奴ら(許嫁+幼馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…

和銅修一

学校の中心で愛を語る


 力ずくで連れて来られたのは小さな部屋。強引に座らされ、代表者と思しき者と対面することとなった。
「こ、ここは?」
「写真部の部室だ。ここなら邪魔者は入らない」
「いや、その前にここに飾られてるこの写真ってーー」
 壁一面に貼られている写真。それらは全て一人の女子生徒を写し出したものだった。
「気づいたか。まあ、無理もない。我らの天使は写真でも神々しい輝きを放っているだろう?」
「は、はぁ……」
 その女子生徒のことは良く知っている。何せ俺の幼馴染なのだから。
「代表、あまり時間がありません。そろそろ本題に入った方がよろしいかと」
「そうだな……。まず、君に来てもらったのは他でもない。我々のエンジェル、里沙ちゃんの件についてだ。そもそも我々は彼女のファンクラブなのだが最近見ていて元気がないと気づき、これはどうにかしなければいけないと思いこうして動くこととなったのだ」
「元気がない? そういえば、最近忙しくてあんまり喋れてないけどーー」
「それだっ! 幼馴染たる君に蔑ろにされたことにより機嫌を損ねているんだ」
「そんなことで?」
「好意を抱いている相手に蔑ろにされるとそうなるものだ」
「好意って……俺と里沙は幼馴染なだけだよ」
「本当にそうなのか? 我々は君なら我らが天使を任せられると思っているのだが」
「けど、俺は選べないんだ。俺は自分が誰が好きなのかも分からなくてーー」
「選ぶ? これはまた異な事を。現実はシミュレーションゲームのように見た目や性格で選んでいるようでは愛とは呼べない。何故か理由もわからないが好きという感情が溢れ出る。それが愛というものだよ」
「そういうものなのか? でも、確かに悩んで決めることじゃないよな……。よし、決めた」
「おお! 我らが愛しの天使がために動いてくれるのか」
「いや、これは俺のためだ。こんなモヤモヤしたまま青春を浪費したくないからな。悪いけど、お前たちの望む結果になるかはわからないからな」
 善は急げとばかりに部室を後にする興。それを見送ったファンクラブの面々、代表が物陰に隠れていたある男に声をかける。
「行ったか……。さて、友和殿。これで良かったのかな?」
「上々。後はあいつが何とかしてくれるさ」
 食堂で一緒であったはずの友和。彼は先回りして様子を見守っていた。理由は言わずもがなだ。
「しかし、何故我々を焚きつけてまでこのようなことを?」
「親友として困っている時に手を差し出すのは当たり前だ。けど、俺はそういうの柄じゃなくてな。どうしたもんかと悩んでいるところそちらさんの会議を小耳に挟んだというわけだ」
「食えない男だ。しかし、我々はもう彼に託すしかない。たとえどんな結果になるにしろ見守ろうじゃないか」
「ああ、そいつは利口だ。興に八つ当たりでもしようもんならこの部室が血の海になっていただろうからな」
「はっはっ。彼は良い友人を持ったようだね」
 こうして三雲 里沙ファンクラブの最初にして最後の活動は終わった。噂では今もなおこっそりと彼女の笑顔を撮るためにカメラを構えているというがその真相は闇の中である。

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