新しい世界で今度こそ幸せをつかみたい

ゆたぽん

閑話(ケットッシー)

「ふぅ〜、マスターが、死んでからもうどのくらいだったのかしら〜?女神様からもこの土地を見守って欲しいと言われたから居るけど、子孫は駄目になっていく一方だわ〜。」

はぁ〜っとため息をつきながら、遠い空を見てハハさんケットッシーは呟いていた。女神様からは、本来ならマスターが亡くなった後はある程度遠くから見守るだけで良いと言われていた。

マスターは真っ直ぐな性格で、何より自分を鍛えるのが好きだった。『俺は病弱もやしっ子だったから筋肉に憧れてたんだ!』と言ってダンジョン巡りをしていた。
そして、この土地の最高難易度を誇るダンジョンを見つけ目をキラキラさせていた。
ついには『ここで俺は最強になる!』と言って結界を作り、『俺の子孫達もこのダンジョンで鍛えられたら幸せだろう。』と言い、子孫達の許可が無ければ入らないようにと石碑を建てていた。
初めマスターは石碑に[脳筋の何が悪い!ただひたすらに自分を鍛えるんだ子孫達よ!]と書いていた。私はそれでは伝わらないのでは?とマスターと相談して、今後の危険性踏まえた上で仰々しい感じな石碑になったのだ。初めは子孫たちも自分を鍛える事に余念がなかった。
時代とともに鍛える事から遠ざかるようにはなっていたが、それでも結界の維持はしていた。
そんなマスターの面影を残す子孫たちからは私は離れがたかった。
初めは子孫たちも私の事を幻獣と知っていたので優しく扱っていた。
ただ、平和な時代が過ぎ、幻獣という存在を軽視し、操ろうとする子孫が出て来た。
そうとは気づかず、のんびり過ごして居る私のところにそれは突然やって来た。
いきなり身体を拘束されたかと思うと意識を狩られ気がつけば何かしらの魔法陣の上に寝かされていた。
その時は丁寧に魔力封じの首輪もされており、抵抗も出来ず、周りには数十人、いや、数百人かわからない数の人型達が死んでいた。
私が意識が戻ったのがわかったのか、魔導師らしき人物が声をかけてきた。

「ん〜?起きちゃった〜?あれれ〜?やっぱり幻獣って凄いんだね〜♪たくさん魂使ったのにさ〜♪まぁ、動けないみたいだし〜♪やっぱ私って天才かも〜♪ケットッシーぐらい簡単に封印出来ないと上位の幻獣手に入らないしね〜♪あはは〜実験に付き合ってね〜♪」

虚ろな目をし幼さの残る女の子がこちらを見ながら笑いながら話していた。その手には人型の遺体を持ったままで。

「ん〜?これ見てるの〜?どぉ〜せ名前も知らないモブ達なんだし〜いっぱい居なくなったって大丈夫〜♪だって私はヒロイン♪誰からにでも愛される存在〜♪」

彼女が何の話をしているかわからなかったが、かなり状況は悪いという事だけはわかる。
足掻こうにも魔力が封じられているし、何もすることができないでいた。
そして凶々し魔力を感じたかと思うと意識を失った。

そして気がつくと魔力を封じられた状態であり、屋敷から、正確にはマスターの子孫の居るこの土地から離れられないようにされていた。
当時のマスターの子孫は幻獣からただの猫に変わった私を、飼い猫のように扱いはじめた。どうやら私が幻獣だから、いつ自分達を支配されるかわからないと言った恐怖があり、封印したのだと話していた。
逃げることも出来ず、屋敷にとどまることしか出来ないでいると、いつのまにか子孫が変わり、ダンジョンの氾濫が起きた。
当時のマスターの子孫はかなりの自堕落な生活を送り谷にも行っていなかった。何度か行くように念話を送るも聞こえておらず、氾濫は屋敷まで及び、屋敷は全壊した。
氾濫の隙を見て谷まで辿り着き結界を貼り直したが、その子孫は国に援助が少ないからこうなったと言い、更に自堕落な生活をしはじめた。

そうして年に一回は結界の維持を行うようになった。だが、それもいつまで続くかわからない。
逃げようにも逃げれず、ただこのままだと大惨事に巻き込まれてしまうと考え、長い年月をかけて体内に魔力を溜め、子供を産み出した。
子供なら影響なく教会に行き女神様と話せると考えたからだ。だが子供にも封印の影響が出ていた。

この土地に残るしかないと諦めていたところに不思議な赤子と出会った。
その子は生まれる前から念話が使え話が出来た。その為初めは警戒していたが、その子が大きくなり教会行ければ、もしかしたら女神様に現状を知ってもらえるのでは?と考え成長を見守っていたが、10歳になる前に屋敷から居なくたってしまった。
子孫たちが嬉しそうに谷底に落としたと話していたので、もう生きてはいないだろう。
そんな希望もない日々を過ごしていると急に女神様の声がした!
現状を知り封印を解いてくれたのだ!一瞬、マスターには悪いが子孫たちに復讐しようと思った。だが、谷のことがあり女神様から止められてしまった。
私の雰囲気が変わったのがわかったのか、我が子が心配そうにこちらを見ている。
一度、精霊界に帰り仲間とともにこの子を育てようと考え、長年住んだ土地を離れた。
私がこの土地を離れた事により、魔獣たちは屋敷付近にも現れるだろう。
奴らは本能的に幻獣を嫌う習性があるから…。

「もう私には関係ない話だわ〜。やっと故郷に帰れるわ〜。まぁ幻獣自体が寿命が長すぎるから、みんな私が居なくても気にしてないわね〜。本当に女神様には感謝だわ〜。」

そうして子供を連れて精霊界に帰り仲間とともに過ごし始めたのであった。

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