海の声

漆湯講義

77.疑惑の解決

「美雨…今日なんであそこでお前を待ってたかだけど…」

美雨は何も言わず俺を睨み続けている。
海美は下を向いたまま俺の言葉を待っているようだった。

「海美に会わせようとしたんだ、俺。」

その瞬間、美雨が勢いよく立ち上がり、俺の肩を掴んだ。

『馬鹿言うなっ!!そんな訳ないだろ!!海美ねぇは…海美ねぇは!!』

「知ってるよ、その…死んじゃったんだろ…」

『勝手に殺すなっ!!死んでなんかない!!』

えっ?

俺はすぐに海美の方へと視線を向ける。

海美は…唖然とした表情でぽかんと口を開けたまま美雨を見つめている。
初めて見る海美の間抜け面だ…そんな事考えてる場合じゃない!!どういう事だ?!

『海美ねぇは今入院してんだよ!!意識が戻らなくて必死に頑張ってるんだ!!それを死んだとか…セイジ!!一回殴らせろッ!!』

そう言って美雨の平手が勢いよく上空へと上げられる。

「ちょっ!!ちょっと待て!!じゃぁ海美は生きてるって事か?!」

『そうだよ!!だからなんなんだ…ヨッ!!』

"ペシーンッ"

頬が痺れと熱に包まれ、俺はその身体を床へと叩きつけられた。
な…なんで俺が。

『あースッキリした。ほらセイジ、とりあえず起きてゴメンナサイだろ?言い訳はそれから聞いてやるッ。』

「ってぇー…このやろー…もういい!!お前ちょっと座ってろ!!お前に謝らせてやる。」

そう言って俺はダンボール箱の端を破り取ると、ペンを取り出し美雨の前に置いた。

「海美!!なんか言ってやってくれ!!」

『…このッ!!まだ懲りないのかッ!!』

「いいから黙って座ってろ!!」

『え…誠司くん?どうすれば…いいの?』

「なんでもいいからそこに書いてやってくれよ。」

戸惑いつつも何かを決意したように、海美は不信感漂う美雨の前でそっとペンを取った。

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