ソウカとジョブと主質テスト

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「さて、どうするか……」

 勝負が決まったその夜。僕は自分の部屋でサーシャの攻略法を考えていた。

「ザジ? 入るわよ?」

「サキ? 何の用? まぁ良いよ。入って。」

「おじゃまするでぇ」

「じゃま……。する」

「おじゃまするわね?」

「あぁ。って何でみんながいるのさ?」

「そりゃお前。決まっとるやろ?」

「しんぱ……い」

「心強いでしょ?」

「そりゃそうだけど……。まぁいいや、んで? 何が聞きたいの?」

「「!?!?!?」」

トオカとユーキが驚く。

「わからないと思う? それなりに付き合い長いんだぞ? わかるって。」

「まぁそうよね。あれだけあからさまな秘密を見せられたらききたくなるわよねぇ……」

 サキはため息をついている。

「はぁー」

 僕もため息をひとつついた。
 そうなのだ。
 あの時のサキとサーシャと僕のやりとりを僕を追ってきたユーキとトオカは見ていたのだ。

「はぁー」

 再びため息をひとつついて

「じゃあ何から知りたい? 僕が主質テストを受けない理由? それともサキとの過去? サーシャとの過去?」

「そりゃあなぁ?」

「ぜん……ぶ」

「「………………」」

 僕とサキは目であいずを交わしユーキとトオカに向き直る。

「じゃあまずは僕が主質テストを受けない理由から話そうか」

 そう。
 主質テストにおいて0点はありえない。
 何故なら誰しも必ずどれかの科目に適性があるからだ。
 つまり僕は受けて0点ではなく受けないから0点なのだ。 
 つまり、学校側からすれば僕は「テストを受けない問題児」なのだ。

「あぁそれはいい」

「いら……ない」

「何で? ってサーシャが来たからそれでわかるか……」

「まぁなぁ。さすがに気付くわ。」

「う……ん。あから……さま」

 つまり

「彼女。サーシャから……ってか施設から逃げたんやろ?」

「何が……あったの?」

「「………………」」

 再び僕はサキと目であいずする。

「・・・・・その事については私から説明するわ」

 僕はサキに説明を頼んだ。

「まず確認だけど、ザジの過去はみんな知ってるわよね?」

「あぁ。本人からきいたしの」

「きい・・・た」

「じゃあ最初に言っちゃうけど、その話は半分本当で半分嘘なのよ」

「!?!?!?」

「そうやろな」

トオカとユーキは対照的な反応をした。

「うそ……ついた?」

 泣きそうな顔でトオカが僕をみる。

「ち、違うのよトオカ。ザジは嘘をついてはいないわ」

「そうやろな。あれは嘘をついてる顔やなかった。まぁ何かを隠しとる顔ではあったけどな」

「嘘……ついてない?」

「嘘といえば嘘になるね。僕の記憶は事実とは違うらしいから……」

 僕は笑いながら言う。

「サキ。その先は僕が言うよ。トオカには僕から説明しなきゃ」

「……わかった。それでいいわ。でも……辛くない?」

「大丈夫だよ。僕の事よりトオカを泣かせる方が辛いからね」

「ザジ……お兄ちゃん」

「じゃあ話そうか」

「んっ。」

 僕はトオカの頭を撫でてから話し出す。

「僕が孤児だったっていうのは本当の事。サーシャと同じ施設で育ったのもね。だけど、その先が違うらしい……。らしいってのは僕の記憶だと話した事の方が正しいからなんだけど……」

「記憶と現実が違うっちゅう事やろ?」

「そうなるね。だから僕からすると、今から話す方が嘘になる」

「どういう……こと?」

「んー、つまりね??僕の記憶は植え付けられた物だって事だよ」

「!?!?!?」

「そういう事かい」

 トオカは驚き、ユーキは納得したようだった。

「僕の記憶ではサーシャが実験の対象になったはずなんだけど、実際は僕だったらしいんだ。その実験で僕はある人の存在を植え付けられたらしい。それが」

「私の兄である神太こうたよ」

「「!?!?!?」」

 サキが言った言葉に二人がかたまる。

「そういう事。だから実は昔のサーシャの顔すら覚えていないんだ。ただ、幼なじみだったという記憶があるだけ。だから僕の記憶はあてにならないんだ」

「それが実験だった。とある称号を手に入れるための実験。結果私は兄を失いザジは記憶を失った」

「そんな事があったんか」

「……だからあの時お兄ちゃんは……」

「その話は今はいらないだろ?」

 僕はトオカに笑いかけながら頭を撫でる。

「つまりこういう事やな? あの自分の事を俺やと言っていたんがその神太っちゅうわけやな?」

「「そういう事」」

 僕とサキが同時にうなずく。

「さて……僕の話が終わった所で彼女、サーシャの攻略法を考えようよ。元々そのために来てくれたんでしょ?」

「そやな」

「う……ん」

「そうしましょうか」

 そうして僕らは一緒にサーシャの倒し方について考え始めた。

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