適性ゼロの魔法勇者
第9話 綺麗な魔力だ
「では、これから魔法学の授業を始めます」
翌日。
早速朝から授業が開始されるようだ。
どうやら自由席らしいので、俺とガドラは教室の隅っこに座っている。
大きな欠伸を一つして木の机に頬杖をつきながら、教壇の上に立つ黒ローブを来た女性教師を見る。
緑の後ろ髪をアップに纏めていて、射抜くかのような鋭い金色の瞳をしている女性。
そして頭にある黒い角と後ろに見える翼から、魔人族であることがわかった。
「私は魔法学科の教師、ナミアです。今後も皆さんと会う機会があると思いますので、どうぞよろしくお願いします」
如何にも仕事ができる人という感じで、女性──ナミア先生は聞き取りやすい声で自己紹介をする。
なるほど、魔法学科の教師であれば一年生だけではなく、それ以降も関わりがあるかもしれないのか……覚えておこう。
「まず、魔法学というのはただ単に魔法が使えるようになる授業ではございません。いかに魔力の練度が高いか、操作力があるか、つまり中身を学んでいくことになります」
ナミア先生は懐から杖を一本取り出す。
そして無造作に杖を振ると、杖の先からこぶし大の火球が出現した。
席についている学生たちから「おおっ」と、感嘆な声が漏れる。
「皆さんも知っての通り、これは火の下級魔法『フランバル』。誰しもが扱えるこの魔法ですが、これにも魔力の練度や操作性は重要となってきます」
通常の『フランバル』は、火球を前へと打ち出す魔法だ。
だがナミア先生が生み出した火球は、空中で静止したままの状態。
それは一向に消えることも形が崩れることもなく、先生が相当魔法の扱いに長けていることがわかる。
それに……。
「綺麗な魔力だ……」
「あ?」
心の中で思っていたことを思わず呟いてしまい、隣に座っているガドラが「何か言ったか?」という風に反応した。
「いや、なんでもない。ただ俺は魔法が苦手だから、先生みたいに『無読詠唱』を扱えるのは凄いなって思っただけだ」
「……そうか」
ガドラにそう言って誤魔化していると、ナミア先生は杖を下ろして火球を消していた。
「そして、『無読詠唱』とは魔術師の有名な『五芒星』の一つです。まあここにいる皆さんに限らず、普通なら知っているものですが」
『五芒星』。
それは、かつての大英雄『勇者』が持っていたと言われる五つの最強の能力。
『無限剣技』。
『無読詠唱』。
『獣神和解』。
『心身一体』。
『能力複製』。
これらは生まれながらの才能、もしくは己の鍛錬によって誰でも習得できる能力であるのだ。
そして、この能力を得ること自体は極めて難しくないと言えよう。
例えば、下級魔法は無読詠唱で発動することができるが、中級魔法は無読詠唱で発動することができない人がいるとしよう。
「その人は『無読詠唱』を習得しているか」と聞かれると、答えは「イエス」だ。
例え、下級だろうと無読詠唱が使えれば、その人は習得していると言えるのである。
では、何が難しいのかというと、どこくらいの魔法を無読詠唱で扱えるか、だ。
魔法には『下級』、『中級』、『上級』、『最上級』の四つの階級に分かれており、更に系統が一つの『単一魔法』と、二つ以上の『複合魔法』がある。
単一魔法での最上級魔法、更に難易度の高い二系統の複合魔法の最上級魔法を無読詠唱で発動できる人がいるとしよう。
そうすると、その人は先ほどの人と同じ『無読詠唱』の使い手でありながらも、実力が全く違うのである。
ちなみに、勇者は全ての魔法を無読詠唱で扱えるというとんでもない化け物らしく、未だその境地まで行った人はいないらしい。
「では、皆さんにも実際にやってみるとしましょう。一人ずつここに来て、下級魔法『フランバル』を全読詠唱、短読詠唱で行ってみてください」
授業初日からいきなり実習とは。
流石は世界で一番有名な学校、どうやら理論よりも実践を重視しているらしい。
さて、全読詠唱と短読詠唱も軽く説明しておこう。
無読詠唱はそのまんまの意味で、一切詠唱を発言しないで魔法を発動させること。
全読詠唱もそのまんま、詠唱を全て発言して魔法を発動させること。
そして短読詠唱。
これはよく間違われがちな認識がある。
詠唱のいずれかを省略して魔法を発動させること。
これは、どこか一節以上を省略すれば、全て短読詠唱になるのだ。
例えば、『フランバル』。
詠唱名は、『求めるは火なり。我が手に集い一つの球となりて、一点に撃ち放てフランバル』である。
これは『求めるは』『火なり』『我が』『手に』『集い』『一つの』『球と』『なりて』『一点に』『撃ち放て』『フランバル』と分けることが出来るのだ。
なので、これのどこかを省略、また一節分以上省略すれば、それは『短読詠唱』扱いとなる。
『フランバル』と名前だけ言って発動するのは、無読詠唱ではなく短読詠唱の部類だ。
ちなみに豆知識。
三節分以下の短読詠唱は『超短読詠唱』と呼ばれたりしている。
翌日。
早速朝から授業が開始されるようだ。
どうやら自由席らしいので、俺とガドラは教室の隅っこに座っている。
大きな欠伸を一つして木の机に頬杖をつきながら、教壇の上に立つ黒ローブを来た女性教師を見る。
緑の後ろ髪をアップに纏めていて、射抜くかのような鋭い金色の瞳をしている女性。
そして頭にある黒い角と後ろに見える翼から、魔人族であることがわかった。
「私は魔法学科の教師、ナミアです。今後も皆さんと会う機会があると思いますので、どうぞよろしくお願いします」
如何にも仕事ができる人という感じで、女性──ナミア先生は聞き取りやすい声で自己紹介をする。
なるほど、魔法学科の教師であれば一年生だけではなく、それ以降も関わりがあるかもしれないのか……覚えておこう。
「まず、魔法学というのはただ単に魔法が使えるようになる授業ではございません。いかに魔力の練度が高いか、操作力があるか、つまり中身を学んでいくことになります」
ナミア先生は懐から杖を一本取り出す。
そして無造作に杖を振ると、杖の先からこぶし大の火球が出現した。
席についている学生たちから「おおっ」と、感嘆な声が漏れる。
「皆さんも知っての通り、これは火の下級魔法『フランバル』。誰しもが扱えるこの魔法ですが、これにも魔力の練度や操作性は重要となってきます」
通常の『フランバル』は、火球を前へと打ち出す魔法だ。
だがナミア先生が生み出した火球は、空中で静止したままの状態。
それは一向に消えることも形が崩れることもなく、先生が相当魔法の扱いに長けていることがわかる。
それに……。
「綺麗な魔力だ……」
「あ?」
心の中で思っていたことを思わず呟いてしまい、隣に座っているガドラが「何か言ったか?」という風に反応した。
「いや、なんでもない。ただ俺は魔法が苦手だから、先生みたいに『無読詠唱』を扱えるのは凄いなって思っただけだ」
「……そうか」
ガドラにそう言って誤魔化していると、ナミア先生は杖を下ろして火球を消していた。
「そして、『無読詠唱』とは魔術師の有名な『五芒星』の一つです。まあここにいる皆さんに限らず、普通なら知っているものですが」
『五芒星』。
それは、かつての大英雄『勇者』が持っていたと言われる五つの最強の能力。
『無限剣技』。
『無読詠唱』。
『獣神和解』。
『心身一体』。
『能力複製』。
これらは生まれながらの才能、もしくは己の鍛錬によって誰でも習得できる能力であるのだ。
そして、この能力を得ること自体は極めて難しくないと言えよう。
例えば、下級魔法は無読詠唱で発動することができるが、中級魔法は無読詠唱で発動することができない人がいるとしよう。
「その人は『無読詠唱』を習得しているか」と聞かれると、答えは「イエス」だ。
例え、下級だろうと無読詠唱が使えれば、その人は習得していると言えるのである。
では、何が難しいのかというと、どこくらいの魔法を無読詠唱で扱えるか、だ。
魔法には『下級』、『中級』、『上級』、『最上級』の四つの階級に分かれており、更に系統が一つの『単一魔法』と、二つ以上の『複合魔法』がある。
単一魔法での最上級魔法、更に難易度の高い二系統の複合魔法の最上級魔法を無読詠唱で発動できる人がいるとしよう。
そうすると、その人は先ほどの人と同じ『無読詠唱』の使い手でありながらも、実力が全く違うのである。
ちなみに、勇者は全ての魔法を無読詠唱で扱えるというとんでもない化け物らしく、未だその境地まで行った人はいないらしい。
「では、皆さんにも実際にやってみるとしましょう。一人ずつここに来て、下級魔法『フランバル』を全読詠唱、短読詠唱で行ってみてください」
授業初日からいきなり実習とは。
流石は世界で一番有名な学校、どうやら理論よりも実践を重視しているらしい。
さて、全読詠唱と短読詠唱も軽く説明しておこう。
無読詠唱はそのまんまの意味で、一切詠唱を発言しないで魔法を発動させること。
全読詠唱もそのまんま、詠唱を全て発言して魔法を発動させること。
そして短読詠唱。
これはよく間違われがちな認識がある。
詠唱のいずれかを省略して魔法を発動させること。
これは、どこか一節以上を省略すれば、全て短読詠唱になるのだ。
例えば、『フランバル』。
詠唱名は、『求めるは火なり。我が手に集い一つの球となりて、一点に撃ち放てフランバル』である。
これは『求めるは』『火なり』『我が』『手に』『集い』『一つの』『球と』『なりて』『一点に』『撃ち放て』『フランバル』と分けることが出来るのだ。
なので、これのどこかを省略、また一節分以上省略すれば、それは『短読詠唱』扱いとなる。
『フランバル』と名前だけ言って発動するのは、無読詠唱ではなく短読詠唱の部類だ。
ちなみに豆知識。
三節分以下の短読詠唱は『超短読詠唱』と呼ばれたりしている。
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