神速の生まれ変わり

ユー

初依頼

宿はギルドを出て大通りを行くとすぐにあった。
木造で二階建てだが、横に広い。これは部屋がいっぱいあるからだろう。外観は綺麗だ。手入れが行き届いてる感じがする。
 
外から眺めていても仕方ないので中にはいる。

「ん?お客さん?いらっしゃーい!お食事?お泊まり?」

出迎えてくれたのは髪は短くボブにしていて垂れた犬耳が特徴の9歳くらいの少女だった。

「ああ。泊まりだ。とりあえず1ヶ月泊まりたいんだが大丈夫か?」

リリィの救出にどれぐらい掛かるかわからないし、街をもっと見てみたいから1ヶ月にした。少し長いかな?まぁ、その時はその時だ。

「1ヶ月も!?おかーさーん!お客さんが1ヶ月泊まりたいってー!」

中々に元気な子だな。少し耳がキーンときたぞ。

「はいはい。お待たせ。犬犬けんけん亭へようこそ。1ヶ月泊まりたいんだって?部屋は空いてるから構わないよ。銀貨2枚だ。」

この宿の女将さんか出てきたのは少しふくよかな女の人だった。ちゃんと犬耳もある。

俺はエルビスから貰っていたお金を取り出し銀貨2枚を渡す。

「毎度あり。ささっと説明しちゃうね。食堂は基本6時から21時まで空いてるよ。宿泊してる客はタダだからいっぱい食べな。それと、これ部屋の鍵だ。2階の1番奥だよ。」

ふむ。飯代がタダにしては安い気がする。
まぁ、経営できてるし赤字にはなってないのかな。

「ありがとう。」

俺はお礼を言って言われた部屋へと向かった。

部屋に入ってから少ししてまたギルドへ向かう。お金を稼いでおきたいからだ。いつまでもエルビスがくれたお金を使うのは何か嫌だ。だから自分で稼ぐ。

……でもランクが低いから報酬がいい依頼がない。でも何かやらないと。
お、これなんて良さそうだ。

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           Eランク

     グレーウルフ15体の討伐

   東の森でグレーウルフが増えている。早急に討伐を依頼したい。

    報酬・・・大銅貨3枚

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まだマシな方だろ。
よし、これにするか。

「すまない。この依頼を受けたいのだが」

「はい。畏まりました。証明部位は右耳になります。15匹分持ってきてください。」

右耳か……。剥ぎ取り用のナイフとか買った方がいいのだろうか。
アゲハで剥ぎ取ったら機嫌を損ねそうだからな。依頼を受けたら道具屋にでも寄るか。他にも欲しいものあるしな。
またエルビスのお金を使うことになりそうだ。

あと、道具屋の場所もわからないし受付嬢に聞いてみるか。

「わかった。それと、道具屋ってどこにある?」

「はい。道具屋でしたらギルドの隣にギルドが経営している道具屋がございますよ。それではお気を付けて。」

ギルド自体が丁寧っていうか、親切っていうか。まぁ困らないしいいかな。

ということで隣の道具屋へ行く。
ギルドと同じ様な外観で少し小さくした感じだ。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

そうだな、俺が欲しいのは。

「ああ。剥ぎ取り用のナイフと袋、それとポーションはないか?」

剥ぎ取り用のナイフはもちろん、袋は討伐部位を入れるもので、ポーションは回復手段がこれしかないから手に入れておきたかった。

「はい。全部ありますよ。少々お待ちくださいね。」

と、店員は店の中を回って言ったものを取ってきた。

「ポーションは5個ぐらいでよろしいですか?」

ふむ。まぁ、5個もあれば充分だろう。

「ああ。大丈夫だ。いくらになる?」

「全部で大銅貨7枚になります。」

7枚だなそこそこするな……。今回の依頼の2回分以上あるのか。仕方が無いのか?

それからお金を支払って店を出た。
グレーウルフのいる東の森はギルドを出て右に行くと東門があり、そこから出ると1番近い。

北門に行く大通り程ではないが、広い道を通って東門へ行く。門番が居るがスルーして東門を出る。チェックは入る時だけなのだろう。

歩いて20分ぐらいすると森の入口に着いた
。おそらくここが東の森だろう。今日は奥までは行かないけど気をつけよう。

森に入って数分後にグレーウルフの群れがいた。数は6匹。いきなり群れなんてついてないな。
嘆いていても仕方ない。やるぞアゲハ!

『うむ!』

と、様子を見ていると、しびれを切らしたのか1匹が飛びかかってきた。だが遅く見える。俺の方が速いからだろう。

半身になって躱し、すれ違いざまにアゲハを抜刀して首を斬る……つもりだったが斬れ味が良すぎて真っ二つになってしまった。

だがグレーウルフはこんなもんか。油断してるとやられるが、逆に言えば油断しなければやられない相手だ。

次は3匹が正面から、2匹がそれぞれ側面から時間差で飛びかかってきた。

バックステップで避ける。そして着地したグレーウルフの間合いを一瞬で詰めて斬る。よし、あと4匹。

それを見ていた近くにいるグレーウルフ2匹が引っ掻いてくる。
上に跳んで2匹かたまっている所に

「黒一閃!」

これであと2匹。って、逃げるんじゃない!待て!

「身体強化!フィジカルアップ!」

身体強化と風魔法のフィジカルアップを使って素早さを上げる。地を蹴るとあっという間に追いついた。2匹を斬る。これで6匹か。

その後も順調にグレーウルフを狩っていった。

そしてちょうど15匹分の討伐部位を集め終わった後にそいつはやってきた。

色はグレーウルフと同じグレーだが一回り大きく、牙や爪も鋭い。何より存在感がある。

そのウルフを守るようにグレーウルフが10匹程いる。
……流石にこれはキツイと思うんだが。

いや、そんな事言ってる場合じゃない。……やるか。
グレーウルフ倒して幾分かレベルが上がってるんだ。やってやるさ。
その前に
――――――鑑定

────────────────

  キンググレーウルフ 

 魔物

レベル︰21

体力:1060

魔力:870

筋力:620

敏捷力:1300

防御力:620

スキル
 [統率]   [風魔法]  [嗅覚強化]

────────────────


「こいよ!身体強化!フィジカルアップ!」

アゲハ!使いたくないが、傀儡化使うぞ。

『かか!わかったのじゃ!存分に使うがいい。』

とりあえず飛びかかってきたウルフ2匹をバラバラにしないように殺す。ここで傀儡化する。

すると死んだはずのグレーウルフ2匹が立ち上がった。

「目の前にいるグレーウルフを殲滅しろ!」

この2匹で勝てるなんて思っちゃいない。唯の時間稼ぎだ。だが、それが出来れば充分。

2匹が時間を稼いでいる間に他のグレーウルフを殲滅する。
キンググレーウルフは見ているだけだ。
それならそれでいい。油断や慢心があった方が俺としても楽だからな。

数分してグレーウルフを倒し終わった。
途端に暴風が体に叩きつけられる。
耐えきれずに吹っ飛ばされ、近くの木にぶつかる。

「かはっ!」

いきなりの風魔法かよ!
今の魔法で傀儡化していたグレーウルフもやられてしまった。

その隙にキンググレーウルフが間合いを詰めてくる。咄嗟に横に避け、お返しに風魔法のウィンドスラッシュを撃つ。

だが俊敏性が高いから避けられてしまった。お互いに睨み合い、膠着状態だ。

そっちから来ないのならこっちから出る!
反応してプレスをしようとしてくるが、遅い!避けて切り刻む。

瀕死にはなったがまだ死んではいない。しぶとい奴だな。でもそんなボロボロじゃぁ何も出来ないだろ。これで終わりだ。

「魔力解放!黒一閃!」

首と胴体がおさらばしたので死んだだろう。
グレーウルフの討伐が何故かキンググレーウルフが出てくるとは……。
もう疲れた。早く帰ろう。


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