村人から世界最強の魔王へ

つくつく

11.圧勝

真冬「三年の生徒会長。一ノ瀬 雪斗」
と真冬が説明をしてきた。
なるほど。こいつが生徒会長か。
と思い、試合に視線を動かすと開始の合図がなった。次の瞬間、相手の生徒が動き出した。短期決戦で勝負をつけようとしているのだろう。しかし、生徒会長の方が早い。こんなスピードで距離を詰められると思っていなかったのか、突然止まろうと減速した時、生徒会長がスピードを上げて相手の後ろに回り込み、振り返ろうとしたが、そこまでだった。相手は気づけば倒れていた。生徒会長である一ノ瀬が相手を圧倒的に上回るスピードで動き相手を素手で無力化したのだ。
瞬殺としか言いようのない試合だった。
悠人「生徒会長か。さすがに強いな」
と思い、見ていると、生徒会長と目が合い、こちらに微笑みを向けてきたのが分かり、会釈を返した。
悠人「なぁ、ゆな。俺の試合はいつだ?」
とゆなに聞くと、ゆなは腰に手を当て前屈みになり、こちらを睨んだ。
ゆな「もう!自分のことぐらい自分で把握しなさい!昔から悠人はー」
しまった。ゆなのお得意の説教が始まってしまった。と思っていると、ゆなの目つきがさらに鋭さを増し
ゆな「ちょと聞いてるの悠人」
悠人「聞いてるよ。悪かった。悪かった」
と適当に返事をするとゆなは拗ねたように頬を膨らませた。
ゆな「もう、悠人は。…悠人の試合は3つ先」
悠人「そうか。じゃあ、準備しに行ってくるよ」
と返すとゆなは
ゆな「悠人!わ、私は、、、応援してるから!」
とゆなは顔を赤く染めながら声を上げた。
ゆなも昔と同じで変わってないことに安堵してしまい、笑みがこぼれそうになるのを止め、
悠人「ありがとな」
とだけ返して試合場所に悠人は足を進めた。

太陽が、日差しが頭上にあり、眩しい光が降り注いでいる。
暑い。今の気持ちを表せと言われれば間違いなくそう答えるだろう。場所は巨大な円形の闘技場、コロッセオと呼ばれる建造物の中心に足を進めた。観客がこちらに何か言っているが、騒々しく、何と言っているのかはよく分からなかった。人からの声や目線がこれほどまでに鬱陶しく感じたのは今まで初めてかもしれない。
そして、歩みを止め目の前に立っている人を見る。たしかBクラスの生徒だとルシフェルか、ゆなのどちらかから聞いた気がする。
ついに俺の1回目の試合が始まろうとしている。
審判が試合開始のコングを鳴った。相手はこちらを睨み魔法の詠唱を始める。その前に出された手は震えており、その相手の表情からは緊張が読み取れる。
それもそのはず、彼らにとってはこの試合はそれだけ、今後の人生に影響が出ると言っても過言ではないほど大事な試合なのである。
だが、俺の今ここでの問題はどれほどの力を出すかだ。本気でやれば、今目の前にいる、人間は1秒ともたずに肉片に変わるだろう。
だが、俺の目的はあくまでも目立たずに勝つことにある。真冬に一度ファフニールの火の魔法が見られているため、それ以外の魔法を使うのは愚策もいいところだ。かと言って、ファフニールの魔法を使えばいやでも目立つ。しかし、俺自身は、ほとんど魔法が使えない。よって俺は、魔法を使わずに勝たなければいけない。
相手の生徒の詠唱が終わり、こちらに火の玉の攻撃をしてくる。それを、ギリギリで避けたように見せた。
それで観客席から笑い声が聞こえてきた。おそらく、今は馬鹿にされているのだろう。現に相手の表情から悔しさが滲み出ているのが手に取るように分かる。
相手の生徒がもう一度詠唱を始める。
相手の生徒には悪いが、みんなの前で恥をかいて貰うことにした。相手の生徒は火の魔法の詠唱をしいた。そこに支配の能力により、相手の火の魔法を自分の支配下におき、悠人の膨大な魔力を注ぎ込む。すると膨れに膨れ上がった火の玉は爆破した。それにより相手の選手は数メートルほど吹き飛んだ。
支配の能力により強制的に魔力制御を失敗させたのだ。
相手の生徒は地面を何度か転がり止まったが、その時にはすでに意識はなく、周りから見れば何もせずに偶然勝利をしたのだ。
審判が試合終了のコングを鳴らした。
上にいるゆなと目が合い、こちらに向かって手を振ってきたが、視線を逸らして無視して控え室へと戻って行った。
観客席のある2階に上がる階段を上がっていると、一番上の段にゆなが仁王立ちで頬を少し膨らませながら、待っていた。
悠人「なんだ?」
とゆなに言うと、ゆなはそっぽを向いた。
悠人「?どうしたゆな?」
とゆなの前まで行くと、顔は横を向いたまま目だけを悠人に向けると
ゆな「悠人が私を無視したので、私も悠人を無視してるんです」
とふてくされながら言ってきた。
どうやら、先程ゆなが手を振ってきたのを無視したのを怒っているらしい。
中身はほとんど昔と変わっていないなと思い、外見ばかり大きくなった幼馴染に視線を向けた。
悠人は一度息を吐くと
悠人「ゆな俺が悪かったよ」
と悠人が言って、頭を撫でた。
ゆな「えへへ。うん分かった。特別に許してあげる」
とゆなは笑顔で言ってきた。
そこで、アリスも怒らしたままだったのを思い出した。
悠人「ゆな。エリナが何処にいるか知らないか?」
ゆな「エリナさん?ううん。知らないよ」
「おーい!雨宮!」
と声の主の方を見やると坂木がこちらに向かって走ってきた。
悠人「坂木か。どうした?」
坂木は、膝に手をつきながら言ってきた
坂木「た、大変だ。面倒ごとにエリナさんが巻き込まれちまった。向こうでー」
と最後まで聞かず、坂木が指をさした方角に向かって、悠人は走り出した。
「おい俺の話を聞いていたのか?俺の女にしてやるって言ってるんだ」
エリナ「あら。あなたこそ聞いていなかったのかしら。丁重にお断りしますと言ったはずだけれど」
と少しするとアリスと男子生徒が口論しているのが見えた。
「お前。俺は四辻家だ。はなからお前にはい以外の答えはねぇんだよ」
と四辻と名乗ったオレンジ色の髪の目つきの悪い顔が特徴的な男とその周りにいる取り巻き達がニヤニヤと笑っていた。
ゆな「悠人。どうしよう」
と、さっき来たゆながおろおろと戸惑っていた。
悠人「ちょと行ってくる」
と悠人が行こうとすると、ゆなが後ろから慌てたように声をかけてきた
ゆな「え!?ちょと!相手は四辻家で名門だよ」
悠人「わかった」
とだけ返すと、野次馬達を避けながらな歩みを進めた。
アリス「いい加減にしてもらってもいいかしら。私もあなたに構ってあげれるほど暇ではないの。お遊びは他所でやってもらえる」
四辻「...クク..ハハハハ!」
と四辻が笑い出したかと思うと
四辻「お前。もう容赦しねぇからな。お前の周りにいる親しいゴミどもを俺が全部ぶっ殺してやるよ。お前の前で痛めつけてな。いいか村人。お前らゴミどもと貴族の立場の差を俺が直々に教えてやるよ」
どうやらこの四辻は、アリスの言葉に腹を立てたらしい。
アリス「、、黙りなさい!警告よ。発言の撤回を要求するわ」
と四辻の言葉にアリスがキレたらしく、先程までの様子とは打って変わって怒りを抑えることなく、相手を睨んだ。
四辻「いいか。教えてやる。お前らはなどんなに努力をしても意味がない欠陥品なんだよ。俺ら選ばれた人間とは違う無能者だ。自分の立場がわかったか?」
アリス「そう、発言の撤回はしないのね」
アリスはふふと笑ったかと思うと手を上げ底冷えするほどの冷たい声音で
アリス「もう、あなたいらない」

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