声を失った少年の物語
9.目覚め
窓から差し込んだ日が瞼に当たり目が覚めた。
私は死んだんじゃなかったのか?
今いる場所は見たことのない部屋のベッドの上、少なくとも私はこの場所に来たことは無い。
何がどうなっているんだ、状況が把握できない。
そう考えていると扉の向こう側からコツコツと歩いて来る音が聞こえた。
「あ、目覚めたようだね。具合はどうだい、痛むところはある?」
入ってきたのは長い緑の髪に青い目の女性だ、この人が助けてくれたのだろうか。
私は伝えようとバッグを探そうとするとその様子を見て、
「そうか、君は喋れないんだったね。ふむ、それじゃ不便だね覚えれるか分からないけど
あれを試してみるかな。」
あれとは何だろうか、試すとは?
「君は声を失う前魔法は使った事がある?」
私は頷いた。
「そう、だったら魔力の使い方は分かるね。今から君に教えるのは【念話】だよ。」
僕はそのイメージが掴めず首を傾げる。
「分からないって顔をしているね、それも無理はない。
念話っていうのは頭の中でイメージしたことを相手の脳内に直接伝える事が出来る事を言う。」
そんな便利なことがあったのかと思いびっくりした表情を浮かべる。
「その念話だけどね、習得するのは実に困難なんだ。習得難易度が非常に高く、過去に出来た人は数えるほどしかいない。」
それを聞き思わず暗い表情になった。
「そう悲観的に考えることは無いよ、何も行動を起こさないまま出来ないなんて思ってたら
希望も何もないんだからね。
あ、自己紹介が遅れたね。僕の名前はエリーンっていうんだ宜しくねクロック君。」
なんでこの人は私の名前を知っているんだろう。
「あ、今何で名前を知っているんだろうって思ったでしょ?」
何で分かった、と顔に出して分かるような表情を浮かべた。
「図星か、まぁ何で知っているかというと元職場で君の話を聞いたことがあったって事なんだけど、そのことについてはまた今度だね。
じゃ、早速念話のやり方を教えよう。」
待ってましたと、僕はベッドに座りエリーンさんの方を向く。
「念話のやり方は頭の中で自分が伝えたいこと、自分が伝えたい相手を思い浮かべてそれを具現化する。それが大まかなやり方なんだけど、具体例はこんな感じかな。
念話は相手の目をみるか相手を視界の中に入れておくことが絶対条件だよ。」
『どう?聞こえる?』
私はいきなり頭の中に響いてきた声にびっくりして体を震わせた。
「その感じだと成功したみたいだね、ただでさえ【無詠唱魔法】は難しいのに形のないものを考えるとなると一苦労だからね。」
無詠唱魔法?詠唱魔法なら聞いたことがあるが、そのようなものは聞いたことがない。
「あれ知らないような顔をしているね、大雑把にいうと名前の通り【詠唱魔法】は魔法名の前に詠唱式を唱える必要があるが【無詠唱魔法】は違う。
詠唱魔法の対として魔法名も言わないでいいし、詠唱式も唱えなくてもいい。
ただしデメリットとして演算量が多くなるから少し負担が大きくなることが難点だけどね。」
ふむ、と手を顎に当てながら頷く。
「じゃあ、さっき教えたイメージのもといざ実践してみて!」
無詠唱魔法やったことはないけど、これからの生活のため絶対に成功させて見せる!
そう意気込んで、集中し始める。
頭の中に魔力が渦巻いているのが感じられる、ちょっと頭が痛いけどこれは最初の反動みたいなものかな?
まず、伝えたい言葉をイメージする伝えたいことは≪聞こえますか≫だ。
そして次に伝えたい相手、これはエリーンさん。
エリーンさんの方を向き強く念じた。
『聞こえますか?』
「え、すご!こんな少しの時間で習得しちゃうなんて。クロック君魔法の素質あるんじゃない?」
再びさっきの工程を繰り返してみる。
『そんな事無いです、エリーンさんの教えたかが上手いからだと思います。』
「そんな、照れるなぁ。そうだ、君を弟子に取ろう。数十年ぶりの弟子だけど上手くいくだろう。」
今聞き捨てならない一言が聞こえた。
数十年ぶり?そう思いエリーンさんの姿を見てみる。
どうみても10代~20代前半ぐらいの姿をしている。
「これも言い忘れていたけど、僕は君が生まれるよりも昔から生きているよ。」
えっ、だったら何で姿が若々しいままなんだろう。普通ならば歳を取り老けて行くものだと思うのだが。
「あぁこの姿だね、疑問に思う事は無理もないよ。
折角だから私の過去についても話しておこうか。
これは昔闇龍討伐を依頼されて仲間と共に向かった時の事だ。」
エリーンさんは自分の姿の事について語り始めた。
「その時に、仲間が闇龍の攻撃を受けそうになってそれを僕がかばったんだ。
その際に呪いを受けてしまってね、老けもしない病気もしない体になってしまったんだ。」
それは良い事では?と思った時再びエリーンさんは口を開く。
「私も最初は不幸中の幸いだと思ったよ、苦しみを伴う呪いじゃ無かっただけましだと。
だけどそれは違った、この呪いは何よりも苦しみを伴う呪いだったんだ。」
そう表情を暗くしながら語る。
「老いない、病気もしない、自分自身に刃を向け傷をつけても瞬く間に再生する。
そのような時間がずっと続き仲間は次々と老いて死んでいき私を知る人間はいなくなった。」
私は心が苦しくなり胸をギュっと掴む。
「その者達の墓を作り、仲間の故郷であるとある村を守ろうと決意した。
それをするため私は王都の城へ仕えることにした、王族へ力を提供する代わりに村と墓を守って欲しいと。」
村と墓、その両方を一人で守るというのは困難だと判断したうえでの行動だったのだろう。
「それが昨日までの百年と数年、村と墓を守るための結界を貼る魔法を発明し私は城を去った、
まぁもう一つ理由があったんだけどそれは君の事だよ。」
私は目を見開いた、なんでそこで自分の名前が出てくるんだと。
「城内部で、兵士が話しているのを聞いてね。とある貴族の子供が話せなくなりその子を治療するために馬車で移動し目的の場所へ向かうまでの間に魔物を嗾け亡き者にするというものだった。」
僕は頭が真っ白になった、僕は喋れなくなったことがばれて【処分】されるところだったという事か?だけど、なんで城の方まで伝わっている。
そういえばお父様が根回しは大丈夫だと言っていた、それが外部に漏れたのか?
よくは分からないが仕組まれたことだという事が分かった。
「私はそれを聞き行動を始めた、城を去り聞いていた場所へ向かい君を助けする筈だったのだが、
一足遅く襲撃された後だった。
そのあとの話は、君も知っている通りだよ。」
・・・
僕は黙るしかできなかった。
ただ一つ思ったのは、家に帰りたいという事だ。
『エリーンさん私は、一度家へ戻りたいです。』
自分の本心を念話を通し伝える。
「それはやめたほうがいい。」
了承されるかと思いきや、その逆で却下された。
何でと私は思った、なんで戻るのはやめた方がいいのかと。
「処分された人間の末路を知っているかい?その人間たちは存在そのものを抹消される、その者が住んでいた家の身内の人間からもその抹消さえた人間の事を口にすることは禁じられている。
だから、今戻ったところでお互いに苦しい思いをするだけだと僕は思う。」
処分とされた人達の事については初耳だった、書物などではそこまで詳しい事は書かれていなかったからだ。
「まぁ、この話はやめにしてこれからの話を食事でもしながら話し合おうじゃないか、
弟子になるかならないかは別として、ここにはいたほうが安全だとはいえると思うよ。」
さぁ、といいながら手を引き廊下を進んで行く。
私は死んだんじゃなかったのか?
今いる場所は見たことのない部屋のベッドの上、少なくとも私はこの場所に来たことは無い。
何がどうなっているんだ、状況が把握できない。
そう考えていると扉の向こう側からコツコツと歩いて来る音が聞こえた。
「あ、目覚めたようだね。具合はどうだい、痛むところはある?」
入ってきたのは長い緑の髪に青い目の女性だ、この人が助けてくれたのだろうか。
私は伝えようとバッグを探そうとするとその様子を見て、
「そうか、君は喋れないんだったね。ふむ、それじゃ不便だね覚えれるか分からないけど
あれを試してみるかな。」
あれとは何だろうか、試すとは?
「君は声を失う前魔法は使った事がある?」
私は頷いた。
「そう、だったら魔力の使い方は分かるね。今から君に教えるのは【念話】だよ。」
僕はそのイメージが掴めず首を傾げる。
「分からないって顔をしているね、それも無理はない。
念話っていうのは頭の中でイメージしたことを相手の脳内に直接伝える事が出来る事を言う。」
そんな便利なことがあったのかと思いびっくりした表情を浮かべる。
「その念話だけどね、習得するのは実に困難なんだ。習得難易度が非常に高く、過去に出来た人は数えるほどしかいない。」
それを聞き思わず暗い表情になった。
「そう悲観的に考えることは無いよ、何も行動を起こさないまま出来ないなんて思ってたら
希望も何もないんだからね。
あ、自己紹介が遅れたね。僕の名前はエリーンっていうんだ宜しくねクロック君。」
なんでこの人は私の名前を知っているんだろう。
「あ、今何で名前を知っているんだろうって思ったでしょ?」
何で分かった、と顔に出して分かるような表情を浮かべた。
「図星か、まぁ何で知っているかというと元職場で君の話を聞いたことがあったって事なんだけど、そのことについてはまた今度だね。
じゃ、早速念話のやり方を教えよう。」
待ってましたと、僕はベッドに座りエリーンさんの方を向く。
「念話のやり方は頭の中で自分が伝えたいこと、自分が伝えたい相手を思い浮かべてそれを具現化する。それが大まかなやり方なんだけど、具体例はこんな感じかな。
念話は相手の目をみるか相手を視界の中に入れておくことが絶対条件だよ。」
『どう?聞こえる?』
私はいきなり頭の中に響いてきた声にびっくりして体を震わせた。
「その感じだと成功したみたいだね、ただでさえ【無詠唱魔法】は難しいのに形のないものを考えるとなると一苦労だからね。」
無詠唱魔法?詠唱魔法なら聞いたことがあるが、そのようなものは聞いたことがない。
「あれ知らないような顔をしているね、大雑把にいうと名前の通り【詠唱魔法】は魔法名の前に詠唱式を唱える必要があるが【無詠唱魔法】は違う。
詠唱魔法の対として魔法名も言わないでいいし、詠唱式も唱えなくてもいい。
ただしデメリットとして演算量が多くなるから少し負担が大きくなることが難点だけどね。」
ふむ、と手を顎に当てながら頷く。
「じゃあ、さっき教えたイメージのもといざ実践してみて!」
無詠唱魔法やったことはないけど、これからの生活のため絶対に成功させて見せる!
そう意気込んで、集中し始める。
頭の中に魔力が渦巻いているのが感じられる、ちょっと頭が痛いけどこれは最初の反動みたいなものかな?
まず、伝えたい言葉をイメージする伝えたいことは≪聞こえますか≫だ。
そして次に伝えたい相手、これはエリーンさん。
エリーンさんの方を向き強く念じた。
『聞こえますか?』
「え、すご!こんな少しの時間で習得しちゃうなんて。クロック君魔法の素質あるんじゃない?」
再びさっきの工程を繰り返してみる。
『そんな事無いです、エリーンさんの教えたかが上手いからだと思います。』
「そんな、照れるなぁ。そうだ、君を弟子に取ろう。数十年ぶりの弟子だけど上手くいくだろう。」
今聞き捨てならない一言が聞こえた。
数十年ぶり?そう思いエリーンさんの姿を見てみる。
どうみても10代~20代前半ぐらいの姿をしている。
「これも言い忘れていたけど、僕は君が生まれるよりも昔から生きているよ。」
えっ、だったら何で姿が若々しいままなんだろう。普通ならば歳を取り老けて行くものだと思うのだが。
「あぁこの姿だね、疑問に思う事は無理もないよ。
折角だから私の過去についても話しておこうか。
これは昔闇龍討伐を依頼されて仲間と共に向かった時の事だ。」
エリーンさんは自分の姿の事について語り始めた。
「その時に、仲間が闇龍の攻撃を受けそうになってそれを僕がかばったんだ。
その際に呪いを受けてしまってね、老けもしない病気もしない体になってしまったんだ。」
それは良い事では?と思った時再びエリーンさんは口を開く。
「私も最初は不幸中の幸いだと思ったよ、苦しみを伴う呪いじゃ無かっただけましだと。
だけどそれは違った、この呪いは何よりも苦しみを伴う呪いだったんだ。」
そう表情を暗くしながら語る。
「老いない、病気もしない、自分自身に刃を向け傷をつけても瞬く間に再生する。
そのような時間がずっと続き仲間は次々と老いて死んでいき私を知る人間はいなくなった。」
私は心が苦しくなり胸をギュっと掴む。
「その者達の墓を作り、仲間の故郷であるとある村を守ろうと決意した。
それをするため私は王都の城へ仕えることにした、王族へ力を提供する代わりに村と墓を守って欲しいと。」
村と墓、その両方を一人で守るというのは困難だと判断したうえでの行動だったのだろう。
「それが昨日までの百年と数年、村と墓を守るための結界を貼る魔法を発明し私は城を去った、
まぁもう一つ理由があったんだけどそれは君の事だよ。」
私は目を見開いた、なんでそこで自分の名前が出てくるんだと。
「城内部で、兵士が話しているのを聞いてね。とある貴族の子供が話せなくなりその子を治療するために馬車で移動し目的の場所へ向かうまでの間に魔物を嗾け亡き者にするというものだった。」
僕は頭が真っ白になった、僕は喋れなくなったことがばれて【処分】されるところだったという事か?だけど、なんで城の方まで伝わっている。
そういえばお父様が根回しは大丈夫だと言っていた、それが外部に漏れたのか?
よくは分からないが仕組まれたことだという事が分かった。
「私はそれを聞き行動を始めた、城を去り聞いていた場所へ向かい君を助けする筈だったのだが、
一足遅く襲撃された後だった。
そのあとの話は、君も知っている通りだよ。」
・・・
僕は黙るしかできなかった。
ただ一つ思ったのは、家に帰りたいという事だ。
『エリーンさん私は、一度家へ戻りたいです。』
自分の本心を念話を通し伝える。
「それはやめたほうがいい。」
了承されるかと思いきや、その逆で却下された。
何でと私は思った、なんで戻るのはやめた方がいいのかと。
「処分された人間の末路を知っているかい?その人間たちは存在そのものを抹消される、その者が住んでいた家の身内の人間からもその抹消さえた人間の事を口にすることは禁じられている。
だから、今戻ったところでお互いに苦しい思いをするだけだと僕は思う。」
処分とされた人達の事については初耳だった、書物などではそこまで詳しい事は書かれていなかったからだ。
「まぁ、この話はやめにしてこれからの話を食事でもしながら話し合おうじゃないか、
弟子になるかならないかは別として、ここにはいたほうが安全だとはいえると思うよ。」
さぁ、といいながら手を引き廊下を進んで行く。
「冒険」の人気作品
書籍化作品
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