Light Light Light!

保月 結弦

第1章 始まりの町











 「〜っと、着いたー」

 そう言って一つ伸びをすると、コルチカム=ティノは荷物を足元に置いた。
 久々の太陽に長いこと晒されてしまったためか、少々頭がクラクラする。よく晴れた空にこの日差しは気持ちの良い1日となりそうだ。
 到着した街はかなり賑わっており、予想以上に人が多いようだ。まあ嬉しい誤算であるかな。
 俺の夢はただ一つ。

のんびりと平和に暮らす事だ。

 特に目立ちもせず、多少のお金が稼げるくらいでいい。もちろんの事だが、危険な厄介事などもってのほかである。

 一息つくと足元に置いた荷物をもう一度持ち上げ街へと入場する。
 

 「へいらっしゃい!兄ちゃん、安くしとくよ!」


 「ママーあれ欲しい、買って!」


 「おい、この後の予定だが...」


 街に入ると人の話し声は格段と聞きやすくなった。店の店員、小さな子供と親子、装備を揃えたガッチリ系の男達、色んな人が話をしている。

 静かな街よりも、これくらいの話し声が聞こえた方が俺は好きだな。まぁ静かに過ごしたいって夢とは矛盾している気はしなくもないが、多少の賑わいは必要ってことなのだ。察して欲しい。

 それに、のんびり暮らすための手順の1つに街の賑わいは大きく関わってくる。


 それは、喫茶店を開こうと思っているのだ。


 何故喫茶店なのかって?だって、喫茶店って雰囲気が落ち着いているだろう?
 俺はあの感じが好きなのだ。落ち着いていて、気休めの珈琲が飲める、そして何よりも良しとするのがあの独特の喫茶店の匂いである。

 あの年期のある木造建築と珈琲の香りが染み込んだ家に住めれば俺はもう死んでもいい...ってくらいは本気で思っている。静かで豊かな暮らしが出来ればなお良し。

 そんな事を目標に掲げながら俺は今まで頑張って来たのだ。そこそこの金も貯めたし、良い物件も買うことが出来た。まだ人材は集めてないが、まぁバイト募集でもかければ多少は来てくれるだろう。

 兎に角、俺はこの喫茶店で過ごす。少しは壁にぶつかるだろうが念願の夢を叶えられるなら乗り越えて見せようではないか。



  「おい!大変だ!」


 ─?


 妄想に浸っていると、気づけば男が1人紙を持って広場で話をしている。


 「またやられた、今回は靴屋のせがれだ」

 
 「まぁ、これで何人目よ」


 「全く、恐ろしい、若い奴ほど好奇心が旺盛すぎる。良くないことじゃ」


 「もういやよ!いつになったら王都から騎士様が来るの?」


 よっぽどその話題は興味を唆られるものなのだろうか?周りにいた人々は次第に多くなっていく。


 「クソッ!もういい!俺が今夜行ってとっちめてやる!おい、今夜手伝えるやつはいないか?」


 「お止めよ!なんの能力も持たないあたしらが出向いても何もできやしないよ!」


 「うるせぇ!じゃ、このまま霊族にやられっぱなしでいいのかよ!」


 俺はその会話を聞くと、耳を塞ぎたくなる気持ちで一杯であった。



 
 この世界では、死んだ者の魂の存在が正式に認められている。死んだものは幽霊となり、49日間この世にさまよい続けるというものである。しかし、全ての生き物が幽霊となる訳ではなく、ある特定の生き物のみが幽霊となる。それは体の一部にとある紋章があると死後、幽霊となるらしい。俺たちはその者達を(霊族・・)と読んでいる。
 霊族の人数比は世界の人口のやく1割程度、少数派の人間ということだ。しかし彼らは全員がポテンシャルが兎に角高く、何かしら人間外れの事が出来るのだ。
 謎の紋章に、人間外れの能力、それに差別による恨みが募り最近では多くの幽霊が人間達を苦しめる行動に出ているという。
 その影響があるのか、一般の人間達は彼らを怖がりより一層差別が増えている。



 「そうだ!大勢で行けば霊族の1人や2人...」


 「どうせろくな奴じゃねぇ!みんなでやっちまおうぜ」



 見ての通り、差別は一方的に強くなるためだんだんと暴力へと変化してしまっているのが現状である。また、国王直属聖騎士団・・・・・・・・という霊族に対抗する者達まで出来てしまっている。彼らは1人1人が能力を持った者達で構成されており、霊族に対抗できる唯一の者なのかもしれない。

 しかし、この一方的な差別に反対する者もいるのだ。可哀想だ、酷すぎると言った声が上がって聖騎士団に歯向かう能力者達が立ち上がった軍勢もちらほらと現れている。騎士団と霊族軍の力は五分五分、僅かに騎士軍有利と言ったところだろうか?



 「お待ちよ、あんた達!もうすぐ騎士様が到着なさるでしょ!それまでお待ちよ」


 「そんな事言ってる場合じゃねぇだろ!一刻も早くあの屋敷を潰さねぇと...」



 「何をお困りなのかな?」

 

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