ラブコメで幼馴染が報われない法則について

和銅修一

第45話 やっぱり主人公には特別な力が必要な法則について

 いつも通りの朝ーーと思いきや我が家には天使だけでなく堕天使もいた。
「おはようございます蓮さん。葵さんですが、今日から挨拶強化週間というものが始まるらしく、既に登校しました」
「そうか。まあ、いつも忙しそうだし登校中に聞けるとは思ってなかったし大丈夫だけどさ。お前は何でいるんだよ」
「別に減るもんじゃないだから良いでしょ。それにリリエルにあんたのこと頼まれたから」
「まあ、良いけどさ。もしかしてこれからずっとここに住むとか言わないよな」
「ずっとはないわよ。でもとりあえず、問題が解決するまではお世話になるつもり」
 今日だけじゃないとは図々しいにもほどがあるが一人も二人もそう変わらない。
「あっそ。ほら、食べたらすぐに行くぞ」
 挨拶強化週間なら葵は校門近くにいるはずだ。そこで挨拶をしつつ、さりげなくそれらしき人物に心当たりがないか聞いてみるとしよう。
 そんなことを考えながら歩いていき、学園が見えてくるとクリムはいきなり足を止めた。
「どうした急に止まって。何か忘れ物か?」
「そんなのじゃないわよ。学園が結界に覆われているわ。それも大天使のものよ」
「大天使の結界? 美嘉のじゃないのか」
「それだったら事前に連絡するでしょ。まあ、私たちがいない間に何かあったっていう可能性もあるけど」
「これはミカエル様のものではありません。他の大天使様がやったのでしょう」
「分かるのかリリエル⁉︎」
「昔から感覚だけは鋭いのよ。でもこの学園に結界を張るなんて他には一人しかいないわよね」
 大天使サリエル。
 人間をも堕天使にする鬼畜。そいつ以外考えられない。俺たちの討伐対象だ。
「やばいな。もう学園に潜り込んでるってことか」
 その結界にどんな能力があるかは知らないが先手を取られたのは痛い。
「さあね。結界にも色々種類があるから遠くから張ったかもしれないわ」
「どっちにしろ入りにくいな。敵の腹の中に入るみたいで」
「しかし、入らないと遅刻しますよ」
「お前は相変わらずだな。でも確かにここにいてもどうにもならねえよな」
 意を決し、学園の敷地へ踏み入れる。他の生徒たちは挨拶強化週間ということで生徒会役員がいること以外いつもと変わらないように見えているのだろうが三人は死地へと赴く心境だった。
 しかし、いつも通りの学園風景が広がっているだけで大天使や堕天使の姿など見る影もない。
「何も起こらないな」
「この結界がどんな効果か分からない以上、油断は禁物よ。既に相手は私たちが入ったのを感じているかもしれないし」
「どうにかしてこの結界を破ることはできないのか? お前こういうの得意だろ」
「これより強い結界を張るか、結界を張った本人を倒すしかないわよ。ちなみに私にはどっちも無理だからね」
「この状態が続いてるってことは美嘉もか」
「ミカエル様は結界は不得意だと聞いたことがあります。私は救援を呼んで来ますのでお二人はミカエル様をお願いします」
「救援……数を増やしたところで勝てる相手とは思えないけどいないよりはマシね。じゃあ、頼むわよ」
 味方は多いほど良い。堕天使を掃討しているという天使たちをかき集めれば戦いになるかもしれないとリリエルは来た道を戻っていった。
「さて、これからどうする? 一限目はサボって学園長室に行くか?」
「そうね。地下に行く道も知っておきたいし行きましょうか」
 真っ直ぐ、幼女学園長のいる部屋へ行くとそこにはその背丈とは合わない大きな椅子に座り思いつめた顔をしている大天使がいた。
「お主たちか。その感じからして状況は話さんでも良いな。じゃが、お主たちが思っているほど悪くはなくての。学園の防衛システムを作動させておるから数日は時間は稼げるのじゃ」
「それは朗報だな。リリエルが呼びに行った救援が間に合うかもしれねえ」
「ほう、あの天使が……。じゃが、それは期待せん方が良いじゃろうな」
「どうしてだよ⁉︎ 数日もあれば集められるだろ。他の堕天使なんて無視すれば良いだしよ」
「数日稼げるのは良い報告、今から話すのは悪い報告じゃがこの学園の時間を弄ったせいで外からの侵入、影響等を一切受けつんようになっておる。普通の人間は異変には気づかんじゃろうが、つまりはここに生徒たちを閉じ込めたということじゃ」
 学園に敵が潜り込んでいるかもしれないが誰かは分からない。でも逃したくはない。その両方の問題をこの大天使様は力技で解決してみせた。
「じゃあ、ここにいる奴で敵を倒さないといけないってことかよ」
「儂もそこまでスパルタじゃないわい。少し大盤振る舞いな気もするがお主にとある権限を付与しようと思うておる」
「とある権限って何だよ」
 少し溜めて美嘉はニヤリと不敵に笑い、言い放った。
「人間を天使にする権限じゃ!」

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