少女寿命

こむぎ子

雪さえも報われない(後編)

あなたは平凡なひと。
だけどだからこそわたしに愛された。
だからこそクラスのみんなに愛された。
その素朴さが愛されたのだ。
ただね、惹かれたからこそわかる。
わたしはあなたには似合わない。
あなたには好きな人がいる。
好きな人もあなたを愛する。きっと。
わたしそれがなんとも悔しかったの。
刃物で自虐は怖い。でも憎むの大好きな
典型的な嫌な女なの。自覚はしている。
だけどきっとこのままだと卒業したらあなたに忘れられてしまうまま。
わたしは灰にはなりたくない。
あなたに覚えててもらうにはどうしたらいい?
全員を殺す?あなたを殺す? 
いいえ、それじゃあ足りない。
だから、きっとこれが最良の


あなたを放課後屋上からフェンスを背中に見ていた。
一枚のラブレターを下駄箱に突っ込んで。
「雪だって汚染物質の塊なのよ?」
とんだ、アンチなラブレター。
でもいいの、これでもう伝えたから。
嫌な女なら嫌な女で
未練を殺そう。
人生を送ろう。
あなたは気づかないままわたしに背を向け歩く。
きっとみんな、とんだ迷惑者だと思うだろう。でもね、雪さえも世界は埋められないの。
ざまぁみてろ。

わたし、あなたになりたいの。
わたし、あなたになれないの。
だから
だからこそわたしは
あなたの記憶にずっと遺る亡霊となるの


ふわりと、上履きで空に着いた。曇り空に手が届きそうな気がした。
反転、そのまま真っ逆さまに落ちた、堕ちた。
わたしが重力に抱かれ世界から脱する寸前、
あなたが振り向いた気がした。


どうやらその日は雪が降ったらしい。

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