っ取っていたんだ。まあ、詳しい話は使い魔に聞くことどな」
「ビュート⁉︎ 魔界に帰ってたんだ」
「つい最近だ。ちと野暮用があってな。けどそれも片がついた」
見た目はさほど変わっていないがあの蠅の王を吸収することに成功した。これで二度とあんなことは起こらないだろう。
「ルインさんのおかげ……ですよね。何があったかは知りませんがありがとうございます」
「別に礼を言う必要はねえよ。仲間を助けるのは当たり前のことだ」
そう当たり前のことだ。
俺はそんなことをここ数十年間忘れていた。それを気づかせてくれたのは転生屋の奴らだ。むしろこっちが感謝しなくては。
「それでも言わせてください。薄っすらとですがルインさんが頑張っているが見えましたから。えっと……お礼と言っては何ですが目を閉じてくれますか?」
言われるがまま瞼を閉じると頰に妙な感触が伝わってきた。何故か震えているようでそれがなくなってから目を開けてみるとベルは顔を真っ赤に染めていた。
「そ、それじゃあ先にか、帰ってますから」
ここまでの道は蠅の王が一掃したから危険はないが走って戻ろうとなると時間がかかるだろうに。
追いかけてあそこまで送って行っていこうとするとビュートが「ロリコンが!」と一言残していった。
「何故俺が悪いみたいになっているんだ?」
これだから悪魔は面倒だ。
しばらく魔界は懲り懲りだが、まずは無事にベルを救出できたことを報告しよう。
顔面に容赦のない拳を放った。
普通の悪魔ならそれだけで絶命するが体が吹き飛んだだけで傷一つついていない。
「やはり一筋縄ではいかないか。おい、ビュート。死なないように気をつけろよ」
流石に蠅を配慮して戦うのは面倒だ。
自分の身は自分で守ってもらおう。
しかし、中身が違うとしても子供を殴るのは気が引ける。だが相手が相手だけに手は抜けない。
起き上がる前に次の攻撃の準備をするーーが、敵もそれを察して倒れた状態で魔力を飛ばして牽制してきた。
だがルインはそれを避けずに受け止める。不死身である彼にとって避ける必要がなく、その一撃は相手が避けさせるための一撃だと知っていたからだ。
蠅の王はルインの強さを肌で感じ取っていた。そして普通に戦っては勝てないと悟って大技を繰りさせまいと牽制をしたがそれは無意味になる。
否、蠅の王は判断を間違えてはいない。ただ彼には策というものは意味をなさない。むしろその血は彼の武器となる。
「ベルの体から出て行け蠅の王」
血の化身。
ルインの中に潜むそれは常に血を欲している。そしてビュートのような使い魔ではないので言うことを聞かないので自分の血を代償としなくてはいけない。
まだ全ては扱えないが今回はその中で一撃が重いのを選択した。
「サタンとやらによろしく言ってくれ」
赤い血は岩のように丸まり、凝固する。そしてそのまま蠅の王に目掛けて高速で発射された。
「ぐ……ぬっ。ここで死ぬわけにはーー」
あまりの速度に躱せず、両手に魔力を集中させて止めようとするが血の塊は回転を増すばかり。
所々鋭利な部分があるので皮膚が徐々に削られ、足元には血が滴る。
「いいや、お前はもう死んでるんだよ。過去に囚われてねえで今を生きるんだな」
その一言と共に限界がきたのか血の塊は蠅の王を壁に叩きつけた。
***
 
洞窟を抜けて、適当なところでベルを寝かせてから数十分。そろそろ不安になってきた頃に彼女は目を覚ました。
「あれルインさん? ここは……私は一体何をしていたんですか」
「蠅の王という奴がお前の肉体を乗っ取っていたんだ。まあ、詳しい話は使い魔に聞くことどな」
「ビュート⁉︎ 魔界に帰ってたんだ」
「つい最近だ。ちと野暮用があってな。けどそれも片がついた」
見た目はさほど変わっていないがあの蠅の王を吸収することに成功した。これで二度とあんなことは起こらないだろう。
「ルインさんのおかげ……ですよね。何があったかは知りませんがありがとうございます」
「別に礼を言う必要はねえよ。仲間を助けるのは当たり前のことだ」
そう当たり前のことだ。
俺はそんなことをここ数十年間忘れていた。それを気づかせてくれたのは転生屋の奴らだ。むしろこっちが感謝しなくては。
「それでも言わせてください。薄っすらとですがルインさんが頑張っているが見えましたから。えっと……お礼と言っては何ですが目を閉じてくれますか?」
言われるがまま瞼を閉じると頰に妙な感触が伝わってきた。何故か震えているようでそれがなくなってから目を開けてみるとベルは顔を真っ赤に染めていた。
「そ、それじゃあ先にか、帰ってますから」
ここまでの道は蠅の王が一掃したから危険はないが走って戻ろうとなると時間がかかるだろうに。
追いかけてあそこまで送って行っていこうとするとビュートが「ロリコンが!」と一言残していった。
「何故俺が悪いみたいになっているんだ?」
これだから悪魔は面倒だ。
しばらく魔界は懲り懲りだが、まずは無事にベルを救出できたことを報告しよう。
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