恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

10年越しの恋 1

 自己紹介の後も大井先生によるオリエンテーションは続いた。
 そして、詳しい規則の説明も一段落したところで丁度チャイムが鳴った。

「チッ、昼休みか。次の授業には遅れるなよ」

 最後に生徒達に釘を刺すことを忘れず、大井は教室を後にした。
 …ようやく休み時間か。だが…

「ねぇ、あの習志野…さんだっけ?いきなり告白とかどういうつもりかしら?」
「さぁ?なんかあの男子…氷室だっけ?あの人は初対面みたいな反応だったし…ストーカーとかかな!?」
「えー?でも氷室君ってそこまで格好よくなくない?」

 大井が退出した途端、クラスの連中が俺や習志野を指さし、ヒソヒソと話し始めた。
 っていうか、最後の奴!余計なお世話だ!!自分で言うのもなんだが、俺だって顔は良い方だ。きっと世の中には俺のことをストーキングしたい程カッコいいと思う奴も…いや、やっぱりいなくていいや…。

「っていうか、習志野さん、せっかく可愛いと思ったのに…いきなり告白とかさすがにないわ…」
「お前なんてあれがなくてもフラれて終了に決まってんだろ?」
「お前、殺す!そして、あの習志野さんにコクられていた氷室ってやつも殺す!」
「はははっ。お前、必死になり過ぎだろ!まぁ、ちょっと頭はゆるそうだけど確かに可愛いもんな、習志野栞」
「それより、あの二人どうするんだ?付き合うのか?」
「っていうか氷室が断ったら習志野ちゃん退学…だよな…?」
「まぁ、告った張本人は何にも考えてなさそうだけど 笑」
「それにしても、二人とも全然話に行かねぇよな」
「確かに。早くはっきりさせろよな」

 俺と習志野をダシに初対面のはずのクラスメート達が急速に仲好くなりつつある。
 っていうか、なんか俺逆恨みされてんだけど…
 ふと、もう一人の話題の中心、習志野栞に視線を向けると、チラチラとこちらを見ながら、顔を赤くしてオロオロしている。
 これはこれで面倒くさいな…。俺だってアイツに聞きたいことが山ほどあるって言うのに!!
 だが、ここで俺があいつに話しかけても逆効果だろうしな…
 俺は黙って席を立つと、そのまま教室を出る。
 とりあえずここにいても何も良いことはなさそうだしな。
 俺は学校の見学を兼ね、一人でゆっくり寛げそうな場所を求めて旅立った。

※※※※

「まぁ、一人で寛げる場所と言えばまずはここだろ」

 俺は階段をひたすら上り、目の前の現れた扉を開け放った。

「定番だが…いや、定番の場所だからこそいい」

 俺は外の空気を思いっきり吸い、下の景色を見降ろして気持ちをリフレッシュさせる。
 そう。俺は一人学校の屋上に来ていた。
 一人になりたい時に学生が行く場所ナンバーワン(俺調べ)スポット・屋上だが、今は運よく誰もいないようだ。
 …この運の良さが少しでもあの自己紹介の時間で出せていればこんなことにはならなかったんだが…
 よし、ここならいいだろう。俺は再度周囲を一通り見渡してから口を開く。

「おい、隠れてないで出てこいよ。ここならゆっくり話せるぞ」

 俺は出入り口の方を振り返り、呼び掛ける。
 教室を出た後から後を付けられていることには気付いていた。
 誰かは確認していないが、大方の予想は付いている。

「おい、俺に用があった付いてきたんじゃねぇのか?」

 なかなか出てくる気配のないその人物に再度呼び掛ける。
 もしかして、俺の勘違いか?まさか本当にそこには誰もいない…?そんなの恥ずかしすぎるだろ!あんな確信持って呼び掛けておいて、実はただの勘違いでした、ってダサいにも程がある…

「お、おい!居るんだろ?勿体付けてないでさっさと出てこいよっ!!」

 勘違いだった時のことを考え、あまりの恥ずかしさに耐えられなくなった俺は、入口の方へと早足で確認に向かう。

「す、すみませ――きゃっ!」
「うおっ!?」

 そして、入口間近でその少女はいきなり顔を出し、追突した…

「…出てくるなら早く出ろよ…」
「うぅ~…すみません。付けているのがバレていることに焦って、出ていくタイミングを逃してしまいまして…」

 少女はぶつかった衝撃で尻持ちを付き、俺の胸板とぶつかった鼻をさすりながらこちらを見上げている。
 いやぁ、ホントいてくれてよかった…。とんだピエロになるところだったぜ…

「いや、こっちこそ悪かったな。…立てるか?」
「は、はい、ありがとうございます」

 少女は俺の差し出した手を掴み、立ち上がる。
 入口で話すのも気が引け、屋上の柵のところまで移動することにした。

「それで、あれはどういうことだ?――習志野」

 俺は、柵に到達するとすぐにその少女――習志野栞に本題を切り出した。

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