転生屋の珍客共〜最強の吸血鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜
第19話 対立する四人と一匹
「もう疲れた。ここで休むわよ」
最初に根を上げたのはリルフィー。
手頃な岩を椅子代わりにして勝手に休憩をし始める。他の三人も仕方ないので同じようにする。
「ねえ、そろそろいいんじゃないのセリエ」
「何の話ですか?」
例の本を開き、いつものように淡々と返す。
「だ、か、ら〜その本での転移よ。もう嘘をつく相手もいないんだし、こんな無理する必要ないでしょ」
「そ、それってどういう事ですか?」
「あれ二人共気づいてなかったの。そりゃあバルドルはあんなのだけで仕事はちゃんとやる奴なのよ」
不本意だけと、と余計な一言を追加するがそれはリルフィーがバルドルの事を良く理解しているという証拠でもある。
「じゃあ、あのお金は?」
「私たちへの合図よ。セリエはここに来る前からあいつに指示を貰ってたみたいだけど」
あの奇行とも思えたユニコーン購入は計算された行動だった。移動手段をそれだけにして自然とルインを行かせる事に成功した。
「指示?」
「ルインに行かせろ。ただそれだけ。私がそれを知ったのはあの袋の中にあった指示書を見た時だけど多分、あいつを確かめようとしてるんじゃないの。私的には楽できていいけど」
店長とは思えない問題発言をしたが、それはこの際気にしないでおこう。ここで問題なのは何も言わず指示通りにルイン一人に任せた事だ。
「それでわざわざ師匠を危険な場所へ行かせたと言うんですか!」
「大丈夫よ。あいつは不死身なんだから。逆にこれはチャンスじゃない。入ったばかりの新人がみんなから信頼を得るのには大変だけど、あいつはこれを解決するだけで得られるんだから」
「心配じゃないんですか? 師匠は確かに不死身で負けるだなんて微塵も思ってないけど仲間なんだから協力しないと」
「わ、私もそう思います。ルインさんは良い人です。あ、人じゃなくても吸血鬼ですけどその……」
「ベルはやり方が気に食わないんだと。お前らのその陰湿なやり方がな!」
王冠の中から飛び出した使い魔は彼女の心の叫びを代わりに吐き出した。
「ビュ、ビュート。私はそこまで思ってないよ」
「でも良くは思ってないのね。とりあえずビュートは戻って。あんたがいると話が長引くから」
彼女もこの使い魔のしつこさを嫌というほど知っている。疲れている上に凶暴な獣がいるというこの岩山で煩くされてそれらを呼び寄せられたら目も当てられない。
「いいや、そうはいかないぜ。別にあのクソ吸血鬼を庇う気は毛頭ないがベルが悲しぬような事は許せねえんだよ」
「はいはい。じゃあ、私たちはどうしたらいいわけ?」
主であるベルですら制御出来ない使い魔を説き伏せる事など不可能でここでリルフィーは諦めざるを得なくなった。
「これから奴の元に行け。何かあっても助けられるようにな。それが出来ないならお前らの魂をここで抜き取ってやってもいいんだぜ」
中々に痺れる台詞だが、言っているのが蝿というのが残念な点だ。それに口数が多いのがいただけない。これではこれほどの台詞を言ってもプラスマイナスゼロとなってしまう。
「それを聞いて死神の私も黙ってられないわ。セリエさん、せめて私だけでも師匠の所へ飛ばしてください」
「分かりました。ではこうしましょう。近くに転移しますが私たちが手を貸すのは聖杯が手に入らない可能性が出てきた時とアンネさんが危険に晒された時だけです」
これはアズリエが余計な事をしないようにする為の決断。新人を試そうとしているのに今いる従業員が危険な目に遭うのは不本意ではない。
「ふん。じゃあ、俺は偵察係を引き受けてやるよ」
小さく、動きが素早いビュートは偵察に最適で使い魔は主が念じれば魔法により瞬時に戻って来られるという利点もある。
セリエに妥協してもらったビュートならではの気遣いでこれで一応この事態を収束させられた。
「じゃ、このキツイ登山をお終いね。それじゃあ早速行きましょう」
話を切り出したのはそれが狙いだったのではとセリエは疑ったが、今更変えるのは空気的に無理なので本を開いて二人が作戦会議をしていた廃れた小屋へと転移した。
最初に根を上げたのはリルフィー。
手頃な岩を椅子代わりにして勝手に休憩をし始める。他の三人も仕方ないので同じようにする。
「ねえ、そろそろいいんじゃないのセリエ」
「何の話ですか?」
例の本を開き、いつものように淡々と返す。
「だ、か、ら〜その本での転移よ。もう嘘をつく相手もいないんだし、こんな無理する必要ないでしょ」
「そ、それってどういう事ですか?」
「あれ二人共気づいてなかったの。そりゃあバルドルはあんなのだけで仕事はちゃんとやる奴なのよ」
不本意だけと、と余計な一言を追加するがそれはリルフィーがバルドルの事を良く理解しているという証拠でもある。
「じゃあ、あのお金は?」
「私たちへの合図よ。セリエはここに来る前からあいつに指示を貰ってたみたいだけど」
あの奇行とも思えたユニコーン購入は計算された行動だった。移動手段をそれだけにして自然とルインを行かせる事に成功した。
「指示?」
「ルインに行かせろ。ただそれだけ。私がそれを知ったのはあの袋の中にあった指示書を見た時だけど多分、あいつを確かめようとしてるんじゃないの。私的には楽できていいけど」
店長とは思えない問題発言をしたが、それはこの際気にしないでおこう。ここで問題なのは何も言わず指示通りにルイン一人に任せた事だ。
「それでわざわざ師匠を危険な場所へ行かせたと言うんですか!」
「大丈夫よ。あいつは不死身なんだから。逆にこれはチャンスじゃない。入ったばかりの新人がみんなから信頼を得るのには大変だけど、あいつはこれを解決するだけで得られるんだから」
「心配じゃないんですか? 師匠は確かに不死身で負けるだなんて微塵も思ってないけど仲間なんだから協力しないと」
「わ、私もそう思います。ルインさんは良い人です。あ、人じゃなくても吸血鬼ですけどその……」
「ベルはやり方が気に食わないんだと。お前らのその陰湿なやり方がな!」
王冠の中から飛び出した使い魔は彼女の心の叫びを代わりに吐き出した。
「ビュ、ビュート。私はそこまで思ってないよ」
「でも良くは思ってないのね。とりあえずビュートは戻って。あんたがいると話が長引くから」
彼女もこの使い魔のしつこさを嫌というほど知っている。疲れている上に凶暴な獣がいるというこの岩山で煩くされてそれらを呼び寄せられたら目も当てられない。
「いいや、そうはいかないぜ。別にあのクソ吸血鬼を庇う気は毛頭ないがベルが悲しぬような事は許せねえんだよ」
「はいはい。じゃあ、私たちはどうしたらいいわけ?」
主であるベルですら制御出来ない使い魔を説き伏せる事など不可能でここでリルフィーは諦めざるを得なくなった。
「これから奴の元に行け。何かあっても助けられるようにな。それが出来ないならお前らの魂をここで抜き取ってやってもいいんだぜ」
中々に痺れる台詞だが、言っているのが蝿というのが残念な点だ。それに口数が多いのがいただけない。これではこれほどの台詞を言ってもプラスマイナスゼロとなってしまう。
「それを聞いて死神の私も黙ってられないわ。セリエさん、せめて私だけでも師匠の所へ飛ばしてください」
「分かりました。ではこうしましょう。近くに転移しますが私たちが手を貸すのは聖杯が手に入らない可能性が出てきた時とアンネさんが危険に晒された時だけです」
これはアズリエが余計な事をしないようにする為の決断。新人を試そうとしているのに今いる従業員が危険な目に遭うのは不本意ではない。
「ふん。じゃあ、俺は偵察係を引き受けてやるよ」
小さく、動きが素早いビュートは偵察に最適で使い魔は主が念じれば魔法により瞬時に戻って来られるという利点もある。
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