勇者な俺は魔族な件
第十二話 初めまして『魔族戦』
「ど、どうして、ここに……いや、危険だ! 今すぐ戻れ!」
「え? 嫌に決まってんじゃないですか。何の為に壁をよじ登ってここに来たと思ってるんですか?」
何か焦っているガリウムを一蹴すると、今現在の戦況を確認する。
前方百メートルくらいに、銀鎧の兵士となんか二足歩行をした豚が戦っている。
おそらく、あれが『魔物』なのだろう。
いや、多分あの角を生やした狼も、猫耳を生やしたトカゲも魔物なのだろう。
その証拠に、あのおもしろ動物たちの身体の一部に『黒』があるのだから。
そしてどこかに傷やらを追って戦っている兵士たち。
数は十数人ほどだが……どいつもこいつも、疲弊している様子だ。
そんなのがうじゃうじゃいすぎて、数が把握できねえが……一つだけわかること。
どの魔物よりも大きい体をしていて、どの魔物よりも黒く禍々しい生き物。
誰もが妄想したことのある、伝説の生き物。
真っ黒い巨大な竜が、疲弊している兵士たちの要因だということだ。
「ガリウムさん。俺がアレを倒せるって言ったら、信じます?」
「た、倒す……黒竜をか? 無理に決まっている! あれはSSS級の魔獣で、SS級冒険者十人分の強さを誇るんだぞ!」
やっぱり信用されてないか。となると、下手したら「やめろ、死にたいのか」とか言われて邪魔されるかもしれない。
ふと、奥にいる魔物の群れが視界を捉える。
……ふむ。
「じゃあ、あそこにいる魔物の群れを倒したら、黒竜に挑んでいいですか?」
「……なんだと?」
と、今まで黙っていたレオナードがピクリと眉を動かす。
「ほら、黒竜の奥にいるうじゃうじゃした連中ですよ。あそこにあなたたちの部下はいませんよね?」
「……おそらくは」
「よし、じゃあ決まりですねっ」
手をパンッと打つ。目にものを見せてやる。
しかし、あそこまで行くのはめんどいな……いや、別に対して遠くはないんだが、こいつらにちゃんと見えるかどうか不安だし。
あ、そうだ。魔法使えばいいのか。
まだ自分の魔法の限界を知らないから、出来るだけ思いっきりやってみよう。
位置を調整して、範囲を調整して、威力を調整して……よし。
大きく息を吸うと、力を込めて魔法を放つ。
「おい、一体何を……」
「大爆発っ!!!」
次の瞬間。
突如として後方から巨大で真っ赤な球体が出現した。
その球体はもの凄い爆発音を立てながら、そこにいた魔物たちを一掃していく。
いや、球体というか俺が起こした爆発なんだけどな。
どうやら、無事に成功したようだ。
「は……?」
ガリウムはわけがわからないという表情でポカンと見つめている。
そして、火の球体はどんどん小さくなっていき、最後には草一つ残っていない光景になった。
俺はニッと笑い、大剣を生み出す。
ああ、そうだ。
食べ物をいただく前に、大事な挨拶があったな。
「じゃあ、黒 竜をいただきます」
* * *
「ガアアアアアアッ!!」
俺に向かって突進してくる角狼のタイミングに合わせて、大剣を動かす。
それだけで、狼は真っ二つに斬れてしまった。
本当は、人外の生物と戦えるのかどうか不安だった。
前の世界では完璧超人な俺でも、流石にゲームに出てくるようなモンスターと戦ったことなんて一度もないからだ。
だから、最初は怖くて戦えないかもしれないと思っていた。
だが……。
「はっ」
自然と笑みがこぼれる。
更に俺に向かってくる魔物二匹を一薙ぎ。
「ははっ」
俺の邪魔をする魔物を両断。
「はははっ」
視界に入る魔物を、全て切り伏せる──!
「ははははっ! はははははっ!!」
斬る度に、俺の気分は高揚していく。
なんだ、魔族なんて大したことないじゃねえか!
これなら行ける!
「どけどけどけぇぇぇぇえええ!!!」
俺はある限りの全速力で黒竜を目指す。
その間に、近くにいる魔物は斬る、斬る、斬る!
黒竜まで近づいてみると、その巨大さがだんだんと明らかになっていく。
まあ、ジャンプすれば頭まで届かない距離ではないだろう。
と、黒竜に刃を向ける兵士を一人発見。
そいつは女で……って、血出てんじゃねえか。
体もフラフラしていてるし、もう限界なんじゃないのか?
その女兵士は未だ毅然としていて、黒竜と戦う気力は十分にあるようだ。
だが……その黒竜は俺の獲物だから、ちょっとどいて欲しい。
「というわけで、交代しやがれ!」
「へっ? ひぇあっ!?」
高く跳び上がり、女兵士の肩に降り立つ。
そして、その両肩につけた足を蹴り上げて、再度思いっきり跳ぶ。
俺の踏み台とされた女兵士は反動で後ろへと吹っ飛んでいってしまった。
よし、これで獲物を独り占めできるな。
そして、俺が跳んだ先には。
「オオオオオオオオオオオォォォオオオオオォォォォォォッッッ!!!」
「来いよ、黒竜!」
牙を剥く黒竜に向かって大剣を横薙ぎする。
ズンッという鈍い音を鳴らし、黒龍の身体にぶち当たるが……斬れる様子はない。
「なるほど、確かに他の魔物とは違うみてえだな……いや、お前は魔獣に分類されるんだっけか!」
ガパッと大きく口を開ける黒竜。俺を咬もうと頭を前に突き出すが、ひょいと躱して黒竜の頭の上に乗っかる。
「おいおい、速いだけじゃ俺は倒せねえぜ?」
攻撃動作がわかりやすいんだよ!
武器を変更。大剣を仕舞い、槍を出現させる。
そして黒竜の頭めがけて思いっきり槍を突き刺す。
だが、ガギッと鈍い音が鳴るだけで、槍が貫くことはなかった。
「オオオオオォォォォォ!」
「チッ、無駄に硬いんだな!」
ある程度硬いと思っていたが……槍でも貫くことができないのか。
一旦、黒竜から離れて地面に降り立つ。
と。
「なっ……!?」
パキィッという音が鳴り響いたと思うと、地面をつかせた足が凍りついていた。
そういえば魔獣は魔法も使えるんだったな!
ええい、ややこしい!
「オオォォォ……!」
途端に黒竜の腹が膨れ上がり、大きく息を吸い込む黒竜。
攻撃が来る──!
俺は直感で盾を生み出して防御の構えを取る。
「オオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッ!!」
次の瞬間。
俺の視界は真っ赤に染まった。
「え? 嫌に決まってんじゃないですか。何の為に壁をよじ登ってここに来たと思ってるんですか?」
何か焦っているガリウムを一蹴すると、今現在の戦況を確認する。
前方百メートルくらいに、銀鎧の兵士となんか二足歩行をした豚が戦っている。
おそらく、あれが『魔物』なのだろう。
いや、多分あの角を生やした狼も、猫耳を生やしたトカゲも魔物なのだろう。
その証拠に、あのおもしろ動物たちの身体の一部に『黒』があるのだから。
そしてどこかに傷やらを追って戦っている兵士たち。
数は十数人ほどだが……どいつもこいつも、疲弊している様子だ。
そんなのがうじゃうじゃいすぎて、数が把握できねえが……一つだけわかること。
どの魔物よりも大きい体をしていて、どの魔物よりも黒く禍々しい生き物。
誰もが妄想したことのある、伝説の生き物。
真っ黒い巨大な竜が、疲弊している兵士たちの要因だということだ。
「ガリウムさん。俺がアレを倒せるって言ったら、信じます?」
「た、倒す……黒竜をか? 無理に決まっている! あれはSSS級の魔獣で、SS級冒険者十人分の強さを誇るんだぞ!」
やっぱり信用されてないか。となると、下手したら「やめろ、死にたいのか」とか言われて邪魔されるかもしれない。
ふと、奥にいる魔物の群れが視界を捉える。
……ふむ。
「じゃあ、あそこにいる魔物の群れを倒したら、黒竜に挑んでいいですか?」
「……なんだと?」
と、今まで黙っていたレオナードがピクリと眉を動かす。
「ほら、黒竜の奥にいるうじゃうじゃした連中ですよ。あそこにあなたたちの部下はいませんよね?」
「……おそらくは」
「よし、じゃあ決まりですねっ」
手をパンッと打つ。目にものを見せてやる。
しかし、あそこまで行くのはめんどいな……いや、別に対して遠くはないんだが、こいつらにちゃんと見えるかどうか不安だし。
あ、そうだ。魔法使えばいいのか。
まだ自分の魔法の限界を知らないから、出来るだけ思いっきりやってみよう。
位置を調整して、範囲を調整して、威力を調整して……よし。
大きく息を吸うと、力を込めて魔法を放つ。
「おい、一体何を……」
「大爆発っ!!!」
次の瞬間。
突如として後方から巨大で真っ赤な球体が出現した。
その球体はもの凄い爆発音を立てながら、そこにいた魔物たちを一掃していく。
いや、球体というか俺が起こした爆発なんだけどな。
どうやら、無事に成功したようだ。
「は……?」
ガリウムはわけがわからないという表情でポカンと見つめている。
そして、火の球体はどんどん小さくなっていき、最後には草一つ残っていない光景になった。
俺はニッと笑い、大剣を生み出す。
ああ、そうだ。
食べ物をいただく前に、大事な挨拶があったな。
「じゃあ、黒 竜をいただきます」
* * *
「ガアアアアアアッ!!」
俺に向かって突進してくる角狼のタイミングに合わせて、大剣を動かす。
それだけで、狼は真っ二つに斬れてしまった。
本当は、人外の生物と戦えるのかどうか不安だった。
前の世界では完璧超人な俺でも、流石にゲームに出てくるようなモンスターと戦ったことなんて一度もないからだ。
だから、最初は怖くて戦えないかもしれないと思っていた。
だが……。
「はっ」
自然と笑みがこぼれる。
更に俺に向かってくる魔物二匹を一薙ぎ。
「ははっ」
俺の邪魔をする魔物を両断。
「はははっ」
視界に入る魔物を、全て切り伏せる──!
「ははははっ! はははははっ!!」
斬る度に、俺の気分は高揚していく。
なんだ、魔族なんて大したことないじゃねえか!
これなら行ける!
「どけどけどけぇぇぇぇえええ!!!」
俺はある限りの全速力で黒竜を目指す。
その間に、近くにいる魔物は斬る、斬る、斬る!
黒竜まで近づいてみると、その巨大さがだんだんと明らかになっていく。
まあ、ジャンプすれば頭まで届かない距離ではないだろう。
と、黒竜に刃を向ける兵士を一人発見。
そいつは女で……って、血出てんじゃねえか。
体もフラフラしていてるし、もう限界なんじゃないのか?
その女兵士は未だ毅然としていて、黒竜と戦う気力は十分にあるようだ。
だが……その黒竜は俺の獲物だから、ちょっとどいて欲しい。
「というわけで、交代しやがれ!」
「へっ? ひぇあっ!?」
高く跳び上がり、女兵士の肩に降り立つ。
そして、その両肩につけた足を蹴り上げて、再度思いっきり跳ぶ。
俺の踏み台とされた女兵士は反動で後ろへと吹っ飛んでいってしまった。
よし、これで獲物を独り占めできるな。
そして、俺が跳んだ先には。
「オオオオオオオオオオオォォォオオオオオォォォォォォッッッ!!!」
「来いよ、黒竜!」
牙を剥く黒竜に向かって大剣を横薙ぎする。
ズンッという鈍い音を鳴らし、黒龍の身体にぶち当たるが……斬れる様子はない。
「なるほど、確かに他の魔物とは違うみてえだな……いや、お前は魔獣に分類されるんだっけか!」
ガパッと大きく口を開ける黒竜。俺を咬もうと頭を前に突き出すが、ひょいと躱して黒竜の頭の上に乗っかる。
「おいおい、速いだけじゃ俺は倒せねえぜ?」
攻撃動作がわかりやすいんだよ!
武器を変更。大剣を仕舞い、槍を出現させる。
そして黒竜の頭めがけて思いっきり槍を突き刺す。
だが、ガギッと鈍い音が鳴るだけで、槍が貫くことはなかった。
「オオオオオォォォォォ!」
「チッ、無駄に硬いんだな!」
ある程度硬いと思っていたが……槍でも貫くことができないのか。
一旦、黒竜から離れて地面に降り立つ。
と。
「なっ……!?」
パキィッという音が鳴り響いたと思うと、地面をつかせた足が凍りついていた。
そういえば魔獣は魔法も使えるんだったな!
ええい、ややこしい!
「オオォォォ……!」
途端に黒竜の腹が膨れ上がり、大きく息を吸い込む黒竜。
攻撃が来る──!
俺は直感で盾を生み出して防御の構えを取る。
「オオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッ!!」
次の瞬間。
俺の視界は真っ赤に染まった。
コメント