転生屋の珍客共〜最強の吸血鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜
第23話 決着は早々に
「やはりここの兵士はつまらんな。あの剣士の死体を見せてやっただけでこのザマとは」
勝利が確定されている勝負ほど退屈なものはない。しかも大半は恐れをなして逃げている。
これでは転生屋に来る前と変わらない。
「貴殿がザックスを倒したというハインツの兵士だな」
「そうだ。名乗った方がいいか?」
「いや、結構だ。ザックスを知っているならそれで十分。しかし、奴の無念は晴らせてもらう」
「二対一か。いや、聡明な判断だ。勝利の為にどんな手でも尽くす。それが人間というものだよ」
むしろ一騎打ちの方が珍しい。あれはあれで楽しかったが、やはり一騎打ちは互いの力量が均衡していないとただの虐殺になってしまう。
「悠長に話し合う気はない。それと無礼と承知で先に攻撃をさせてもらった」
いつの間にか細剣を引き抜いていたネグリスは勝ち誇り、ルインの左足を一瞥した。
そこに視線を落とすと左足は斬りつけられ、血を流していた。骨が見えるほどのものだが痛みに慣れ過ぎたルインにとってこの程度かすり傷に等しい。
「成る程、先ほど戦ったザックスとやらは人間にしては恐ろしいほどの剛腕だったがまさか魔法で斬撃を飛ばすとはな」
斬撃を飛ばせる奴は何人か見た事あるが、魔法を使ってというのはこいつが初めてだ。魔法があるので安定性があり、威力も相当なものだが俺が見てきた剣士の中では下から数えた方が早い程度の実力だろう。
「たった一度見ただけで攻撃の正体を見破っただと?」
「年の功というやつだ。それと中距離攻撃が出来るのは自分だけとは思わない事だ」
予め切っておいた指先を弾いて血を飛ばすと空中で強固して形のある斬撃となって、それはネグリスの左足を斬った。
「ぐっ……わざと足を狙ったな。首も狙えたというのに」
「容赦するつもりはないが、すぐに死なれては困るのだ」
あくまで囮作戦。ここで早々に終わらせてしまっては他の兵士たちがこちらに集まってこない。アンネが苦戦するとは思えないが少しでも負担を減らしてやらなくては。
「どうやら他にも侵入者がいるみたいだ。その足では動けまい。ここは任せて下がっていてくれ」
三剣豪の代表者であるマクアスが満を辞して前へ出て、剣を地に突き刺した。すると突如ルインの足元から剣が出現し、彼の肉体を貫いた。
「ふむ、これは……」
「それは私のみ使える魔法。まずは動きを封じさせてもらおう」
「大体把握した。やはり三剣豪も俺を殺すには至らないのだな」
この地面から出てきた剣に聖剣以上のそれは感じられない。
「何を言っている。貴殿はここで串刺しになって死ぬ」
柄を握る力が強くなると今度は一本ではなく、ルインの体が見えなくなるほど大量の数で貫いた。
「さて、ネグリス傷を見せてくれ。早めに治療をしないと共に戦場に立てなくなってしまう」
自身の最大の攻撃が当たり、勝利を確信したマクアスは助け起こそうと手を差し出すがそれは背後から迫る脅威を感知し自然と止まる。
「その心配はない。お前ら二人はここで死ぬ」
剣の山を素手で壊し、ゆっくりと二人の元へと歩み寄る。その際に剣の切っ先で肉を斬られてもただ真っ直ぐに。
「あれだけの剣に刺され無傷……だと⁉︎ 確実に命中していたはずだぞ」
「分かりやすく説明してやると俺には常に強力な回復魔法がかかっている。こうしていくら攻撃されても次の瞬間には無傷の状態に戻っているというわけだ」
「それが本当なら勇者よりも強い事になるが……」
「ああ、俺は勇者よりも強い」
アンネには悪いがそれは断言出来る。もし勇者に劣るのなら俺はこれほど悩んではいない。
そしてこの発言を二人は信じる他ない。三剣豪と謳われた自分たちを赤子のように扱っているのだから。
「死ぬ前に何か言い残す事は?」
「我々は誇り高き剣士だ。敵の情けは受けない。最後までこの剣を振るおう」
「その強き心には頭が下がる。ではここからは礼儀を持って応戦するとしよう」
時間は十分に稼いだ。
分身からアンネが聖杯捜索を始めたという報告が入った。頃合いだろうとルインは遂にその力を示した。
剣豪は必死に抵抗したが相手は最強の吸血鬼。その場は血に染まり、残ったのは死体と悲しき勝者のみとなった。
勝利が確定されている勝負ほど退屈なものはない。しかも大半は恐れをなして逃げている。
これでは転生屋に来る前と変わらない。
「貴殿がザックスを倒したというハインツの兵士だな」
「そうだ。名乗った方がいいか?」
「いや、結構だ。ザックスを知っているならそれで十分。しかし、奴の無念は晴らせてもらう」
「二対一か。いや、聡明な判断だ。勝利の為にどんな手でも尽くす。それが人間というものだよ」
むしろ一騎打ちの方が珍しい。あれはあれで楽しかったが、やはり一騎打ちは互いの力量が均衡していないとただの虐殺になってしまう。
「悠長に話し合う気はない。それと無礼と承知で先に攻撃をさせてもらった」
いつの間にか細剣を引き抜いていたネグリスは勝ち誇り、ルインの左足を一瞥した。
そこに視線を落とすと左足は斬りつけられ、血を流していた。骨が見えるほどのものだが痛みに慣れ過ぎたルインにとってこの程度かすり傷に等しい。
「成る程、先ほど戦ったザックスとやらは人間にしては恐ろしいほどの剛腕だったがまさか魔法で斬撃を飛ばすとはな」
斬撃を飛ばせる奴は何人か見た事あるが、魔法を使ってというのはこいつが初めてだ。魔法があるので安定性があり、威力も相当なものだが俺が見てきた剣士の中では下から数えた方が早い程度の実力だろう。
「たった一度見ただけで攻撃の正体を見破っただと?」
「年の功というやつだ。それと中距離攻撃が出来るのは自分だけとは思わない事だ」
予め切っておいた指先を弾いて血を飛ばすと空中で強固して形のある斬撃となって、それはネグリスの左足を斬った。
「ぐっ……わざと足を狙ったな。首も狙えたというのに」
「容赦するつもりはないが、すぐに死なれては困るのだ」
あくまで囮作戦。ここで早々に終わらせてしまっては他の兵士たちがこちらに集まってこない。アンネが苦戦するとは思えないが少しでも負担を減らしてやらなくては。
「どうやら他にも侵入者がいるみたいだ。その足では動けまい。ここは任せて下がっていてくれ」
三剣豪の代表者であるマクアスが満を辞して前へ出て、剣を地に突き刺した。すると突如ルインの足元から剣が出現し、彼の肉体を貫いた。
「ふむ、これは……」
「それは私のみ使える魔法。まずは動きを封じさせてもらおう」
「大体把握した。やはり三剣豪も俺を殺すには至らないのだな」
この地面から出てきた剣に聖剣以上のそれは感じられない。
「何を言っている。貴殿はここで串刺しになって死ぬ」
柄を握る力が強くなると今度は一本ではなく、ルインの体が見えなくなるほど大量の数で貫いた。
「さて、ネグリス傷を見せてくれ。早めに治療をしないと共に戦場に立てなくなってしまう」
自身の最大の攻撃が当たり、勝利を確信したマクアスは助け起こそうと手を差し出すがそれは背後から迫る脅威を感知し自然と止まる。
「その心配はない。お前ら二人はここで死ぬ」
剣の山を素手で壊し、ゆっくりと二人の元へと歩み寄る。その際に剣の切っ先で肉を斬られてもただ真っ直ぐに。
「あれだけの剣に刺され無傷……だと⁉︎ 確実に命中していたはずだぞ」
「分かりやすく説明してやると俺には常に強力な回復魔法がかかっている。こうしていくら攻撃されても次の瞬間には無傷の状態に戻っているというわけだ」
「それが本当なら勇者よりも強い事になるが……」
「ああ、俺は勇者よりも強い」
アンネには悪いがそれは断言出来る。もし勇者に劣るのなら俺はこれほど悩んではいない。
そしてこの発言を二人は信じる他ない。三剣豪と謳われた自分たちを赤子のように扱っているのだから。
「死ぬ前に何か言い残す事は?」
「我々は誇り高き剣士だ。敵の情けは受けない。最後までこの剣を振るおう」
「その強き心には頭が下がる。ではここからは礼儀を持って応戦するとしよう」
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