適性ゼロの魔法勇者
第18話 適性ゼロだろうが(第一章完)
「ハル、あの時『俺とこいつは無関係だ』──そう言おうとしたでしょ」
「むっ……」
学生寮裏庭。
リリヤは野原に座り込みながらジロリと俺を睨んできた。
「確かに、ここでハルと私が無関係だと言えば解決するかもしれない」
そう、それこそが俺がやろうとした策である。
つまり、俺がいつもリリヤの傍にいるのが原因だとするならば、俺がリリヤから離れるつもりだった。
これで俺もリリヤと同じくらい評価されているのなら、「この二人は友人関係だ」とかなんとかで解決していたと思う。
だが、残念ながら俺とリリヤの扱いは天と地の差だ。
どんなに弁明しようと、リリヤが俺に戦い方を教えているという風に見る輩も少なくはないはず。
「だからハルがしばらく私と離れれば、私が本当にそういうことを募集してないことを証明でき、この騒ぎもやがて収まる」
「……まあ、そういうことだ」
一体、こいつの頭の中はどうなっているのだろうか。
あの一瞬で俺の考えていることがよくわかったな……。
「ハルは……それでいいの?」
ふと、リリヤが少し寂しそうな目で俺を見ていることに気が付く。
リリヤが言う『それ』というのは、俺とリリヤが疎遠になることだろう。
「……そんなわけないだろ。俺だって嫌に決まってる」
でも。
「でも、リリヤを苦しませるのはもっと嫌だからな」
「…………」
リリヤは俺の顔をジッと見つめ、やがて大きくため息をついた。
「はあ……ハルは本当に馬鹿」
「いやいや、馬鹿なのはお前だろ。なんで恋人宣言なんかしたんだよ」
「……あれが一番の最善策」
要は「なんでこいつだけ特別なんだ」と明確な理由がなかった為に、何回も続いてきたのだ。
「だったら、私とハルが特別な関係だと明確にしてしまえば、解決するってこと」
「それは……そうだけどさ」
「……何か不満?」
リリヤが頬を膨らませてくるので、いやいやと手を横に振る。
「そうじゃねえんだが……リリヤは、それでよかったのか?」
俺がここで言う『それ』は……恋人宣言のこと。
別にリリヤに対してそういう感情は一切ないとは言い切れないが、かと言ってそんな簡単に決めて良いわけではないだろう。
すると、リリヤはやや睨むように水色の瞳でじっと見てくる。
「な、なんだよ……?」
少し怒っているかのような雰囲気を醸し出すリリヤに、少しばかりたじろいでしまう。
が、十数秒も経たないうちに彼女はわざとらしいため息をついた。
「何でもない。ハルの馬鹿」
「…………?」
リリヤが何を言いたいのか、よくわからない。
まあリリヤとは二年の付き合いだ。
そのうち、あっさりとわかるだろう。
……そう考えてわかったことなんて、ほとんどないけど。
「さて、今日もやるか」
「……ねえ、ハル」
「ん? どうした?」
いつものごとく特訓をしようとローブを脱いで動きやすい格好になると、リリヤがシャツの裾を摘んで来た。
「ハルは本当に勇者になれるって、思ってるの?」
「え? 当たり前だろ?」
その為に特訓をしているんだから。
「たとえ……『適性ゼロ』なんて呼ばれても?」
「…………」
ふとリリヤが心配そうな目で見ていることに気が付く。
ああ、そうか。
見ての通り、俺の魔法適性はゼロに等しい。
まあ魔法を打てる分、ゼロではないと思うが。
しかし、いつか大きな壁にぶつかってしまうのではないか、とリリヤは危惧しているのだ。
──今までの二年間特訓をしてきているが、未だになんの進歩もしていないのだから。
「ああ、なれるさ」
だからこそ、力強く肯定する。
「適性ゼロだろうがなってやるよ──『魔法勇者』にな」
不安そうなリリヤを励ますかのように、笑った。
リリヤは少し目を見開き、やがて可笑しそうに笑みを浮かべる。
「魔法勇者って。ハル、ネーミングセンスなさすぎ」
「……うるせえ、要は気持ちの問題だ」
そこに関してはあまり突っ込んでほしくなかったので、羞恥心を隠すようにそっぽを向く。
「ハルがそう言うなら……私も協力する」
「え?」
だが次に続いた予想外の言葉に、思わずリリヤの方に向き直った。
だってリリヤが「協力する」って言ったんだぜ?
あのアンチ勇者のリリヤが。
「勇者なんて嫌いだけど……ハルがハルのままでいてくれるのなら、私も協力する」
そう言って微笑むリリヤ。
その表情はいつもの無表情とは違う、暖かい笑みが伝わってきた。
……協力してくれるにはならないとな、絶対に。
固く誓った気持ちを絶対に離さないかのように、ぐっと拳を固める。
「よし、リリヤ。今日も特訓するぞ!」
「……うん!」
「むっ……」
学生寮裏庭。
リリヤは野原に座り込みながらジロリと俺を睨んできた。
「確かに、ここでハルと私が無関係だと言えば解決するかもしれない」
そう、それこそが俺がやろうとした策である。
つまり、俺がいつもリリヤの傍にいるのが原因だとするならば、俺がリリヤから離れるつもりだった。
これで俺もリリヤと同じくらい評価されているのなら、「この二人は友人関係だ」とかなんとかで解決していたと思う。
だが、残念ながら俺とリリヤの扱いは天と地の差だ。
どんなに弁明しようと、リリヤが俺に戦い方を教えているという風に見る輩も少なくはないはず。
「だからハルがしばらく私と離れれば、私が本当にそういうことを募集してないことを証明でき、この騒ぎもやがて収まる」
「……まあ、そういうことだ」
一体、こいつの頭の中はどうなっているのだろうか。
あの一瞬で俺の考えていることがよくわかったな……。
「ハルは……それでいいの?」
ふと、リリヤが少し寂しそうな目で俺を見ていることに気が付く。
リリヤが言う『それ』というのは、俺とリリヤが疎遠になることだろう。
「……そんなわけないだろ。俺だって嫌に決まってる」
でも。
「でも、リリヤを苦しませるのはもっと嫌だからな」
「…………」
リリヤは俺の顔をジッと見つめ、やがて大きくため息をついた。
「はあ……ハルは本当に馬鹿」
「いやいや、馬鹿なのはお前だろ。なんで恋人宣言なんかしたんだよ」
「……あれが一番の最善策」
要は「なんでこいつだけ特別なんだ」と明確な理由がなかった為に、何回も続いてきたのだ。
「だったら、私とハルが特別な関係だと明確にしてしまえば、解決するってこと」
「それは……そうだけどさ」
「……何か不満?」
リリヤが頬を膨らませてくるので、いやいやと手を横に振る。
「そうじゃねえんだが……リリヤは、それでよかったのか?」
俺がここで言う『それ』は……恋人宣言のこと。
別にリリヤに対してそういう感情は一切ないとは言い切れないが、かと言ってそんな簡単に決めて良いわけではないだろう。
すると、リリヤはやや睨むように水色の瞳でじっと見てくる。
「な、なんだよ……?」
少し怒っているかのような雰囲気を醸し出すリリヤに、少しばかりたじろいでしまう。
が、十数秒も経たないうちに彼女はわざとらしいため息をついた。
「何でもない。ハルの馬鹿」
「…………?」
リリヤが何を言いたいのか、よくわからない。
まあリリヤとは二年の付き合いだ。
そのうち、あっさりとわかるだろう。
……そう考えてわかったことなんて、ほとんどないけど。
「さて、今日もやるか」
「……ねえ、ハル」
「ん? どうした?」
いつものごとく特訓をしようとローブを脱いで動きやすい格好になると、リリヤがシャツの裾を摘んで来た。
「ハルは本当に勇者になれるって、思ってるの?」
「え? 当たり前だろ?」
その為に特訓をしているんだから。
「たとえ……『適性ゼロ』なんて呼ばれても?」
「…………」
ふとリリヤが心配そうな目で見ていることに気が付く。
ああ、そうか。
見ての通り、俺の魔法適性はゼロに等しい。
まあ魔法を打てる分、ゼロではないと思うが。
しかし、いつか大きな壁にぶつかってしまうのではないか、とリリヤは危惧しているのだ。
──今までの二年間特訓をしてきているが、未だになんの進歩もしていないのだから。
「ああ、なれるさ」
だからこそ、力強く肯定する。
「適性ゼロだろうがなってやるよ──『魔法勇者』にな」
不安そうなリリヤを励ますかのように、笑った。
リリヤは少し目を見開き、やがて可笑しそうに笑みを浮かべる。
「魔法勇者って。ハル、ネーミングセンスなさすぎ」
「……うるせえ、要は気持ちの問題だ」
そこに関してはあまり突っ込んでほしくなかったので、羞恥心を隠すようにそっぽを向く。
「ハルがそう言うなら……私も協力する」
「え?」
だが次に続いた予想外の言葉に、思わずリリヤの方に向き直った。
だってリリヤが「協力する」って言ったんだぜ?
あのアンチ勇者のリリヤが。
「勇者なんて嫌いだけど……ハルがハルのままでいてくれるのなら、私も協力する」
そう言って微笑むリリヤ。
その表情はいつもの無表情とは違う、暖かい笑みが伝わってきた。
……協力してくれるにはならないとな、絶対に。
固く誓った気持ちを絶対に離さないかのように、ぐっと拳を固める。
「よし、リリヤ。今日も特訓するぞ!」
「……うん!」
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