村人から世界最強の魔王へ

つくつく

3俺にしか出来ないこと

悠人「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、母親を無くした少年の無残な金切り声が辺り一面に響いた。
しばらく叫んだ 悠人は、ただただ呆然と地面を見つめていた。
 そんな悠人の前に誰かが立った。そちらに目を向けると教会で会った男が立っており、その男がフードをとると髪は長く銀色で目つきが鋭くこれほどまでに端正な容貌の男を悠人は、見た事がなかった。その男が膝を地面につけ、
「私の名は、ルシフェルです。お迎えに参りました」
悠人「迎え?何を言って・・・」
ルシフェル「私達には貴方が必要なのです」
その遠回しな言い方に先程までの怒りが残っており
悠人「私達?何故俺が?」
ルシフェル「本来の形に戻すのです。分かりやすく言うと、 我らが王ー《魔王》になってもらいます。」
言った。
悠人はこいつが何を言っているのかわからなかった。
悠人「違う!俺は魔族じゃない!」
ルシフェルは、まっすぐ悠人を見つめ
ルシフェル「貴方が認めなくてもそれが真実です。教会で確認したのでは?」
とルシフェルは言って悠人のポケットを指差した。
それに悠人はポケットに入ってるプレートを見る。
そこには【雨宮悠人:人間】と言う文字ではなく、書かれていたのは
【雨宮悠人:魔族 】
【技能:破壊魔法 支配 魔法耐性 肉体強化 肉体変化  自己再生   状態異常 罰 】
悠人「え?冗談だろ?」
そう言えばあの時急に黒くなったと思ったら熱くなって、、、、
悠人「あははは」
何が勇者だ。人間ですらないじゃねぇか。村の奴等の言った通りだ。俺は、魔族の子だったんだ。
悠人の口から漏れ出たのは悔しさからくる言葉ではなく、笑い声だった。
ルシフェル「さぁ、我らが屋敷に参りましょう」
と言って、再びフードを被り悠人の体を自分に引き寄せ背中から羽をだした。
悠人「離せ!」
と、悠人がルシフェルに言ったが、ルシフェルは、無視して、飛ぼうとした時
ゆな「悠人ーーー!!!!」
と、ゆなが声を上げた。ゆなの方を見るとその表情には、怒りが滲んでいるのが分かった。
ゆな「よくも父さん母さんを!この魔族が!殺してやる!!」
それにルシフェルは、ゆなを冷たい瞳で見つめ、何か、能力を発動しようとしているのが悠人には分かり
悠人「おい。あいつには手を出すな」
と底冷えするような声で言った。しかし、それにルシフェルは怯えるどころか、まるで、我が子を見守る父のような微笑みで優しく言った。                                                                  
ルシフェル「分かりました。今は何もしません。それでは参りましょう」
と言って、飛び去ろうとする。それにゆなは、
ゆな「貴様悠人を何処に連れて行く!貴様ら魔族は、絶対に私が皆殺しにしてやる!!!!!!」
ゆなの悲痛な憎悪のこもった言葉をルシフェルは、無視して物凄い速さで空を飛んだ。
着いたのは貴族がすむような豪邸だった。黙って見つめていると、ルシフェルが
ルシフェル「貴方の兄上様が、革命を起こし魔王城を乗っ取りました。私は、、いえ、“私達”は、その敵対組織でございます。それが今の状況でございます」
そう言って説明してくれた。それに悠人は、
悠人「何故それを俺に言う必要がある。俺は魔王なんてならないぞ」
ルシフェル「理由を伺っても?」
悠人「何を訳の分からないことを言ってる。勝手に連れてこられて魔王にはいなりますなんて言うとおもってんのか?」
ルシフェル「村人から散々虐げられ、差別されたのにですか?」
悠人「どこでそれを…」
ルシフェルは、ふふっと笑い声を漏らし
ルシフェル「人をどう思いますか?」
悠人は、表情を見られないように地面を見ながら
悠人「黙れ」
と言った。ルシフェルは、それを無視して続けた。
ルシフェル「人間はどうでしたか?醜く愚かではありませんでしたか?普段は仲良しごっこをしていても、あのような状況を“作り出せば”他を犠牲にしてでも生に食らいつく姿は、醜く、滑稽ではではありませんか!気持ち悪いという感情は、決して間違いなどではありません。
それにもう分かっているのでは?貴方の母親を殺したのは魔族ではなく人間だと」
それに悠人は、目を見開き目の前にいる。全てを見通している‘悪魔’に目を向ける。
頭に先程の光景が蘇る。悠人の母親は、家の中で死んでおり、体の近くには、木製の斧が落ちていた。首はその斧で斬られたような切断面が見てとれた。母親の体は一切食べられている痕跡などなかった。
ルシフェル「貴方が人間側に立つ理由など何処にもありはしないのです」
そしてルシフェルは、屋敷の扉を開けると中には、人の姿をした“人間ではないもの”たちが跪いていた。
そして、横にいたルシフェルがその集団の一番前に立ちそのまま跪く姿勢になった。
そして、顔を上げ
ルシフェル「さあ、手をお取りください」
と言って、手を悠人の方に伸ばした。
そして、今にも橋から落ちてしまいそうな子供を押して落とし、とどめを刺すと言わんばかりに言葉を続けた。
ルシフェル「人間の勇者がどうなるのか、教える事も出来ます。あの娘を守る事も…敵にしか出来ない事もあります。あの娘を助けたくはないのですか?」
ーあぁ。これは決定事項だ。初めから俺に選択肢は などないんだ。そうか。それならー
悠人「一つだけ、お願いがある」と短く返した。
それにルシフェルは、悠人の目を見ながら
ルシフェル「なんなりとお申し付けください。その願いとは?」と聞いてきた。
こんな事は言うべきではない。きっと弱みに使われるだろう。だが、それでも、頼るしかなかった。
そして、自分の力では、誰も守る事のできない、力の弱い少年悠人は、その口を開いた
悠人「俺の願いはーーー」
それにルシフェルは、条件をいくつか出しそれを悠人は飲む事しか出来なかった。
そして、今日この日、魔王となった悠人の日常は、劇的に変わっていった。ゆっくりと世界が終わりへと進んでいった。いや、もしかすると終わり始まりもありはしないのかもしれない・・・

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