クチナシ魔術師は詠わない
復シュウ
「あの、シルバくん……優しくしてくださいね?」
いつもと雰囲気が違うラフィが、潤んだ瞳で僕を見てくる。
僕も出来れば優しくしてあげたいところだが……残念ながら、そうも言ってられない。
やるなら全力だ。
「──っ!」
僕が手を伸ばすと、ラフィが息を呑む。
身をよじり逃げようとするが……逃がさない。
「っ!?」
逃げようとする方向を塞ぎ、ラフィの動きを止める。
その止まった一瞬の隙をつく。
「っぁあ!」
抵抗させる暇も与えず、彼女の身体に襲いかかった。
熱く、熱く、熱く。
ラフィの身体を火照らせていく。
「くっ、んぅっ!」
彼女も必死に耐えようと悶える。
そして、ラフィが大きく息を吸い込んだところで──僕は彼女の唇を塞いだ。
「んっ──!?」
予想だにしないことに驚愕した表情をするラフィ。
その間に僕は意識を集中させた。
硬く、更に硬く。
大きく、更に大きく。
自分のモノを徐々に作り上げていく。
「ん……んんっ! んむっ!」
次に何をしてくるのか理解したラフィは暴れるが──もう遅い。
手足は既に抑えてある。今の彼女では、逃げることなど不可能だろう。
相手を満足させる気など微塵も考えていない。
全ては己の思うがままに、彼女を蹂躙していく。
始まってしまったものを抑えることなど、もう不可能なのだから。
さて──僕の方も準備が整った。
大きく息を吸い込むと、彼女に向かって思いっきり打ち付ける──
「ぷはっ! ま、参りましたっ……!」
寸前のところで、土魔法の拘束を解いたラフィが降参してきた。
土の槍を彼女の前で止めると、パンッと両手を叩き、そのまま崩壊させる。
「う、うぅ……優しくしてって言ったのに……」
その場で座り込んだラフィが涙目になるが、そうはいかないのだ。
『戦闘訓練』という実践授業で、二人一組になって一対一をするという授業。ちなみに余った一人は、第3級の実力を持つユキリア先生と強制的に組まされる。
ラフィは優しくしてと言っていたが、それでは授業の意味がなくなってしまう。
なので全力を出させてもらったところ、ラフィは不機嫌そうに口を尖らせていた。
「う、うぅ……瞬殺でした、あっという間でした……。シルバくん、強すぎです……」
……まあ、その、ちょっとやり過ぎてしまった感はあるけどね。
「そ、それにずるいですっ。口を塞ぐなんてっ」
更に文句を言ってくるラフィ。
そう、魔術師の弱点は詠唱だ。詠唱が出来なければ、魔法を発動させる事が出来ない。
という弱点から、僕は彼女の口を土魔法で塞いだわけなのだが。
いや……結構有効だと思うんだけどな、詠唱塞ぎ。
というか、別にずるくもなんともないし。
大体、ラフィは動きを止めてしまうのが良くない。あんな隙だらけじゃ、どうぞ好きにしてくださいと言っているようなものだ。
とまあ色々反論したいところだが、残念ながらそれは出来ない。だって喋られないしね。
「う、うぅー……! もう一度! もう一度お願いします!」
悔しそうに唇を噛んだラフィは、僕に頭を下げてくる……いや、頭を下げるほどのことじゃないと思うんだけど。
でもまあ……戦闘面はまだまだだけど、めげずに向かってきて、復習しようとするその姿勢は素直に褒めたい。
僕はラフィに向かって頷くと、再び戦闘態勢に入った──。
***
「なるほど、あれが噂の『口なし』くんですか」
校庭で行っている4クラスの実践授業を、教室のベランダから覗き込んでいたリラが感心した声をあげる。
「なんかレイスに似てない?」
リラの隣で傍観していたがフェリナが首をかしげた。
レイスはちらりと校庭を見、
「似てない」
とだけ呟いて、興味が無さそうに目を逸らす。
「それにしても……『無詠唱』なんて凄いこと出来るのに、なんで200番なのかしら?」
「……入学試験は詠唱でフラムバルを出すことが条件だったから、声が出ない彼は無詠唱を使わなかった、とかですかね」
リラの推測にフェリナはポカンと口を開けると、
「真面目かっ!」
とケラケラ笑いながらツッコミを入れた。
その返し方はどこかの誰かと同じ返しであり、4クラスの先生と一対一をしている青髪の男がいきなりクシャミをする。
「っていうか、いくら自習とはいえ授業中だよ? 君たち、課題は終わってるの?」
「その課題の内容、昨日先生から『みんなに伝えておくように』って聞いたの私よ? 前もって終わらせてるに決まってるじゃない」
「私もフェリナちゃんに教えてもらいましたー」
「…………」
胸を張る二人にレイスは呆れた表情をする。
かくいう彼も既に終わっているのだが。
「…………」
そして、噂の『口なし』を見ているのはもう一人いた。
金髪のミディアムショート、碧眼の瞳。
『口なし』に一度敗北した男、ゴルドー・レウン・アストレカは食い入るように彼の動きを凝視していた。
彼は諦めてなどいない。
出席番号200番に負けたという屈辱は、彼の中で復讐という形になっている。
しかし、彼も愚かではない。次のリベンジの時の為に、きちんと相手の動きや弱点を見ているのだ。
(次は……必ずっ!)
指を鳴らして火魔法を発動させる『口なし』を見て、ゴルドーの拳が強く握られた。
いつもと雰囲気が違うラフィが、潤んだ瞳で僕を見てくる。
僕も出来れば優しくしてあげたいところだが……残念ながら、そうも言ってられない。
やるなら全力だ。
「──っ!」
僕が手を伸ばすと、ラフィが息を呑む。
身をよじり逃げようとするが……逃がさない。
「っ!?」
逃げようとする方向を塞ぎ、ラフィの動きを止める。
その止まった一瞬の隙をつく。
「っぁあ!」
抵抗させる暇も与えず、彼女の身体に襲いかかった。
熱く、熱く、熱く。
ラフィの身体を火照らせていく。
「くっ、んぅっ!」
彼女も必死に耐えようと悶える。
そして、ラフィが大きく息を吸い込んだところで──僕は彼女の唇を塞いだ。
「んっ──!?」
予想だにしないことに驚愕した表情をするラフィ。
その間に僕は意識を集中させた。
硬く、更に硬く。
大きく、更に大きく。
自分のモノを徐々に作り上げていく。
「ん……んんっ! んむっ!」
次に何をしてくるのか理解したラフィは暴れるが──もう遅い。
手足は既に抑えてある。今の彼女では、逃げることなど不可能だろう。
相手を満足させる気など微塵も考えていない。
全ては己の思うがままに、彼女を蹂躙していく。
始まってしまったものを抑えることなど、もう不可能なのだから。
さて──僕の方も準備が整った。
大きく息を吸い込むと、彼女に向かって思いっきり打ち付ける──
「ぷはっ! ま、参りましたっ……!」
寸前のところで、土魔法の拘束を解いたラフィが降参してきた。
土の槍を彼女の前で止めると、パンッと両手を叩き、そのまま崩壊させる。
「う、うぅ……優しくしてって言ったのに……」
その場で座り込んだラフィが涙目になるが、そうはいかないのだ。
『戦闘訓練』という実践授業で、二人一組になって一対一をするという授業。ちなみに余った一人は、第3級の実力を持つユキリア先生と強制的に組まされる。
ラフィは優しくしてと言っていたが、それでは授業の意味がなくなってしまう。
なので全力を出させてもらったところ、ラフィは不機嫌そうに口を尖らせていた。
「う、うぅ……瞬殺でした、あっという間でした……。シルバくん、強すぎです……」
……まあ、その、ちょっとやり過ぎてしまった感はあるけどね。
「そ、それにずるいですっ。口を塞ぐなんてっ」
更に文句を言ってくるラフィ。
そう、魔術師の弱点は詠唱だ。詠唱が出来なければ、魔法を発動させる事が出来ない。
という弱点から、僕は彼女の口を土魔法で塞いだわけなのだが。
いや……結構有効だと思うんだけどな、詠唱塞ぎ。
というか、別にずるくもなんともないし。
大体、ラフィは動きを止めてしまうのが良くない。あんな隙だらけじゃ、どうぞ好きにしてくださいと言っているようなものだ。
とまあ色々反論したいところだが、残念ながらそれは出来ない。だって喋られないしね。
「う、うぅー……! もう一度! もう一度お願いします!」
悔しそうに唇を噛んだラフィは、僕に頭を下げてくる……いや、頭を下げるほどのことじゃないと思うんだけど。
でもまあ……戦闘面はまだまだだけど、めげずに向かってきて、復習しようとするその姿勢は素直に褒めたい。
僕はラフィに向かって頷くと、再び戦闘態勢に入った──。
***
「なるほど、あれが噂の『口なし』くんですか」
校庭で行っている4クラスの実践授業を、教室のベランダから覗き込んでいたリラが感心した声をあげる。
「なんかレイスに似てない?」
リラの隣で傍観していたがフェリナが首をかしげた。
レイスはちらりと校庭を見、
「似てない」
とだけ呟いて、興味が無さそうに目を逸らす。
「それにしても……『無詠唱』なんて凄いこと出来るのに、なんで200番なのかしら?」
「……入学試験は詠唱でフラムバルを出すことが条件だったから、声が出ない彼は無詠唱を使わなかった、とかですかね」
リラの推測にフェリナはポカンと口を開けると、
「真面目かっ!」
とケラケラ笑いながらツッコミを入れた。
その返し方はどこかの誰かと同じ返しであり、4クラスの先生と一対一をしている青髪の男がいきなりクシャミをする。
「っていうか、いくら自習とはいえ授業中だよ? 君たち、課題は終わってるの?」
「その課題の内容、昨日先生から『みんなに伝えておくように』って聞いたの私よ? 前もって終わらせてるに決まってるじゃない」
「私もフェリナちゃんに教えてもらいましたー」
「…………」
胸を張る二人にレイスは呆れた表情をする。
かくいう彼も既に終わっているのだが。
「…………」
そして、噂の『口なし』を見ているのはもう一人いた。
金髪のミディアムショート、碧眼の瞳。
『口なし』に一度敗北した男、ゴルドー・レウン・アストレカは食い入るように彼の動きを凝視していた。
彼は諦めてなどいない。
出席番号200番に負けたという屈辱は、彼の中で復讐という形になっている。
しかし、彼も愚かではない。次のリベンジの時の為に、きちんと相手の動きや弱点を見ているのだ。
(次は……必ずっ!)
指を鳴らして火魔法を発動させる『口なし』を見て、ゴルドーの拳が強く握られた。
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