恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

開戦!氷室VS酒々井

「それで、その『生徒ポイント収集』ってのはどういうルールなんだ?」

 葛西と酒々井の協力関係の締結、俺の突然の宣戦布告、そして酒々井がすぐさま打ち出した『期間限定生徒ポイント収集』という勝負内容…
 一度にいろいろなことが目の前で起き、未だざわざわとし続けている周囲の生徒達。

 しかし、そんな周囲の様子等関係なく、俺と酒々井は勝負内容について話しを進めていく。

「じゃあ、改めてルール説明しようか。まぁ、基本的なルールは名前の通り。――期間内により多くの生徒ポイントを集めた方の勝ち。勝負は僕と君の1対1で行う。――ここまではいい?」
「ちょっと待て。お前はさっき、ハンデとして俺達は4人で挑んでもいいって言ったはずだ。勿論、見た感じ葛西は無理だが、他の2人と協力して挑んでもいいんだよな?」

 俺はすかさず酒々井の打ちだした勝負内容に異議を申し立てる。
 勝負内容を決める優先権は挑まれた酒々井が有しているため、俺が異議を唱えたところで特に強制力はない。
 だが、何も言わなければ有利に勝負を進めることはできないし、何よりコイツのペースで進めるのはマズイ。

「まぁまぁ、分かってるって。それじゃあ、細かいルールを説明しようかな」

 そう言って、酒々井はいつもの調子で説明を続ける。


~期間限定生徒ポイント収集 ルール~

①期間は1週間。より多くの生徒ポイントを集めた方の勝ち。
②対象ポイントは期間内に得たポイント+現在自身が保持しているポイント。
③勝負期間内、他人からのポイントの受け渡しは自由。
④ポイントの譲渡はお互いの合意の下でしか行えない。
⑤勝った者は負けた者の進路を一度決める権利を有する。また、負けた者は即刻退学。
⑥酒々井が勝った場合は習志野栞とペアになる権利を得る。
⑦ポイントを譲渡した者は、譲渡した相手が負けた場合、退学となる。
⑧ポイントを譲渡した者は、譲渡した相手が勝った場合、譲渡した倍のポイントが与えられる。



「――ま、ルールはこんな感じかな。他に何か付け加えたいルールとかあれば聞くよ?」

 一通りルールを説明し終えた後、酒々井は俺に問いかけてきた。
 このルール…ぱっと見、俺と酒々井の一騎打ちのようになっているが、実際は全く違う。
 ルール③と④がある以上、協力者の数だけポイントも増えることになるため、協力者の数が多い程有利になるのだ。
 そして、勝つためには優秀な協力者を集め、上手く指揮することが必要だ。
 しかし、ルール⑧があるとはいえ、ルール⑦がある以上、協力者を集めるとこは簡単じゃない。

 つまり、基本的には『自分のために精一杯尽力してくれる優秀な協力者をどれだけ集め、自分の指揮で陣営を勝たせられるか』という主旨の"戦略ゲーム"になる。

 そして、既存のポイントを使えたり、こちらには習志野達協力者がいる等、一見俺有利のルールに見える。
 しかし、これは、アイツが提示してきた勝負。
 既に何か仕掛けがあるに違いない…。
 そして何より…

「どうしたんだい?これでも君が有利になるようにしてみたんだけど…何か不満でもあるのかい?」

 俺がルールについて考えを巡らせていると、酒々井は、やれやれといった調子で俺の発言を促してくる。

(何を図々しく言ってやがる。"戦略戦"はお前の得意分野だろうが!)

 ルール等は全く違うが、中学時代、こいつに惨敗したのもこういった"戦略ゲーム"だった。
 俺は小さく舌打ちしつつも、何とか冷静さを保ち、俺が勝つ上で最低限必要なルールを進言する。

「じゃあ、俺から一つだけいいか?」
「うん、勿論!」
「とりあえず、この勝負が終わるまで、この学校における権力の行使は禁止だ。ーーいいな?」

 俺は鋭く睨み、酒々井に首肯を促す。
 酒々井の理事メンバー権限…。これを封じておかないと、この勝負かなり厳しい。

「ああ!そんなことか。いいよ!別にそんなもの使わなくても楽勝だしね♪」

 しかし、俺の要求に対し、酒々井は事も無げに了承した。

「なら問題ない。さっさと始めようぜ」
「へぇー、何か急に自信満々だねぇ。何か良い作戦ても思い付いたのかい?ーーまぁ、いいや。じゃあ、早速始めようか」

 酒々井がどんな狙いでこの勝負内容にしたのかは分からんが、少なくともルールを見る限り勝機はありそうだ。
 はじめから有利な展開には出来なかったが、とりあえず、今は勝機があるっていう事実だけで十分だろう。
 あとは、出たとこ勝負でなんとかするしかない!

「あとは、一応審判が必要なんだけど…」

 俺がそんなことを考える中、酒々井は誰に審判委ねようか思案している。
そこへ…

「その役、私がやってやろう」

 酒々井が審判を探してキョロキョロしていると、ギャラリーの中から聞き覚えのある、威圧感たっぷりの声が聞こえてきた。
 そして、声の主の周辺の人垣が開き…

「おやおや、大井先生じゃないですか!先生が審判をやってくれるんですか!?嬉しいなぁ♪」
「まぁ、貴様には関わりたくないんだが、自分の生徒が何人も関わってるからな」
「いやいや、さすが何だかんだで情に熱い大井先生!自分の生徒が心配で審判を買って出るなんて素晴らしいですね!!」
「黙れ。自分で黙れないなら、私が強行手段で黙らせてやろうか?」
「いやぁ、怖い怖い。でも、いくら生徒が心配だからって審判は平等にお願いしますよ」
「当然だ」

 大井先生の目がいつも以上に怖い…。
 しかし、酒々井はそんな先生に対しても平常運転。
 逆に含め周りの生徒の方がビビっているくらいだ。
 まぁ、この人なら公平な審判をしてくれるだろう。

「それじゃあ、審判も決まったようだし、早速始めようか、氷室君」
「ああ、俺はいつでも大丈夫だ」

 そして、大井先生は俺達の様子を窺い、問題ないことを確認すると、

「それではこれより酒々井秀VS氷室辰己。1週間限定の生徒ポイント収集勝負、開始!!」

 遂に開戦が宣言された。

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