恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜
恋星高校恋愛学科 1
「みなさん、とりあえず入学おめでとう。担任の大井みどりだ。明日にはいない奴もいるかもしれんが、とりあえずよろしく」
4月某日。待ちに待った…とまではいかないが、そこそこ待ち望んでいた恋星高校入学式が終わり、今は高校生活最初のホームルームの真っ最中。
どうやら、教壇の前に立っているクールビューティーな感じの女性が俺達のクラスの担任教師らしい。
前髪で片目を隠した黒髪ロングのヘアスタイルと片目だけでも十分な攻撃性を持つサディスティックな目付き…それから断崖絶壁の胸元が印象的だ。
「この学校のルールについては先程、校長から話しがあったと思うが、バカっぽい顔をしたお前らのためにもう一度説明してやる」
大井教諭は腰に手を当て、不機嫌そうな表情で生徒達を見渡す。
美人ではあるのだが、この高圧的な態度はあまり好きではない。あと俺はどちらかというと巨乳派だ。(マニアの方達すみません…)
「基本は普通科の学校と大差ない。恋愛学科とは言っても別に恋愛の授業を行うわけではないしな」
まさに肩すかし。合格発表から今日まで抱えていた不安が解消されたのは良かったが、なんだかやるせない気持ちに陥った。
「まぁ、一番普通科と違うところは、『告白してフラれたら退学』というところだな」
なるほど。『フラれたら退学』――どうやら、これが恋愛学科の特徴らしい。
「そして、うちの学科はポイント制を採用している。――お前ら、自分の生徒端末を出せ!」
俺は言われた通り、入学式前に配布されたタブレット端末を取り出した。
この学校ではこのタブレット端末が生徒手帳代わりとなっているらしい。
「そこにはお前らのポイント…まぁ簡単に言えば成績が入っている。ポイント照会ってところを見てみろ」
大井言われた通り画面を操作し、ポイント照会をタップ。すると…
「そこに書かれているポイントが現在のお前らの成績だ。ポイントは勉強だけでなく、部活での成績や背普段の生活態度、奉仕活動や課外活動…とにかく学生生活の全ての場面でその成果に応じたポイントが支給される。――まぁ、入学したての今は入試のポイントしか入っていないがな」
そこには「487pt」と表示されていた。
「先生!このポイントの横に色違いで同じ数字が書いてあるんですけど、これはなんですかー?」
ふと、一人の男子生徒が手を挙げて質問した。が、しかし…
「黙れ、カス!今は私がしゃべる時間だ!」
「…す、すみませんでした」
男子生徒は大井のドスの利いた声と迫力満点の睨み一発KO。調子よく挙手した姿は見る影もなく、気まずそうに身を小さく丸めていた。
「まぁ、今回は初犯ってことで見逃してやるが、次やったら二度と陸に上がれると思うなよ」
「……はい」
…質問しただけで海に沈められるのかよ!しかもちゃんと挙手したのに!?もしかして卒業率が低いのってこの人のせいなのでは…?
「まぁ、冗談はさておき」
冗談に聞こえねぇよ!!
「今、そこの男が質問したことはどっちにしろ説明するところだった」
じゃあ、無駄にいじめるなよ!最初からすっと説明すればいいじゃん!?さっきの奴に謝れよ、このぺったんこが!!…と言ってやりたいところだが、俺は面倒くさいのと自身の身の安全のため、ここは辞退させていただくことにした。
「そのポイントの横の数字はペアの合計ポイントだ。この学校では個人のポイントだけ高くても何も意味はない。全てはペアの合計ポイントで評価する」
大井の説明に、静まり返っていた教室が少しざわつきだし、
「お前らには男女でペアを作ってもらい、そのペアの合計点数で評価を決定する。そして成績不良者は即刻退学だ」
おそらく動揺からだろう。そのざわつきは少しずつ大きくなっていく。そんな中、
「先生!」
俺のすぐ後ろの席に座る女子生徒が声を上げ。振り返ると、そこには姿勢よく毅然とした態度でまっすぐに手を挙げる女子の姿があった。
彼女を一言で表すならば美人。魅力的な特徴は数えきれない。が、しかし、彼女の最大の特徴はツリ気味の目でも整った顔立ちでも、ましてや肩まで伸ばした栗色の髪でもない。彼女の最大の特徴、それは…豊満なバストである。
その推定Eカップはあるのではないかという巨乳は今も男共の注目の的となっていた。
その我儘ボディに嫉妬したのか、鋭い目付きでキッと睨みつける大井。
だがしかし、巨乳女子は貧乳など眼中にないとでも言いたげに、微動だにせず、まっすぐ大井の目を見据えていた。
お互い全く譲ることなく、睨み合うこと数秒。
「何だ?言ってみろ?」
ついに大井が沈黙を破った。
しかし、この女。あの威嚇を見た後で平然と挙手するとは…規格外の胸…いや度胸だな。と、俺が心の中で感心する中、
「この学校で生き残るためにはペアの力が必要不可欠のようですが、その男女のペアとはどうやって決めるんでしょうか?」
巨乳少女はハキハキとした口調で質問内容を口にした。
「フン、さすがに肝が据わっている奴も多少いるみたいだな。お前、名前は?」
「市川凛(いちかわりん)です」
「ほう。お前が入試学年トップの市川か」
面白い物を見つけたように、目を細めて市川凛をマジマジと見つめる大井。その表情は実に満足そうだ。
っていうか、こいつが学年トップだったのか…。へぇー、胸デカイなぁ…。学年トップという肩書も目の前の巨乳の前ではインパクト不足は否めない。…巨乳ってすごいな。
「質問はペアを決める方法だったな。――ペアを決める方法は「告白」だ」
そんな中、大井の回答を聞いてハッとした。
フラれたら退学…男女ペアの合計ポイントで評価…告白によってペアを決定…
これはつまり…
「つまり、お前らにはこれから「恋愛」をしてもらうということだ。告白をして恋人になり、その恋人との合計ポイントによって卒業できるかが決まる」
なるほど…それで『恋愛学科』か…。
その説明を聞き、教室中が一気に騒がしくなった。
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