海の声

漆湯講義

162.暗闇のキャンパス

そのおじさん達の笑い声が家の外に聞こえる。島はすっかりと祭りムードに包まれているようだった。

その日は美雨も泊まっていく事になり、挨拶をしにやってきた村長さんがくれたお菓子の詰め合わせを食べながら夜を過ごした。今更ながら渡し子の練習などはしなくてよかったものかと不安にもなったが、そんな不安は、いつもの調子で美雨がどこかへと飛ばしてしまった。
そして俺が通訳をする形で海美と美雨が思い出話に花を咲かせる。海美の話をおうむ返しするようなもんだから、二人の会話でどうでもいいようなことまで頭に残ってしまう。それに、海美は俺が通訳する時に少しでも言い方を変えると"違うよっ、私はこーやって言ったんだよ"なんて言うもんだからなるべく正確に伝えなきゃなんない。正直、最近ふと自分が女みたいな喋り方になってるんじゃないかって不安になる事がある。
まぁそんなことはさて置き、二人の長い話は中々終わる事なく、俺の瞼が自然と落ちてしまうまで俺の仕事は続いた。

外から聞こえたおじさんの大きなクシャミの音にふと目が覚めた。
窓から差す月明かりが部屋の中を薄暗く照らしている。
あ…俺寝ちゃってたのか。風呂入んないと。
そう思って横になった身体を一度仰向けに直そうと身体を捻ると、座り込み窓を見つめる海美の姿が目に映った。
「うわっ、びっくりしたぁ…なんだ起きてたの?」
そう言って身体を飛び上がらせた俺に対し、海美は驚く様子もなくふと俺を見て微笑んだ。
『ふふ、ゴメンね、なんだか寝れなくって』
すると海美は"おやすみ"と横になって俺に背を向けた。
寝れないって言ったばっかなのに。なんて思いつつ俺は小さく「海美、風呂は?」と声を掛けた。



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コメント

  • 漆湯講義

    絶対目の動きヤバい事になってるでしょうね(゚Д゚iiiii)うーん…早くないと言える人間に出会える自身がありませんwwwwwww

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  • あいす/Aisu

    秒速24文字…エグいなぁ…

    1
  • 漆湯講義

    えっと…秒速約24文字ですね(´。-ω-)……………………(゚Д゚≡゚Д゚)!!

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