新しい世界で今度こそ幸せをつかみたい

ゆたぽん

29話

あの後ナビさんとも相談し、相手の出方次第だが、予定を切り上げて次の街に行くのが良いのでは?となった。
もちろん、ギルド間にはある程度の情報の共有があるが、こちらが提示しなければ隠せるだろうとの事。
ラビさんも進化したが、今日は影の中で待機してもらう事にした。

考えても無駄のため、ギルドに向かい受付に声をかけた。
すると始めてギルドに来た時の初老の紳士が案内してくれた。
紳士はアルトと名乗ってくれたので、お互いに自己紹介したところで、ギルドマスターの部屋に着いた。

中には既にザブマスターも居ると言われ入ると、何故かアルトさんも一緒に入って来た。
ギルマスから、

「おう!よく来たな!まぁ椅子にでも座れよ!」

と、アルトさんをその場に残し話し始めたので、もしやと思い、ギルドマスターに昨日の話は誰にもしてないですよね?尋ねると、サッと目をそらした。

「お、俺は何も言ってないが、何でかバレちったんだよ。ほ、本当だぜ?」

ジーっと見つめると、汗をダラダラかいて、目を逸らすので威圧をかけながら、もう一度聞くと、顔を真っ青にしながらアルトさんとザブマスターには話してしまったと話した。

「私は約束を守れないギルドは信用しません。ザブマスターは当事者だから良いと思われたのですか?今日私は来ると話し、来てから説明すると言いましたよね?たった1日が待てず、2人に話すと言うのはおかしいですよね?それに…。」

と言って私は違うドアの前に音を立てず移動し、ドアを開けた。
そこには他のギルド職員だろうか、2人がドアに耳をあて中の会話を聞いていたのだ。
勿論その2人は気配を消していたため、私に気づかれてドアを開けられると、驚いた反応をしていた。

「それに、こちらの方々はどなたでしょうか?
たかが下位の冒険者だと思い、甘く考えてだのでは?話にならないので失礼します。」

そう言って部屋を出ようとすると、ザブマスターに止められた。

「カミーユさん、申し訳ありません。少しで良いので話を聞いてもらえますか?
それと、エドガー、口止めされていたのなら何故言わないのですか?
私とアルト様を同席させて良いと言ったのは貴方ですよね?
はぁ?一人で聞くのが嫌だった?秘密とは言われてたけど、言いふらさなければ良いと思った?
ふざけないで下さい…。折角カミーユさんが話し合いをしてくれると言ってくれたのに…。
そもそも完全にこちらの落ち度なんですよ?
それを貴方は!」

ザブマスターのイライラがギルドマスターに向いてしまっており、私もこの場に居たくなかったので再度ドアから出ようとすると、アルトさんからも止められた。

流石に放置され、信用もできない所には長く居たくないので、威圧をかけ、会話を終わらせた。

「もう一度言います。私は秘密を軽んじて自己判断で周囲に言ってしまうようなギルドを信用することができません。
それに昨日のことについても一言も謝っていただいでいません。
最後に、私はお二人のやり取りを見に来たわけでないので、帰らせていただきます。
それと、昨日のことに関しての質問は一切受け付けません。…ザブマスターはこれからも長生きする予定であれば、身体に負担のかかる生活を改めて下さい。
それでは失礼します。」

と言ってその場を立ち去ろうとした。
それでも私の前にアルトさんが立ち塞がったため、更に威圧を強め動けなくし立ち去った。

そして受付に立ち寄りエレナさんに挨拶をしその足で教会によりマリーさんガイさんにも声をかけた。
初めは何があったか聞きたそうな感じがあったが、またガロンに来た時には顔を出してね!と送り出してくれた。

宿での清算を済ませて、最後に門番のブラウンさんに挨拶をしてガロンを出た。

その頃になるとギルドではようやく威圧の効果が取れ、少しずつ動けるようになって居た。

「私が動けなくなるのはわかります。ギルマスを支えるために経理の仕事担当として国からの派遣サブマスをしているのですから…。
ですが、ギルマスは元とはいえSランク、アルト様も元SSランクでしたよね?その2人を動けなくする程の実力があるとは…。」

そう、結局はギルマスは下位の冒険者と侮っていたのだ。
昨日サブマスに珍しい回復魔法を使っていたので、ギルドに定着してもらいたいが為に、自分よりも強いアルトを連れ出し、上手く契約を結びたかったのだそうだ。
元SSランクがいれば嫌とは言わないと思ったらしい。

ふぅっと溜息をつきアルトが言葉荒く、

「いつからこのギルドは、ギルマスの自己判断だけで事を判断するようになったんだ?
何のためにサブマスにセイロンを付けたんだ?
ギルマスになったのは確かにエドガー、お前の実力だ。
お前には何故か周りを惹きつける魅力あるし、実績もあるからだ。
だが、ギルドは一人では出来ないから周りと相談しろって何度も教えただろ?
もう俺だって年だからお前らに託したんだ。
少しは反省しろ…。俺は動けるようになったからカミーユの所に行ってくる。
でもまぁ、もうこの街には居ないかもしれないがな…。」

と言ってアルトはその場を立ち去った。
残ったギルマスとサブマスはまだ動けない為、お互いに顔を見合わせて、黙っていた。
一度街に出たアルトはカミーユが街から出たと聞いたため直ぐにギルドに戻り、エドガーの再教育を始めた。
結果、セイロンの、ストレスも減り体調は良くなったのだが、他のギルド職員から折角丁寧な仕事してくれる冒険者だったのにと怒りの声が暫くあったのだった。

それと、アルトが領主の所に行き、クレームこ件について話すと、直ぐに息子が呼ばれて、こちらも再教育が施された。

のちに、再教育をされた領主の息子と、冒険者ギルドのエドガー、セイロンが率いるギルド職員とで、ガロンを盛り上げていき、次第に治安の良い住みやすい街として、国内の上位ランクに入るほどまで成長するのであった。

しかしガロンを出た後のカミーユの足取りは分からず、何年もギルドでの依頼を受けていないでいた。本来ならギルドより脱退するのだが、ガロンでのトラブルの後だった為、脱退せず保留として対応していたのだった。

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