勇者な俺は魔族な件
第二話 異世界の『情報と文字』
さて、この世界で飛ばされてきて、色々とわかってきたことがある。
まず、この世界に存在している生き物についてだ。
大まかに言うと、人族と魔族と動物の三つ。
人族は基本的に『剣術』と『魔法』の両方を使うことが出来る。
だが二十人に一人程度、魔法の源となる『魔力』を一切持っていない人族がいるそうだ。
「その代わりに身体能力が長けていて、おまけに獣のような耳や尻尾を持っていることから『獣人族』と呼ばれています」
と補足してくれるシルエ。なるほど、確かゲームでも同じ設定だったな。
次に魔族の説明。
「様々な姿の魔族がいますが、完全な人の形をしたのはまだ発見されていません」
お前の目の前にいるけどな……と心の中でツッコミを入れつつも、黙って聞くことにする。
言語を使ってコミュニケーションを取ることは不能。
だが、頭が悪いということではない。
巧妙な手口を使って、人間に襲いかかってくることが多いからだ。
そう、魔族は人族を襲う。
目的ははっきりとしていないが、多分食物連鎖的なアレであろう。
と思ったが、それは違うようだ。
「彼らは大気中に浮いている『魔素』という魔法の元を摂取することで、飲まず食わずに生きることが出来ます」
「ふうん、じゃあ敵対意識で襲っているのかな……」
「さあ……そこまで詳しくは知られていませんから」
そして魔族にも分類がある。
まず、ごく一般的であり最も多く見かけられる『魔物』。
動物に形は似ているが、全身が真っ黒だったり、普通ではありえないような黒いものがついていたりするそうだ。
基本は群れで行動し、知性は魔族の中で低い方だ。
次に『魔獣』と呼ばれる存在。
「魔物と差して変わらないんじゃないか?」
「いえ、規模が違いますアズマ様」
「規模?」
「はい、普通の魔物とは明らかに力の差が違う魔物が『魔獣』なのです」
「ふうん」
つまり魔物の上位互換であり、知性も魔物よりやや高めであるのか一部の魔法を使う事が出来るらしい。
そして更に上回る存在が『魔王』。
魔族を統括する、所謂リーダー的なやつだ。
「魔王は複数の存在が確認されていますが、どれも不完全な人の形が特徴です」
手足の数が異なったり、大きさが違ったり。
獣がそのまま二足歩行になったような魔王も存在するらしいのだ。
そして、魔王だけは『言語』を話すことが出来る。
「つまり、魔族の中で唯一としてコミュニケーションを取ることが可能としているのですが……」
「まあ、話せるだけで解決出来るような相手なら、今のように敵対してないよな」
とにかく奴らも敵だということだ。
そして、最後に動物という生き物。
これの区別は極めて簡単。食べられるかどうかである。
「じゃあ、魔族の肉っていうのは食べられないのか?」
この問いに、シルエは首を横に振った。
「いえ、魔族の肉も黒い部分以外は食べることができます。最も、種類によっては全身真っ黒の魔族もいるので、食べることができないのもありますが……」
また手懐けることも可能で、乗り物として利用することも多いようだ。
そして、この地についてだが……こっちの方はあまり分かっていない。
ここが、モストーボルという名の地であること。
ロウ・ブロッサム国という名の国であること。
それだけだった。
「地図はないのか?」
俺の問いに、シルエは「ありますよ」と頷く。
右手の人差し指を本棚の一角に向けて、シルエは軽く指を振る。
すると、一つの本が本棚から離れ、宙を滑りながらシルエの手に収まった。
「今のは……」
「はい、魔法です」
俺もゲーム内でも使ったことがある。
そう、確か浮遊魔法だ。
「っていうか、魔法には詠唱がいるんじゃないのか?」
もっとも、今俺が口にしたことはゲーム内の知識だ。
確かにゲームでも練習すれば無詠唱でも使う事が出来るのだが……こっちの世界では、無詠唱は当たり前なのだろうか。
が、そうでもないようでシルエはやや嬉しげに頬を赤くさせながら、答えてくれる。
「実は私、魔力だけは誰よりも高いらしくて……上級者でも難しいと言われる無詠唱も、すぐに取得する事が出来たのです」
なるほど、こっちでも無詠唱は結構難しい部類に入るのか。
「それでですね。こちらなんですが」
「どれどれ」
シルエが開いたページを、俺はひょいと覗き込む。
「……何語?」
しかし、そこには見たことのないような地形と文字列がズラリと並んでいた。
「えっと、人族語なんですけど……わかりませんか?」
「いや、全然」
考えてみれば、当たり前のことだった。
ここは異世界なのだから、言葉が違うのは当たり前じゃないか。
でも、会話は普通に出来るよな……?
もしかしてゲーム内で会話していたのは、既に日本語ではなくて異世界の言葉だったのかも知れない。
なんにせよ、現段階では謎が多いので結論づけるのは難しい。
「ま、まあ、アズマ様はまだこっちの世界に来たばかりなので……わからないのは仕方ないかと」
「ちょっと待て」
仕方ないと片付けようとするシルエに、俺は待ったをかける。
わからないのは仕方ない、だと?
「とりあえず、単語辞典か何かないか? 後、それが何て読むのか、どういう意味なのか教えてくれ」
「え、えっと……」
「一時間だ」
戸惑うシルエに構わず、俺は人差し指を一本立てる。
一時間で、全部覚えてやる。
まず、この世界に存在している生き物についてだ。
大まかに言うと、人族と魔族と動物の三つ。
人族は基本的に『剣術』と『魔法』の両方を使うことが出来る。
だが二十人に一人程度、魔法の源となる『魔力』を一切持っていない人族がいるそうだ。
「その代わりに身体能力が長けていて、おまけに獣のような耳や尻尾を持っていることから『獣人族』と呼ばれています」
と補足してくれるシルエ。なるほど、確かゲームでも同じ設定だったな。
次に魔族の説明。
「様々な姿の魔族がいますが、完全な人の形をしたのはまだ発見されていません」
お前の目の前にいるけどな……と心の中でツッコミを入れつつも、黙って聞くことにする。
言語を使ってコミュニケーションを取ることは不能。
だが、頭が悪いということではない。
巧妙な手口を使って、人間に襲いかかってくることが多いからだ。
そう、魔族は人族を襲う。
目的ははっきりとしていないが、多分食物連鎖的なアレであろう。
と思ったが、それは違うようだ。
「彼らは大気中に浮いている『魔素』という魔法の元を摂取することで、飲まず食わずに生きることが出来ます」
「ふうん、じゃあ敵対意識で襲っているのかな……」
「さあ……そこまで詳しくは知られていませんから」
そして魔族にも分類がある。
まず、ごく一般的であり最も多く見かけられる『魔物』。
動物に形は似ているが、全身が真っ黒だったり、普通ではありえないような黒いものがついていたりするそうだ。
基本は群れで行動し、知性は魔族の中で低い方だ。
次に『魔獣』と呼ばれる存在。
「魔物と差して変わらないんじゃないか?」
「いえ、規模が違いますアズマ様」
「規模?」
「はい、普通の魔物とは明らかに力の差が違う魔物が『魔獣』なのです」
「ふうん」
つまり魔物の上位互換であり、知性も魔物よりやや高めであるのか一部の魔法を使う事が出来るらしい。
そして更に上回る存在が『魔王』。
魔族を統括する、所謂リーダー的なやつだ。
「魔王は複数の存在が確認されていますが、どれも不完全な人の形が特徴です」
手足の数が異なったり、大きさが違ったり。
獣がそのまま二足歩行になったような魔王も存在するらしいのだ。
そして、魔王だけは『言語』を話すことが出来る。
「つまり、魔族の中で唯一としてコミュニケーションを取ることが可能としているのですが……」
「まあ、話せるだけで解決出来るような相手なら、今のように敵対してないよな」
とにかく奴らも敵だということだ。
そして、最後に動物という生き物。
これの区別は極めて簡単。食べられるかどうかである。
「じゃあ、魔族の肉っていうのは食べられないのか?」
この問いに、シルエは首を横に振った。
「いえ、魔族の肉も黒い部分以外は食べることができます。最も、種類によっては全身真っ黒の魔族もいるので、食べることができないのもありますが……」
また手懐けることも可能で、乗り物として利用することも多いようだ。
そして、この地についてだが……こっちの方はあまり分かっていない。
ここが、モストーボルという名の地であること。
ロウ・ブロッサム国という名の国であること。
それだけだった。
「地図はないのか?」
俺の問いに、シルエは「ありますよ」と頷く。
右手の人差し指を本棚の一角に向けて、シルエは軽く指を振る。
すると、一つの本が本棚から離れ、宙を滑りながらシルエの手に収まった。
「今のは……」
「はい、魔法です」
俺もゲーム内でも使ったことがある。
そう、確か浮遊魔法だ。
「っていうか、魔法には詠唱がいるんじゃないのか?」
もっとも、今俺が口にしたことはゲーム内の知識だ。
確かにゲームでも練習すれば無詠唱でも使う事が出来るのだが……こっちの世界では、無詠唱は当たり前なのだろうか。
が、そうでもないようでシルエはやや嬉しげに頬を赤くさせながら、答えてくれる。
「実は私、魔力だけは誰よりも高いらしくて……上級者でも難しいと言われる無詠唱も、すぐに取得する事が出来たのです」
なるほど、こっちでも無詠唱は結構難しい部類に入るのか。
「それでですね。こちらなんですが」
「どれどれ」
シルエが開いたページを、俺はひょいと覗き込む。
「……何語?」
しかし、そこには見たことのないような地形と文字列がズラリと並んでいた。
「えっと、人族語なんですけど……わかりませんか?」
「いや、全然」
考えてみれば、当たり前のことだった。
ここは異世界なのだから、言葉が違うのは当たり前じゃないか。
でも、会話は普通に出来るよな……?
もしかしてゲーム内で会話していたのは、既に日本語ではなくて異世界の言葉だったのかも知れない。
なんにせよ、現段階では謎が多いので結論づけるのは難しい。
「ま、まあ、アズマ様はまだこっちの世界に来たばかりなので……わからないのは仕方ないかと」
「ちょっと待て」
仕方ないと片付けようとするシルエに、俺は待ったをかける。
わからないのは仕方ない、だと?
「とりあえず、単語辞典か何かないか? 後、それが何て読むのか、どういう意味なのか教えてくれ」
「え、えっと……」
「一時間だ」
戸惑うシルエに構わず、俺は人差し指を一本立てる。
一時間で、全部覚えてやる。
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