転生屋の珍客共〜最強の吸血鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜
第70話 助けを乞う少女
「助けてください……だと? この状況を作り出したのはお前だろ。今更命乞いとは」
「違うんです。私はあの吸血鬼にそそのかされただけなの。実際、手伝ったのもほんの少しだし」
そういえばネクロマンサーが何かをしたという報告は聞いていない。それにゴーレムの軍勢だって力を貸したのはユースだ。
魔女の力を利用するのは俺を捕獲する為、しかしこいつには協力する理由がまるでない。
「まさか本当に無関係だと」
「無理やり手伝わされたから無関係ではないけど、私は悪いことしてないの。だから助けて」
「ではお前はユースが用意した俺を誘き寄せるための餌で利用されていただけということか?」
思えば俺たちはネクロマンサーがこの世界にいるということを知り、戻ってきた。もしその報告がなかったらこんな世界に来ることなどなかった。どうやら俺たちはまんまとユースの思惑通りに動かさられていたらしい。
「まさか全てが仕組まれていたとはな。しかし、それならこの問題は解決したと言っていい」
「私を助けてくれるの?」
「はぐれでも役に立つかもしれんし、無意味な殺人は好まん。ただし今後死霊を使うのは禁止する。そいつも捨てるんだ」
死霊はネクロマンサーにとって武器のようなものだ。そんなものを有している以上、完全に信じることなど不可能だ。
それを理解してくれたのか彼女は小さく頷いた。
「うん。それじゃあ解除するね」
元気良く反応していたがその死体はいまだに動いてこちらへと近づいて来ている。
「おい、動いてるぞ。まさかここまで来て抵抗しようというのか?」
「ち、違う。私はもう解除したはずなのに」
「何? なら誰がこれを操っている。まさか……」
「そのまさかだよルイン。言ったでしょ。僕は強くなったと」
「一体どんなカラクリだ?」
確かにあの一撃は直撃したはず。だというのに無事なはずはない。あの獣は肉体ではなく魂を切り裂いたのだから。
「はじめから吸血鬼である僕を倒す為に血の化身を使うと予測していたから魂をこの死体に移していたんですよ。勿論、一部は元の肉体に残しておいたせいで完全な状態ではないけど今の君なら十分に倒せる」
ここまで計算尽くとは流石と言わざるを得ない。魂が見えるアズリエがいたのならこんな風にはならなかっただろうが、今更そんなことを言っても仕方がない。
「自分の魂を別の体に移して俺を騙すとは成長したな。昔のお前とは思えない無茶な作戦ではあるが」
「こうでもしないと君には勝てませんから」
「ふん、もう勝った気になるなよ。油断するのはお前の悪い癖だ」
心臓を抉り再びあの獣を呼び出す準備を始める。
「まさかまた血の化身を呼び出すつもりですか。そんなことをしたら君の体は……」
「お前も強くなったようにこの俺も強くなっているのさ。しかし、今度は別のをお見せしよう」
先程の雄々しく美しい翼を持っている獣ではなく、醜く全てを深淵へと飲み込む獣。赤黒く細長いそれはユースをその大きな口で建物ごと喰らう。
「いくら不死身であってもそいつの腹の中からは出られんぞ。むしろ不死身だから苦しい思いをするだろうな」
だが同情はしない。こうでもしないとやられていたのは俺の方だ。もうあの世界に戻るわけにはいかない。
「し、死んじゃったの?」
心配そうに横でネクロマンサーはぽっかりと空いた穴を見つめる。
「いいや、だがこれで終わりだ。後は魔女たちに任せて俺たちはこの場を去るとしよう」
ここは魔女の世界。目的を達してはいないがこれはこれで良しとして、部外者はお邪魔するとしよう。
「違うんです。私はあの吸血鬼にそそのかされただけなの。実際、手伝ったのもほんの少しだし」
そういえばネクロマンサーが何かをしたという報告は聞いていない。それにゴーレムの軍勢だって力を貸したのはユースだ。
魔女の力を利用するのは俺を捕獲する為、しかしこいつには協力する理由がまるでない。
「まさか本当に無関係だと」
「無理やり手伝わされたから無関係ではないけど、私は悪いことしてないの。だから助けて」
「ではお前はユースが用意した俺を誘き寄せるための餌で利用されていただけということか?」
思えば俺たちはネクロマンサーがこの世界にいるということを知り、戻ってきた。もしその報告がなかったらこんな世界に来ることなどなかった。どうやら俺たちはまんまとユースの思惑通りに動かさられていたらしい。
「まさか全てが仕組まれていたとはな。しかし、それならこの問題は解決したと言っていい」
「私を助けてくれるの?」
「はぐれでも役に立つかもしれんし、無意味な殺人は好まん。ただし今後死霊を使うのは禁止する。そいつも捨てるんだ」
死霊はネクロマンサーにとって武器のようなものだ。そんなものを有している以上、完全に信じることなど不可能だ。
それを理解してくれたのか彼女は小さく頷いた。
「うん。それじゃあ解除するね」
元気良く反応していたがその死体はいまだに動いてこちらへと近づいて来ている。
「おい、動いてるぞ。まさかここまで来て抵抗しようというのか?」
「ち、違う。私はもう解除したはずなのに」
「何? なら誰がこれを操っている。まさか……」
「そのまさかだよルイン。言ったでしょ。僕は強くなったと」
「一体どんなカラクリだ?」
確かにあの一撃は直撃したはず。だというのに無事なはずはない。あの獣は肉体ではなく魂を切り裂いたのだから。
「はじめから吸血鬼である僕を倒す為に血の化身を使うと予測していたから魂をこの死体に移していたんですよ。勿論、一部は元の肉体に残しておいたせいで完全な状態ではないけど今の君なら十分に倒せる」
ここまで計算尽くとは流石と言わざるを得ない。魂が見えるアズリエがいたのならこんな風にはならなかっただろうが、今更そんなことを言っても仕方がない。
「自分の魂を別の体に移して俺を騙すとは成長したな。昔のお前とは思えない無茶な作戦ではあるが」
「こうでもしないと君には勝てませんから」
「ふん、もう勝った気になるなよ。油断するのはお前の悪い癖だ」
心臓を抉り再びあの獣を呼び出す準備を始める。
「まさかまた血の化身を呼び出すつもりですか。そんなことをしたら君の体は……」
「お前も強くなったようにこの俺も強くなっているのさ。しかし、今度は別のをお見せしよう」
先程の雄々しく美しい翼を持っている獣ではなく、醜く全てを深淵へと飲み込む獣。赤黒く細長いそれはユースをその大きな口で建物ごと喰らう。
「いくら不死身であってもそいつの腹の中からは出られんぞ。むしろ不死身だから苦しい思いをするだろうな」
だが同情はしない。こうでもしないとやられていたのは俺の方だ。もうあの世界に戻るわけにはいかない。
「し、死んじゃったの?」
心配そうに横でネクロマンサーはぽっかりと空いた穴を見つめる。
「いいや、だがこれで終わりだ。後は魔女たちに任せて俺たちはこの場を去るとしよう」
ここは魔女の世界。目的を達してはいないがこれはこれで良しとして、部外者はお邪魔するとしよう。
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