ラブコメで幼馴染が報われない法則について

和銅修一

第61話 どんな人にも一つは良いところがある法則について

 漫画や小説なんかにも願いを叶えるというものはいくつか存在する。そのほとんどが願い主が欲しい物を宣言してそれが貰えるというものだ。
 しかし、俺の場合は勝手に「お前の願いはこれだよ。俺は知ってるぜ」というちょっと親しくなっただけで彼氏ヅラ男子のようなウザさを発揮している。
 願いを叶えるという能力は破格だが、その内容が内容なだけにこんなところに封印されていたわけだ。
「それでどうやって無意識の願いを確認するんだ?」
 我が家に帰還して月が出始めた頃にリリエルの言っていたことが本当かどうか改めて確認する。
「私の能力の一つです。しかし、これは危険なものなので無理をして使うものではないと判断し報告はしていませんでした」
「ふ〜ん。まあ、妥当な判断だ。それにしても天使ってのは色んな能力があって便利だよな」
「普通は能力を持ってないからそいつが特別なんだぜ。その様子だと知らなかったみたいだけど」
「だってこいつ全然自分のこと話さないからさ」
 こっから聞くというのも天使だという高いハードルが邪魔をして何も聞けないで今に至る。
 同じ屋根の下で住んでいるというのにそれはどうなのかと叩かれても文句は言えない。
「必要がありませんから。蓮さんがお望みならいくらで話しますよ」
「考えとく。それでその能力って具体的にどんなのなんだ?」
 聞きたいのは山々だがそれはまた次の機会にとっておこう。
「端的に説明しますと魂の中へ侵入出来るというものです。ただしその中で何が起こるかは対象によって変化するのでとても危険です」
「だから潤香が必要なのか。俺は当然入れないだろうし、リリエルには争いごとは向かないしな」
「私も蓮さんのためならこの命は惜しくはありません。ですから今回は西条さんの補佐役としてご一緒しようかと」
「無理しなくて良いって。その調査だって命を賭けるようなものじゃないしな」
 あくまで無意識の願いを確認して今後に活かせたら良いな〜程度だ。そこまで意気込まれても正直困る。
「ですが私は蓮さんのお役に立ちたいのです。カマエル様の命令だからではなく、これは私の本心です」
 いつもは食べている時以外はあまり表情を変えないがこの時は真剣な眼差しで必死さを感じられた。
「へぇ〜、天使にこんなこと言わせるなんて意外とプレイボーイ何だな。こいつには覚悟があるみたいだし許してやれよ。俺が守ってやるからさ」
「お前がそこまで言うなら……ただし危険になったら戻って来い」
「はい。神に誓います。では準備をしますので少々お待ちください」
 忙しそうに動き出したリリエル。その姿を見ながらニヤニヤとほくそ笑む潤香は蓮の肩を掴んで呟く。
「いや〜、それにしても彼女をあそこまで変えるなんて本当に罪な男だな」
「からかうなよ。別に人ってもんは他人に影響されて変わるもんだ。今回はそのキッカケが俺だっただけで」
「けど、それって凄いことだぜ。まあお前のことだから説明しても意味ないと思うけど」
「分かってるじゃねえか。でも魂に侵入ってあんまりイメージ湧かないな。潤香は経験あるか?」
「あるわけないだろ。神威でもそんなこと誰もいないと思うぜ」
「そりゃあそうだろうな。しかし、手術するみたいで緊張するな」
 などと話しているとリリエルが戻って来て、早速開始する流れに入る。
「準備完了しました。それではまずご説明しますが今回は魂へ侵入するということで蓮さんには仮死状態になってもらいます」
「仮死状態⁉︎」
「安心してください。私たちが帰還し次第意識を取り戻るようになっていますので。ただ途中で邪魔が入ると厄介ですので結界を張らせていただきました」
「分かった。俺はどうしたら良い?」
「横になってください。それと最悪の場合は拒絶反応が起きて危険な状態になります。蓮さんに危険が陥ることはありませんが、私たちが蓮さんの魂に囚われてしまいますので頑張って抗ってください」
「自信はないがやってみる!」
 横になって目を閉じる蓮。
 そこでリリエルは翼を煌めかせてその能力を発現させる。すると蓮の体から白い光の球体が飛び出して空中で停止した。
 この球体こそが魂。
 潤香は唾を飲み込み、気持ちを引き締める。
「では始めましょう」
 二人は光となってその球体と一体化となって東雲家には静かな空気が流れた。

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