命の重さと可能性の重み

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第三十一話

「結局この「絆」ってつく可能性は、いったいなんなんだろうな…マリアさんはなにか知りませんか?」

「いいえ…わたくしも聞いたことありませんわ…」

「そうですか…」

「力になれず、すみません…」

「いえ、しょうがないですよ…俺の贖罪に関係するらしいですから…」

「贖罪…ですか?」

「えぇ、贖罪です。俺が地球…もといた世界で死んでしまった事に対しての…」

「詳しくうかがってもよろしいですか?」

「えぇ、いいですよ。エリカには話していますし、マリアさんもその話を聞くためにこの部屋へ俺を呼んだのでしょう?」

「そうですわね…純粋にお話ししてみたいという理由もありますが、あなた自身について聞くのが主な目的なのも事実ですしね…」

「ではお話しますね…向こうの世界…地球で俺が何をして、どうしてこの世界に来る事になったのかを…」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




俺がすべてを話し終えた後、しばらくしてからマリアさんが口をひらく。

「そうですか、そんな事があったのですね…」

「えぇ、これでエリカに話した事は全て話しました」

「これでわかったような気がしますわ…Sランクの強さの気配オーラを持ちながら、中身などがそれにあっていない理由が…」

強さの気配オーラですか?それって強さが目に見えているって事ですか?」

「そうなりますわね…。全ての種族が共通して持つ、ステータスを強さの気配オーラと呼ぶんですの…」

「ステータスですか?それって、「力」だとか「素早さ」だとかってやつですか?」

「そのようなものですわ…目で見るためには、冒険者としてランクが定まった時に手に入る「選定者」という可能性が必要になりますが…」

「その「選定者」という可能性を持つことで、相手の力量がわかるってことですか?」

「そうなりますわね。冒険者は「自分の力量」と「相手の力量」をしっかり認識して対処しなければなりませんから…」

「自分の事もわかるんですか!?」

「えぇ、もちろんですわ。自分の力量がわからなければ、ランク昇格試験を受けられませんもの…」

「ランク昇格試験ですか?」

「えぇ。ランク昇格試験を受けて、それに受かる事でランクを上にあげる事が出来ますの…」

「それになんで自分の力量を知る事が必要なんですか?」

「ランク昇格試験を受けるためには、自分と同ランクの依頼を10件以上成功させる事が条件なのですが、条件を満たした状態でランク更新のための再登録を行う時に、ステータスが上のランクに足りていない場合は依頼達成件数がリセットされてしまうのです…」

「それはめんどくさいですね…」

「えぇ…その通りですわ。なので、自分の力量が上のランクに上がれるほどになってから、ランク昇格試験を受けるのが常識になっていますわ」

「そうなんですか。…つまり俺は、エリカと同じくらいのステータスを持っているってことになるんでよね?」

「そうなりま「その通りよ」」

マリアさんの言葉をエリカがさえぎる。

「エリカ?」

「この街に着くまで私についてこれたのが良い証拠だわ。…まだ認めてなかったの?」

「そういうわけではないんだけど…」

「なら早く認めなさい。そうしなければ、苦しむのはあなたよ…」

「そうですわね…早く認めて、手に入れた力になれなければ、まわりに迷惑をかけてしまうことになりかねないのも確かですわね…」

「わかりました…まだ実感はあんまりないんですが、エリカと一緒にあんな速度で走れたのは事実なので、うまくコントロールして、まわりになるべく迷惑をかけないようにしますよ。…まぁ、迷惑をかける相手は今のところ、エリカとマリアさんくらいしかいないんですがね…」

「そうですか…わたくしもその中に入っているのですね…少し嬉しいですわ」

そう言ってマリアさんが微笑む。

「そうですか?マリアさんにそう言って貰えると、とてもありがたいです」

「私もかまわないわっ」

俺がマリアさんに頭を下げると、エリカが俺の手を握ってくる。

「「絆」がつく可能性は、贖罪に関係ありそうなんでしょ?…ゲンは私と一緒に暮すんだから、私に迷惑をかけるのは当たりまえよ!むしろわたしからかけてあげるわっ」

「エリカ…ありがとう…」

「えぇ」

「あらあら…ふふふ。…それって告白みたいじゃない?」

「なっ」

「マリアさん、茶化さないで下さいよ…」

「ごめんなさいね?でも、見ているとついつい意地悪したくなってしまって…」

「マリア!?」

「あ、そうだゲンナイ君?わたくしのことは、マリアで良いわよ?」

「?さっきからマリアさんと呼んでいるのですが…?」

「呼び捨てでかまわないって事よ…」

「それは…なんか恐れ多いような…」

「わたくしがかまわないと言っているのだから、かまわないのよ。…わたくしとも「絆」ができたのでしょう?」

「それはそうなんですが…」

「ほら、はずかしがらないで…「マリア」って呼んでみて?」

「……………マリ…ア」

「もっとはっきり」

「マリア!!」

俺ははずかしがりながらも、マリアと呼び捨てにする。

「よくできました」

そう言ってマリアがはずかしがる俺の頭をなでてくる。

「ちょっはずかしいって…」

俺はなんとかマリアの手から逃れようとするが、うまくいかない。

「やめてあげなさいよ」

そう言ってエリカが助けに入ってくれる。

「そうね、このくらいでいいでしょう…」

「…マリアさん、悪ふざけが過ぎますよ?」

「いいじゃない、別に…へるもんじゃないし…それと、また呼び方が戻ってるわよ?」

「勘弁して下さい…」

俺はマリアさんに頭を下げた。

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