転生しました。本業は、メイドです。
ー5ーパーティーに行く前です。
「お嬢様、とってもお綺麗ですよ!!でわ、仕上げにこのブローチを………はい、完成です!」
「ありがとうメル」
メルに褒めらてすごく嬉しい。
この翡翠色の石の付いた銀細工のブローチはわたしのお気に入り。
羽をあしらったデザインも気に入っているけど何よりこの石がメルの瞳と同じ翡翠色な所が特に気に入っている。
メルはパーティーに一緒に行けないからその代わりみたいな感じかな。
本当は一緒に付いてきてほしいけど、
自分は傷物だからいけない、グランベール家の品位にかかわるからと言って絶対一緒には来てくれない。お茶会もそう。
わたしはそんな事気にしないのに。
確かに眼帯してるし、目付きも鋭いからたまに真顔になったとき他の使用人がビクッてなったりしてるけど、それ以外はニコニコしててむしろ可愛いと思うんだけどなぁ。
「お嬢様、どうかしました?」
「ううん、なんでもない!今日のパーティー頑張ってくるね!」
今日は国王主催のパーティーの日。皇太子殿下も出席するらしい。
皇太子殿下はわたしと同じ12歳で金髪の美少年で少し口数が少な目で愛想があまり無いが動植物を愛でる優しさを持っていて女性にはあまり興味がない………メルはこんな細かい情報どこから仕入れてきたのか。
「はい、お嬢様。皇太子殿下にご挨拶する時はしっかり目を見てご挨拶するのですよ。満面の笑みも忘れずに!気取らずにありのままのお嬢様を出して下さいね。失礼の無いようにしなければいけませんが、皇太子殿下だからといって媚びる必要はありませんからね。」
「うん!わかった!」
なんか今日のメルは特に気合いが入ってるんだよね。支度もいつもの倍くらいかかったし、ダンスの練習もお兄様とさせられたし。。
なんでだろう。。
「ふふふ、でも、一番は純粋にパーティーを楽しんでくださいね。」
あ、ここはいつものメルだ。
パーティーでは、美味しい食事が出ますし、美しい庭園を見ることができます。素敵な発見もあるかもしれませんよ。ね?楽しみではないですか?と、昔パーティーに行きたくないと駄々を捏ねた私にメルが言った。
結局わたしはメルにそう言われてしぶしぶパーティーに行き、まんまとメルの言った通り楽しんで帰ってきた。
今までは自分からパーティーを楽しもうとしていなかった。両親の影に隠れ、両親が取ってくれた料理を食べ、片時も離れず時が過ぎるのを待っていた。
しかしパーティーには、メルの言ったようにたくさんの美味しい料理があった。
美しい庭園があった。
同じくらいの年頃の子達がいて、楽しく話すことができた。
そしてあっという間に時間が過ぎて帰る時間になって驚いた。
帰ってからメルにお土産話を沢山したらすごく喜んでくれて嬉しかった。
それからはお茶会もパーティーも楽しめるようになって、メルへのお土産話のネタを見つけるのが習慣になった。
だってメルったら本当に楽しそうに聞いてくれるんだもん!
今日もいいネタがあるといいな~。
「うん!今日はうちのお庭の参考にお城のお庭たくさん見てくるね!」
「まぁ!いい案ですね!ご報告を楽しみにしています。」
今でも十分気に入っているけど、良くなるに越したことは無いし、新しい変化も取り入れたい。しっかり見てこなくては。。
「あとお嬢様、旦那様は先に向かわれるそうで、会場に入られる前に旦那様の執務室に来て頂きたいそうです。」
あ、そっか。いつもはお兄様にエスコートしてもらってたけど、お兄様最近婚約者出来たら今回はお父様にしてもらうんだった。
「うん、わかった。………ねぇ、メル。メルはわたしに婚約者作ってほしい?」
わたしには婚約者がいない。家柄の位の高い令嬢は幼い頃から決まっていることが普通だから、宰相令嬢の私は遅すぎるんだと思う。
でもお父様もお母様も婚約者は自分で決めていいって言ってくれてるし、お兄様だって好きな人と婚約したわけだからわたしだって好きな人と婚約したい。
でもメルはどう思ってるんだろう。
「私は、お嬢様が幸せならそれでいいので、お嬢様を幸せにして下さる方と婚約して頂きたいですね。そんな方が、早く見つかればいいなとは思います。」
何その顔。
メルはいつもそう。
メルはいつもわたしを一番に思ってくれている。
「メル………わたし、今回のパーティーで婚約者を探す!!」
「え。」
本当は婚約者との時間よりも剣術の稽古がしたいんだけど、、でも、、メルにそんなわたしを思ってくれてる顔されたらわたし。。
「もちろん、嫌いな人と婚約する気はないの!わたし今まで異性を好きになる努力をしてなかったから、好きな人を見つける努力をしてみようと思って!」
パーティーだって楽しむことができるようになったんだし、意識すれば好きな異性ができるかもしれない。
「お嬢様………。」
「メル、心配しないで!無理に見つけるつもりは無いから!ただ今日から探すだけ!きっと素敵な人を見つけてみせるわ!」
そう言ってメルに抱きつくと、メルもぎゅっと抱き締め返してくれた。ありがとうメル、心配しないでね。
「はい、信じております。それに…………。」
ーーコン、コン、ーーガチャ。
「シルヴィア、支度は整いましたか?あら……ふふ、シルヴィアは本当にメルの事が好きね。」
「お母様!申し訳ありません!今行きます!」
メルに抱きついているのを見られてしまった。恥ずかしい。。
「いいのですよ。支度が出来たのでしたらそろそろ行きましょう。メル、家の事お願いしますね。」
「はい、奥様。」
「ねぇメル、さっきなんて言いかけたの?」
廊下を歩きながら、コソコソとメルに耳打ちした。
「いえ、大した事ではありません。お嬢様が選ぶ方なら間違いありませんねと言おうとしたんですよ。」
「そっか!ならよーく選ばなくちゃ!」
またコソっと耳打ちするとメルはニコっと笑った。
メルの期待に応えなくっちゃね!
「はいはい、何内緒話しているのですか?早く行きますよ。」
いつのまにかもう玄関で、お母様が馬車に乗りながら言った。
「はい!お母様!」
わたしもメルの手を借りて急いで馬車に乗る。
「では、いってまいります。」
「いってらっしゃいませ、お嬢様。」
窓から大きく手を振りたい気持ちを必死で抑え、見送るメルの姿を見る。メルはいつも馬車が見えなくなるまで見送ってくれるからわたしもメルが見えなくなるまで見続ける。
メル、お土産話楽しみにしててね!!
よーし!いざ、パーティーへ!!
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