適性ゼロの魔法勇者
第21話 そういう問題じゃないんです
「で、どうなのだ? スズとやらの特訓は」
「どうなのだ、と言われるとな……」
スズの実技特訓を始めて数日後。
如何にも興味深々といった感じにユアンが食いついてくる。
「一言で言うと……ようやくスライム亜種を倒せるようになった感じだ」
「なるほど、前途多難というわけだな」
そう、一言で表せるほどスズの実力は明白だった。
元々力がないのか、短剣を武器で使っているのは特に問題ない。
問題は、その扱いが慣れていないといった感じなのだ。
更に彼女自身の体力も少なく、すぐに疲れてしまうという欠点もある。
リリヤも結構体力は低い方だと思っていたのだが、スズはリリヤ以上にない。
「まずは基礎訓練から……と言いたいところだが、あまり時間もないからな。基礎訓練も教えつつ応用も教えていかなきゃならない」
「ふむ、しかしスズには体力がないのだろう?」
「ああ、だからそこまでハードにしないようにしつつ、試験に間に合うようにハードな特訓内容を頭の中で組んでいる」
「ハルよ、今の発言が矛盾していることに気が付いてないか?」
え、どこが?
「なるほど、確かにそれは前途多難だな」
現状がわかったのか、同情するかのようにユアンがため息をつく。
しかし何故だろう、その中に哀れみも含まれているような気がするのは。
「だから今は体力をつける訓練が中心になっているんだ」
「そうか……まあ力を借りたい時はいつでも言ってくれ。出来る限り、僕も力になろう」
「ああ、ありがとな」
手伝ってくれるのはありがたい。
場合によっては、力を借りる時もあるだろうしな。
* * *
そして今日の放課後もスズの特訓である。
「スズ、全部避けて」
リリヤはそう言うと、こぶし大の水球『ヴァッサーバル』を三つ出現させる。
そして水球三つはまるで意思を持ったかのようにスズに襲いかかっていく。
「わ、わわっ!」
スズは慌ててその場にかがみ込み、一球を躱す。
ほっとした表情をするスズだが、そんな余裕はない。
「次、来るぞ!」
「う、うわっ!?」
俺の指摘により、二球目がスズに迫っていることに気が付く。
そのまま前転をして二球目を避けたスズだが、転がった先の頭上から三球目の水球が落ちてきた。
「ぃいっ!?」
「おおっ」
即座に気がついたスズが身体をひねって避けた瞬間を見て、思わず関心の声を上げてしまう。
今のは結構いい動きだったな。
全て避け切れたことに今度こそ安堵の息をつくスズ。
が。
「スズ、後ろだ!」
「へ?」
バシャリ。
そんな音を立てて水球がスズに直撃した。
「……スズ、私は全部避けてって言った。ヴァッサーバルを三回避けてだなんて、誰も言ってない」
「私、騙されました!?」
「いや、お前がアホなだけだ」
あまりのアホさ加減に思わず呆れ返ってしまい、ついツッコミを入れてしまう。
騙されたというか、ただの勘違いだよ。
「……それじゃ、もう一回」
「うう、スパルタです……リリヤちゃんはスパルタ教師です……」
ここ数日でリリヤとスズの距離は少し縮まっているようだ。
リリヤが俺以外の同い年とここまで仲良くする姿は初めて見るので、少し嬉しかったりする。
まるで我が子が育つのを温かい目で見守る親のような気分だ。
「この前から言ってるけど、スズには真剣さが足りない」
「ま、真面目にやってますよ」
「やる気は伝わってくるんだけど……」
ちなみに、なぜスズの特訓にヴァッサーバルを使っているのかというと、威力を低めてスズが怪我しないようにしている為なのだ。
身体を負傷してしまうと、特訓どころじゃなくなるからな。
しかし、どうしたものか。
確かにスズのやる気はひしひしと伝わってくるのだが、真剣さが足りないとなると特訓の効果が薄れてしまう。
何か、真剣になるきっかけが作れればいいのだが……。
「……あ、そうだ。スズ、ジャケット脱いで」
どうすればいいかと頭を悩ませていたところ、ふと何か思いついたようにリリヤが声をあげる。
「え、えっと、はい」
スズは言われた通りにジャケットを脱いで、白のインナーだけの姿になった。
その姿にリリヤはうんうんと満足げに頷く。
「それじゃ、もう一回」
「あ、あのー……なんでジャケットを脱がせたんですか?」
リリヤの意図がわからないらしいスズがおずおずと手を挙げて質問する。
というか、俺もよくわからないんだが……。
「いい? 必死にヴァッサーバルを避けないと」
「避けないと?」
首を捻るスズに、リリヤの眼がギラリと光った……ような気がした。
「ブラ、透けるよ?」
「えっ……? ……~~~~~ッ!!?」
リリヤの言葉にポカンとしたスズだったが、何か気がついたかのようにバッと俺の方を振り向く。
ああ、なるほど……そういうことか。
「いや、効果ないと思うぞリリヤ。別に俺はブラを見たくらいでどうなるってわけでもないし」
「そ、そういう問題じゃないんですっ!! 見られるだなんて、絶対にヤですっ!!」
とリリヤに意見したつもりなのだが、顔を真っ赤にさせたスズに反論されてしまった。
「スズも真剣になったところだし……やろっか」
「う、ううう! 鬼教官ーっ!」
そんなこんなでセクハラまがいを含まれた特訓が始まった。
「どうなのだ、と言われるとな……」
スズの実技特訓を始めて数日後。
如何にも興味深々といった感じにユアンが食いついてくる。
「一言で言うと……ようやくスライム亜種を倒せるようになった感じだ」
「なるほど、前途多難というわけだな」
そう、一言で表せるほどスズの実力は明白だった。
元々力がないのか、短剣を武器で使っているのは特に問題ない。
問題は、その扱いが慣れていないといった感じなのだ。
更に彼女自身の体力も少なく、すぐに疲れてしまうという欠点もある。
リリヤも結構体力は低い方だと思っていたのだが、スズはリリヤ以上にない。
「まずは基礎訓練から……と言いたいところだが、あまり時間もないからな。基礎訓練も教えつつ応用も教えていかなきゃならない」
「ふむ、しかしスズには体力がないのだろう?」
「ああ、だからそこまでハードにしないようにしつつ、試験に間に合うようにハードな特訓内容を頭の中で組んでいる」
「ハルよ、今の発言が矛盾していることに気が付いてないか?」
え、どこが?
「なるほど、確かにそれは前途多難だな」
現状がわかったのか、同情するかのようにユアンがため息をつく。
しかし何故だろう、その中に哀れみも含まれているような気がするのは。
「だから今は体力をつける訓練が中心になっているんだ」
「そうか……まあ力を借りたい時はいつでも言ってくれ。出来る限り、僕も力になろう」
「ああ、ありがとな」
手伝ってくれるのはありがたい。
場合によっては、力を借りる時もあるだろうしな。
* * *
そして今日の放課後もスズの特訓である。
「スズ、全部避けて」
リリヤはそう言うと、こぶし大の水球『ヴァッサーバル』を三つ出現させる。
そして水球三つはまるで意思を持ったかのようにスズに襲いかかっていく。
「わ、わわっ!」
スズは慌ててその場にかがみ込み、一球を躱す。
ほっとした表情をするスズだが、そんな余裕はない。
「次、来るぞ!」
「う、うわっ!?」
俺の指摘により、二球目がスズに迫っていることに気が付く。
そのまま前転をして二球目を避けたスズだが、転がった先の頭上から三球目の水球が落ちてきた。
「ぃいっ!?」
「おおっ」
即座に気がついたスズが身体をひねって避けた瞬間を見て、思わず関心の声を上げてしまう。
今のは結構いい動きだったな。
全て避け切れたことに今度こそ安堵の息をつくスズ。
が。
「スズ、後ろだ!」
「へ?」
バシャリ。
そんな音を立てて水球がスズに直撃した。
「……スズ、私は全部避けてって言った。ヴァッサーバルを三回避けてだなんて、誰も言ってない」
「私、騙されました!?」
「いや、お前がアホなだけだ」
あまりのアホさ加減に思わず呆れ返ってしまい、ついツッコミを入れてしまう。
騙されたというか、ただの勘違いだよ。
「……それじゃ、もう一回」
「うう、スパルタです……リリヤちゃんはスパルタ教師です……」
ここ数日でリリヤとスズの距離は少し縮まっているようだ。
リリヤが俺以外の同い年とここまで仲良くする姿は初めて見るので、少し嬉しかったりする。
まるで我が子が育つのを温かい目で見守る親のような気分だ。
「この前から言ってるけど、スズには真剣さが足りない」
「ま、真面目にやってますよ」
「やる気は伝わってくるんだけど……」
ちなみに、なぜスズの特訓にヴァッサーバルを使っているのかというと、威力を低めてスズが怪我しないようにしている為なのだ。
身体を負傷してしまうと、特訓どころじゃなくなるからな。
しかし、どうしたものか。
確かにスズのやる気はひしひしと伝わってくるのだが、真剣さが足りないとなると特訓の効果が薄れてしまう。
何か、真剣になるきっかけが作れればいいのだが……。
「……あ、そうだ。スズ、ジャケット脱いで」
どうすればいいかと頭を悩ませていたところ、ふと何か思いついたようにリリヤが声をあげる。
「え、えっと、はい」
スズは言われた通りにジャケットを脱いで、白のインナーだけの姿になった。
その姿にリリヤはうんうんと満足げに頷く。
「それじゃ、もう一回」
「あ、あのー……なんでジャケットを脱がせたんですか?」
リリヤの意図がわからないらしいスズがおずおずと手を挙げて質問する。
というか、俺もよくわからないんだが……。
「いい? 必死にヴァッサーバルを避けないと」
「避けないと?」
首を捻るスズに、リリヤの眼がギラリと光った……ような気がした。
「ブラ、透けるよ?」
「えっ……? ……~~~~~ッ!!?」
リリヤの言葉にポカンとしたスズだったが、何か気がついたかのようにバッと俺の方を振り向く。
ああ、なるほど……そういうことか。
「いや、効果ないと思うぞリリヤ。別に俺はブラを見たくらいでどうなるってわけでもないし」
「そ、そういう問題じゃないんですっ!! 見られるだなんて、絶対にヤですっ!!」
とリリヤに意見したつもりなのだが、顔を真っ赤にさせたスズに反論されてしまった。
「スズも真剣になったところだし……やろっか」
「う、ううう! 鬼教官ーっ!」
そんなこんなでセクハラまがいを含まれた特訓が始まった。
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