転生しました。本業は、メイドです。

岡パンダ

ー14ーデェトの見送り


「おはよう、シルヴィア。今日も可愛いね。」


「あ、ありがとう、ございます!」


「ふふ、緊張してる?リラックスしてよ。はい、手をどうぞ。」


「は、はい!ではメル、行って来ます!」


「はい、行ってらっしゃいませ、お嬢様。リカルド様、お嬢様を宜しくお願い致します。」


「あぁ。まかせて。夕刻には送り届けるよ。」




今日はお嬢様とリカルド様のデートの日。

私はお嬢様が乗った馬車をいつものように見えなくなるまで見送った。

お嬢様は寸前までいろいろ心配していたがきっと大丈夫だろう。

私が選んだお召し物もバッチリ似合っていたし。


お嬢様、お土産話楽しみにしてますね。



「シルヴィは出掛けたのかい?」


「クラウド様!はい、今出掛けられました。」


屋敷の中に入ると見送りに出遅れたのかクラウド様が立っていた。


「見送り間に合わなかったかぁ。はぁ、リカルド殿下との婚約は素直に嬉しいが、シルヴィとの時間が少なくなるのは少し寂しく感じるよ。」


おおう、さすがシスコン。


「クラウド様にはリリーシア様がいらっしゃるではありませんか。」


「それとこれとは別だよ。それにリリィもシルヴィの事大好きだからね、3人で生活したいくらいだよ。」


ブ、ブレない。。


「……。」


「ははは、大丈夫、リカルド殿下の邪魔なんかしないよ。本当だよ?」


……どこまで本気かわからないわ、この人。


「さて、僕はやる事があるから自室に戻るよ。あ、何かお菓子とかないかな?頭を使うと小腹が空くんだよね。」


クラウド様は最近学業の合間に旦那様の仕事も手伝っているらしい。だからか少しお疲れのように見える……目の下にクマも出来ているしあまり寝ていないのかもしれない。


「私が作ったもので宜しければクッキーがございます。」


私は、お嬢様達が馬車の中で食べる用に少しだけ焼こうと思ったのに、お嬢様の為にといつも以上に張り切った結果、気がついたら大量に焼けていた。それはもう、大量に。


「あ、いいね。食べたい。いただくよ。」



あぁ、クラウド様、笑顔が疲れてます……。疲れた時は甘いものと言いますもんね。私のクッキーでよろしければいくらでも差し上げます。全部、差し上げます!



「かしこまりました。紅茶と一緒にお持ち致しますね。」


「ありがとう、宜しくね。」


「はい、お任せください。」



クラウド様がお部屋にお戻りになった後、私はすぐに紅茶とありったけのクッキーの用意してクラウド様にお届けした。

クラウド様はお持ちした大量のクッキーに一瞬固まったが、笑顔で「これだけあれば夜までがんばれるよ」と受け取ってくれた。

良かった、頑張ってくださいクラウド様。

部屋の中台風の後みたいですけど、何も見なかったことに致しますね。




「あら?メル、あなたまだ出掛けていなかったの?」


クラウド様の部屋を出た直後、横から声をかけられた。


「あ、フリージアさん!はい、これから着替えます。」


声がした方を見るとフリージアさんが何やら分厚い本を数冊持ってこちらに歩いてくる所だった。


「メルったら、また仕事をしていたのね?今日はあなたお休みなのよ?只でさえあなたはお休みを頂こうとしないのに……。」



「お気遣いありがとうございます。お嬢様をお見送りした後、クラウド様にクッキーをお届けした所だったのです。そんな仕事と言うほどの事ではありません。」



お嬢様の側にいたい気持ち9割とお仕事1割の理由で、私は月に1~2度しかお休みを頂いていない。

本当はお休みなんていらないのだが、副業フェンリルの関係で月に1~2度はどうしても出掛けなければいけない為、しかたなく今日もお休みを頂いたのだ。


「そう?でもなるべくならお休みはしっかり満喫しなくてはダメよ?リアが休みの日なんか朝から町に出掛けて美味しい物めぐりをしているらしいわよ?メルも今日は美味しいものを食べてらっしゃい。戻りは夕食の時間に間に合えばいいから。わかった?」


さすがリアさん、だから体型が変わらないんですね。

ってフリージアさん、私夕食時間まで帰ってきてはだめなのですか!?


「え、そんな……。」


「わかったわね?」


フリージアさんの有無を言わさぬ圧力……。

「うぅ……はい。」


「よろしい、では早く着替えてらっしゃい。」


「はい、ありがとうございます。あ、フリージアさん、その本はどちらに?お手伝いしますよ?」


「これはクラウド様に頼まれてお持ちしたものだから大丈夫よ。」


クラウド様に頼まれた本……魔術関係の本ばかりのようだけど、旦那様のお仕事に関係あるのかな?


「もう、早く行きなさい!」


本を凝視していたら怒られてしまった……トホホ。


「すみません!では行ってまいります!」


「えぇ、気を付けてね。」


フリージアさんはそう言うとクラウド様の部屋にノックをし、室内に入っていった。


入った瞬間フリージアさんの悲鳴が聞こえて一瞬驚いたが、

フリージアさんがキレイ好きだったことを思い出し全てを悟った。

クラウド様……ご武運を。



さて、私は着替えて出掛けるとしますか。

余り長時間屋敷を空けたく無いが、フリージアさんに夕食まで帰ってくるなと言われてしまったし、

時間が余ったら久々に野外トレーニングをして帰るしかないかな。



私は奥様に出掛けることをお伝えした後、いつものメイド服から普通の地味めなワンピースに着替え、町に向けて出発した。







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