適性ゼロの魔法勇者
第20話 た・ぶ・ら・か・さ・な・い・で
「自己紹介が遅れました。私、剣技学科一年のスズと言います」
ところ変わって『第5訓練室』。
この前ユアンに「申請すれば、学校の訓練室を利用することができる」と教えられていたことを思い出し、この際いい機会なので使ってみようという思いつきでちょうど空いていた『第5訓練室』まで移動することになった。
俺とリリヤ、それにスズという剣技学科の紫髪の少女。
ユアンたちは用事があるそうなので、現在この三名が訓練室を利用することになった。
というかさっきからリリヤが怒っているような気がするのだが……気のせいだろうか?
うん、多分気のせいだな。
「ええと、俺は……」
「魔法学科一年のハルさんに、リリヤさんですよね? 噂は聞いてます」
そういえば自分も名乗っていなかったことに気がついて自己紹介しようとしたが、先にスズという少女に言い当てられる。
「え、知ってるのか?」
「そりゃあ、もう。剣技学科の間でも有名ですよ、『魔法学科の天才と適性ゼロ』の噂は」
『適性ゼロ』という言葉にピクリと眉を動かすリリヤ。
そうか、別の学科でも有名になっているのか……。
もしかしたら使獣学科でも有名になってしまっているのかもしれない。
「私、実技が苦手で……二年の先輩方を負かせたという二人に教えていただければ、と」
「その前に」
少し自信なさげに話すスズをリリヤが遮る。
「ハルのこと、『適性ゼロ』って噂されているのは知ってる?」
「はい、知ってますが……」
「なら、なんでハルにも教えてもらおうと考えたの? 普通、私だけに教えてもらおうとしない?」
あ、そうか。
俺のことを『適性ゼロ』という蔑称を知っている、ということは俺の魔法は著しくないということも知っているはずだ。
だったら、スズも前のリリヤだけに教えを乞いに来るはず。
「別に特訓だったら、私一人でも教えられるし」
……。
…………うん?
この前、リリヤはリリヤだけに教えてもらおうとすることを嫌がっていたはずだ。
それが今の状況だと、むしろリリヤだけで教えようと促している。
これはどういう風の吹き回しなのだろうか?
男子じゃ嫌だったとかか?
「……実は、二人に助けられたという剣技学科の先輩に今回のことを勧められたのです」
俺たちが助けた剣技学科の先輩……。
ふと脳裏にユアンが庇っていた先輩が思い浮かぶ。
「先輩は間近でハルさんの実力を見たと言いました。『あの人は本当に強い』と」
なるほど、それで俺にも教えて欲しいと言ってきたのか。
「それに……噂通り、ハルさんはリリヤさんに戦闘訓練を教えてもらったから勝てたとしても、ハルさんに実力があるのは事実ですよね?」
「…………そう」
今まで睨むようにスズを見ていたリリヤの目が優しくなる。
「ハルを偏見の目で見てないんだったら……私とハルで、スズに実技を教えてもいい」
「あ……ありがとうございます!」
あ、そういうこと?
要は俺がきちんと評価されていることを気にしていたのか、リリヤは。
勝手に俺も教えることになっているが……まあいいか。
努力しようとする子は嫌いじゃないし。
というか、『実力があるのは事実』か……。
第三者にそう評価されるのはあまりないから……少し照れるな。
と、自分でもわかるくらいニヤケ顔をしていると、リリヤが二の腕を摘んでくる。
何すんだ、痛いじゃねえか。
「それとスズ。私たちが恋人だってことも当然知ってるよね?」
「は、はい。むしろ、今はそっちの方が有名ですが……それがどうしたんですか?」
何故か「当然」という言葉を強調するリリヤに、スズは戸惑いの表情を浮かべる。
「知ってるなら、話が早い。条件として、ハルとふたりっきりになって誑かさないで」
「いや、実技の特訓に誑かすも何もないと思いますが……?」
「た・ぶ・ら・か・さ・な・い・で。わかったなら、返事」
「わ、わかりました」
リリヤが今つけた条件はなんの為だろう……?
別にそういった目的でスズは俺たちに近づいてきたわけじゃないのに。
もしかして『恋人関係』が嘘だということをバレないようにする為か?
仮にそうだとしても、そこまで慎重にならなくてもいいと思うのだが。
「そ、それでは、本日からよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。剣技学科ということなら接近戦だろ? 任せておけ」
「私も接近戦は苦手じゃない。魔法面としても、色々と教えられる」
こうして今日から俺とリリヤによるスズの実技特訓が始まった。
のだが。
「ちょ、タ、タンマです。きゅ、休憩を」
「甘ったれたこと言わない。この程度で疲弊しないで」
「ほ、ほんとに、待ってって……ぎゃあああああああ!」
……どうやら、前途多難のようだ。
ところ変わって『第5訓練室』。
この前ユアンに「申請すれば、学校の訓練室を利用することができる」と教えられていたことを思い出し、この際いい機会なので使ってみようという思いつきでちょうど空いていた『第5訓練室』まで移動することになった。
俺とリリヤ、それにスズという剣技学科の紫髪の少女。
ユアンたちは用事があるそうなので、現在この三名が訓練室を利用することになった。
というかさっきからリリヤが怒っているような気がするのだが……気のせいだろうか?
うん、多分気のせいだな。
「ええと、俺は……」
「魔法学科一年のハルさんに、リリヤさんですよね? 噂は聞いてます」
そういえば自分も名乗っていなかったことに気がついて自己紹介しようとしたが、先にスズという少女に言い当てられる。
「え、知ってるのか?」
「そりゃあ、もう。剣技学科の間でも有名ですよ、『魔法学科の天才と適性ゼロ』の噂は」
『適性ゼロ』という言葉にピクリと眉を動かすリリヤ。
そうか、別の学科でも有名になっているのか……。
もしかしたら使獣学科でも有名になってしまっているのかもしれない。
「私、実技が苦手で……二年の先輩方を負かせたという二人に教えていただければ、と」
「その前に」
少し自信なさげに話すスズをリリヤが遮る。
「ハルのこと、『適性ゼロ』って噂されているのは知ってる?」
「はい、知ってますが……」
「なら、なんでハルにも教えてもらおうと考えたの? 普通、私だけに教えてもらおうとしない?」
あ、そうか。
俺のことを『適性ゼロ』という蔑称を知っている、ということは俺の魔法は著しくないということも知っているはずだ。
だったら、スズも前のリリヤだけに教えを乞いに来るはず。
「別に特訓だったら、私一人でも教えられるし」
……。
…………うん?
この前、リリヤはリリヤだけに教えてもらおうとすることを嫌がっていたはずだ。
それが今の状況だと、むしろリリヤだけで教えようと促している。
これはどういう風の吹き回しなのだろうか?
男子じゃ嫌だったとかか?
「……実は、二人に助けられたという剣技学科の先輩に今回のことを勧められたのです」
俺たちが助けた剣技学科の先輩……。
ふと脳裏にユアンが庇っていた先輩が思い浮かぶ。
「先輩は間近でハルさんの実力を見たと言いました。『あの人は本当に強い』と」
なるほど、それで俺にも教えて欲しいと言ってきたのか。
「それに……噂通り、ハルさんはリリヤさんに戦闘訓練を教えてもらったから勝てたとしても、ハルさんに実力があるのは事実ですよね?」
「…………そう」
今まで睨むようにスズを見ていたリリヤの目が優しくなる。
「ハルを偏見の目で見てないんだったら……私とハルで、スズに実技を教えてもいい」
「あ……ありがとうございます!」
あ、そういうこと?
要は俺がきちんと評価されていることを気にしていたのか、リリヤは。
勝手に俺も教えることになっているが……まあいいか。
努力しようとする子は嫌いじゃないし。
というか、『実力があるのは事実』か……。
第三者にそう評価されるのはあまりないから……少し照れるな。
と、自分でもわかるくらいニヤケ顔をしていると、リリヤが二の腕を摘んでくる。
何すんだ、痛いじゃねえか。
「それとスズ。私たちが恋人だってことも当然知ってるよね?」
「は、はい。むしろ、今はそっちの方が有名ですが……それがどうしたんですか?」
何故か「当然」という言葉を強調するリリヤに、スズは戸惑いの表情を浮かべる。
「知ってるなら、話が早い。条件として、ハルとふたりっきりになって誑かさないで」
「いや、実技の特訓に誑かすも何もないと思いますが……?」
「た・ぶ・ら・か・さ・な・い・で。わかったなら、返事」
「わ、わかりました」
リリヤが今つけた条件はなんの為だろう……?
別にそういった目的でスズは俺たちに近づいてきたわけじゃないのに。
もしかして『恋人関係』が嘘だということをバレないようにする為か?
仮にそうだとしても、そこまで慎重にならなくてもいいと思うのだが。
「そ、それでは、本日からよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。剣技学科ということなら接近戦だろ? 任せておけ」
「私も接近戦は苦手じゃない。魔法面としても、色々と教えられる」
こうして今日から俺とリリヤによるスズの実技特訓が始まった。
のだが。
「ちょ、タ、タンマです。きゅ、休憩を」
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……どうやら、前途多難のようだ。
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