ラブコメで幼馴染が報われない法則について
第25話 告白は木の下で行われる法則について
急いで戻ったが葵とは出会えなかった。
そこでからかわれたのではと思った瞬間、奇妙なメールが届く。送り主はあの女だ。その内容は『私に騙されるなんてまだまだ未熟ね』という意味不明なものだった。
俺をからかうことは何度かあったが、こんな無意味なイタズラをするような人ではない。
何か嫌な予感がする。
妙な内容だが、これはつまり葵は帰っておらずグラウンドの方にいたということだ。しかし、グラウンドには見当たらなかった。遠くとも幼馴染の姿を見逃す俺ではないのだが……。
いや、でもあのグラウンドの近くにはあれがあったはずだ。それの下で告白して結ばれた者は幸せになるという木が。
そんなギャルゲーにありそうな木が問題児が跋扈するこの学園に存在しても豚に真珠だ。
実際、そこで告白する生徒なんて片手で数えられる程度だし……待てよ。俺をあの場から遠ざけたのは葵にその場所で告白するから邪魔をされないようにということか?
そして俺は心当たりがある。
そう生徒会長だ。
あのギャルゲーの主人公みたいな人ならそこで告白をするはず。相手はもちろん葵。
だがこれは嬉しい誤算だ。これで二人が付き合うことになれば、あとは恵に専念して計画を進行していくだけとなる。
となると俺はそれが成功するように祈るだけで良いが、ただジッとしているのは性に合わない。
告白現場となるであろう木の元へ行くと丁度これから告白するという場面に出くわした。
「葵くん。一緒に生徒会活動をしていて仕事ができて、たまにお茶目なところを見せる君に僕は段々惹かれていった。今日はその思いを君に伝えたくてここに呼んだんだ」
前口上を終えて、スッと息を吸ってその言葉を口にする。
「僕と付き合ってください」
ストレートだが回りくどい言い方よりもずっと思いが伝わる一言だ。その真剣さは伝わったようで葵もそれに応える。
「ごめんなさい。私、生徒会長とは付き合えません」
「そっ……か。いや、葵くんが謝ることじゃないよ。何となくそんな気がしてたから。やっぱりあの幼馴染くんが理由かな?」
「はい。私が好きなのは昔から蓮だけで他の人とは付き合う気がないので」
「それはそれは。彼は幸せ者だね。それじゃあこの件は忘れて。これからも今まで通りよろしくね」
「はい。生徒会長」
え〜と、告白に失敗したのは残念なことだね。まあ、でも本人は自分の気持ちを伝えたかったみたいだから結果は関係ないのかもな〜。
しかし、まさか俺の予想が外れるとは。俺もまだまだ幼馴染レベルが足りない証拠か。時間ができたらレベル上げをしないとな。
いや〜、それにしてもまさか葵の想い人が俺だったなんて……マジか⁉︎
ヤバイぞ。何か急に罪悪感が芽生えてきた。今の告白は絶対に俺は見ちゃ駄目なやつだったよ。
そりゃあ、俺も葵は好きだよ!
幼馴染としてというのもあるけど異性としてもだ。正直、告白されたら断れる気がしないが……そうなったら恵はどうする?
俺の計画は二人とも幸せにするというもの。葵だけでは成功とは言えない。
そうだな。こうなってくると恵を想い人とくっ付けさせてから今後を考える必要がありそうだ。
まずは今日見たことは胸の中にしまっておこう。このままだと気が変になってしまう。
なんて頭がショート寸前になりつつも校舎へと戻っていると途中で鉢合わせした。
「あ、蓮! も〜、どこ行ってたの? 急にいなくなるからビックリしちゃったよ。もしかしてあのイジワルな人に何かされた?」
イジワルな人とはあの新聞部部長のことだろう。あんなやり取りを見てたからそう思い込んでいるんだろう。腹を割って話し合えば……いや、それでも恵の認識は変わらなそうだ。
「いや、ちょっとな」
流石に人の告白現場を盗み見してましたとは言えない。
首を傾げ、訝しんでいるが今は納得してくれるような言い訳は思い浮かばない。
「あれ、他の人たちも帰ってきてる。じゃあ野球も終わったんだね。もう球技大会終わっちゃうんだ」
何週間か前から練習を重ねている生徒にとってあっという間の時間だっただろう。
計画通りだったらもう二人とも好きな人と一緒になって幸せなひと時を味わっているはずなのに……。
蓮は自分の計画が水を含んだ角砂糖のように崩壊していくことを悲観しているとそれを知らないリリエルが駆けつけた。
「蓮さん。それに恵さんもここにいらしてたんですね。中庭で閉会式をするようなので戻りましょう」
「わざわざ教えてくれてありがと。ほら、蓮! ボッーとしてないで行くよ」
同時進行をしようとした球技大会は結局、どちらも成功することなく驚愕の真実が蓮に突きつけられて終幕を迎えた。
そこでからかわれたのではと思った瞬間、奇妙なメールが届く。送り主はあの女だ。その内容は『私に騙されるなんてまだまだ未熟ね』という意味不明なものだった。
俺をからかうことは何度かあったが、こんな無意味なイタズラをするような人ではない。
何か嫌な予感がする。
妙な内容だが、これはつまり葵は帰っておらずグラウンドの方にいたということだ。しかし、グラウンドには見当たらなかった。遠くとも幼馴染の姿を見逃す俺ではないのだが……。
いや、でもあのグラウンドの近くにはあれがあったはずだ。それの下で告白して結ばれた者は幸せになるという木が。
そんなギャルゲーにありそうな木が問題児が跋扈するこの学園に存在しても豚に真珠だ。
実際、そこで告白する生徒なんて片手で数えられる程度だし……待てよ。俺をあの場から遠ざけたのは葵にその場所で告白するから邪魔をされないようにということか?
そして俺は心当たりがある。
そう生徒会長だ。
あのギャルゲーの主人公みたいな人ならそこで告白をするはず。相手はもちろん葵。
だがこれは嬉しい誤算だ。これで二人が付き合うことになれば、あとは恵に専念して計画を進行していくだけとなる。
となると俺はそれが成功するように祈るだけで良いが、ただジッとしているのは性に合わない。
告白現場となるであろう木の元へ行くと丁度これから告白するという場面に出くわした。
「葵くん。一緒に生徒会活動をしていて仕事ができて、たまにお茶目なところを見せる君に僕は段々惹かれていった。今日はその思いを君に伝えたくてここに呼んだんだ」
前口上を終えて、スッと息を吸ってその言葉を口にする。
「僕と付き合ってください」
ストレートだが回りくどい言い方よりもずっと思いが伝わる一言だ。その真剣さは伝わったようで葵もそれに応える。
「ごめんなさい。私、生徒会長とは付き合えません」
「そっ……か。いや、葵くんが謝ることじゃないよ。何となくそんな気がしてたから。やっぱりあの幼馴染くんが理由かな?」
「はい。私が好きなのは昔から蓮だけで他の人とは付き合う気がないので」
「それはそれは。彼は幸せ者だね。それじゃあこの件は忘れて。これからも今まで通りよろしくね」
「はい。生徒会長」
え〜と、告白に失敗したのは残念なことだね。まあ、でも本人は自分の気持ちを伝えたかったみたいだから結果は関係ないのかもな〜。
しかし、まさか俺の予想が外れるとは。俺もまだまだ幼馴染レベルが足りない証拠か。時間ができたらレベル上げをしないとな。
いや〜、それにしてもまさか葵の想い人が俺だったなんて……マジか⁉︎
ヤバイぞ。何か急に罪悪感が芽生えてきた。今の告白は絶対に俺は見ちゃ駄目なやつだったよ。
そりゃあ、俺も葵は好きだよ!
幼馴染としてというのもあるけど異性としてもだ。正直、告白されたら断れる気がしないが……そうなったら恵はどうする?
俺の計画は二人とも幸せにするというもの。葵だけでは成功とは言えない。
そうだな。こうなってくると恵を想い人とくっ付けさせてから今後を考える必要がありそうだ。
まずは今日見たことは胸の中にしまっておこう。このままだと気が変になってしまう。
なんて頭がショート寸前になりつつも校舎へと戻っていると途中で鉢合わせした。
「あ、蓮! も〜、どこ行ってたの? 急にいなくなるからビックリしちゃったよ。もしかしてあのイジワルな人に何かされた?」
イジワルな人とはあの新聞部部長のことだろう。あんなやり取りを見てたからそう思い込んでいるんだろう。腹を割って話し合えば……いや、それでも恵の認識は変わらなそうだ。
「いや、ちょっとな」
流石に人の告白現場を盗み見してましたとは言えない。
首を傾げ、訝しんでいるが今は納得してくれるような言い訳は思い浮かばない。
「あれ、他の人たちも帰ってきてる。じゃあ野球も終わったんだね。もう球技大会終わっちゃうんだ」
何週間か前から練習を重ねている生徒にとってあっという間の時間だっただろう。
計画通りだったらもう二人とも好きな人と一緒になって幸せなひと時を味わっているはずなのに……。
蓮は自分の計画が水を含んだ角砂糖のように崩壊していくことを悲観しているとそれを知らないリリエルが駆けつけた。
「蓮さん。それに恵さんもここにいらしてたんですね。中庭で閉会式をするようなので戻りましょう」
「わざわざ教えてくれてありがと。ほら、蓮! ボッーとしてないで行くよ」
同時進行をしようとした球技大会は結局、どちらも成功することなく驚愕の真実が蓮に突きつけられて終幕を迎えた。
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