海の声

漆湯講義

110.コネクト

『降りよ。』

少し元気の無いような美雨に続いて船を降りた。待合室で談笑しながら船を待っていた人達の横を通り過ぎ、俺たちはバス停へと向かっていった。

『ねぇ、さっきのコト謝んなくていいの?』

俺の顔を覗き込んで海美が話しかける。
そして、少し前を歩く美雨の背中を見つめたまま俺はふと立ち止まった。

「美雨っ、さっきのコトだけど…」

『もうすぐバス来るから急いでっ。』

振り返ることもなくそう言った美雨に海美が駆け寄り、顔を覗き込んだと思うと、不意に俺の手を取って引っ張ると、その手を美雨の手に重ねた。

『な、なんだよ急にッ!!』

「いやッ、コレは!!」

パッと海美を見ると、海美はニコニコと微笑んで『仲直りしなさいっ♪』と俺の手を握らせた。

『セイジのヘンタイッ。』

そう言いつつも振り解かれなかった手をそのままに、緊張で硬直しきってしまいそうな身体を無理矢理に動かして足を進めた。

綺麗に整備された歩道を進むとバス停が見えた。バス停の看板にはバスの接近を知らせるランプが点灯しているようだった。

ぎこちないままにバス停に着くと、バスを待つおばさんがこちらを見て微笑む。

何?なんで笑ったの今?!

おばさんの視線は明らかに俺たちの手に向けられていた。俺は恥ずかしさが増して手を離そうとするも、ぎゅっと握られた美雨の手がそうさせてくれない。

美雨も嫌なら離せばいいのに…

海美はベンチへと腰掛け、なにやら考え事をしているようだ。

すると『ふふ、若いって良いわね。なんかおばさんまで若返っちゃうわ♪』

突然話しかけてきたおばさんに苦笑いを浮かべつつ美雨に視線を移す。

なんで顔赤くなってんだよ…えっ?!もしかして美雨って俺の事…







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