ソウカとジョブと主質テスト

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「「フィールド展開」」

『デプロイメントオブフィールド、バージョンスクール』

 二人の言葉に従いフィールド発生装置から学校を包み込む光が発生する。
 その光がおさまると学校全体をバリアのような半円が包んでいた。

『コンプリート、ファーストジョブセレクト』

「マナマスター」

「ハイスペッカー」

 二人が選んだジョブボールを掴み

装備テイクイン

 その言葉と共にジョブを解放し装備する。
 次の瞬間二人の体を光が包み一瞬で弾け飛ぶ。
 光がおさまると二人の姿がそれぞれサーシャがマナマスター、サキがハイスペッカーにかわっていた。

「いよいよ始まりやな」

 横でユーキが呟く。

「あぁ。始まる。二人の勝負が」

「お前を取り合う戦いや。当人さんとしてはどうなんや?嬉しいか?」

「複雑だよ。はぁー。どうしてこんな事に……」

 話は少し遡る。

・・・
・・


「この勝負に勝ったらザジは連れて行きますわ」

 突然だった。
 彼女、サーシャが会場であるこの学校に着いた瞬間いきなりいいはなった。

「な、何を言っているの!そんなの認められるわけ」

「決定事項ですわ」

 ないじゃないを言わせずサーシャが断言する。

「えーっと、どうしてそんな事に?」

 これは僕の言葉だ。

「サーシャがいくら世界一だからといっても、そこまでの権限はないと思うんだけど・・・?」

 そうである。
 いくらサーシャが主質テスト世界一だからといっても所詮は学生、人一人をどうこうする権利など無いはずなのである。

「そ、そうよ。横暴だわ!」

「連れてく。……だめ」

 サキとトオカが慌てた様子で抗議する。

「たしかになぁ。それはちと横暴やと思うわ」

 珍しくユーキの機嫌が悪い。サーシャに対して言外に圧力をかけている。

「校長の許可を貰いましたの。厄介払いが出来ると喜んでいましたわよ?」

「そんな……」

「校長……許可……」

 その言葉にサキとトオカが青ざめた。

「なるほど。そういう事かい」

 そういう事。たしかにそういう事なのだ。
 この学校は俺以外主質テストが全生徒550オーバーのエリート校。
 十位以下の差が十点も無いのだ。
 そんな中で俺だけ0点。平均点を下げる問題生徒と言うわけだ。

「もうすでに転校手続きはすんでいますの。後は勝負に勝つだけですわ」

 凄い自信である。自分が負けると全く思っていないのだ。

「上等じゃない……」

 小さくサキが呟いた。

「上等じゃない! やってやるわよ!」

 サキがサーシャを指差して叫んだ。

「そうこなくてはですわ。ただ勝つだけでは面白くありませんもの」

 そう言うサーシャは笑っていた。

「では」

「えぇ」

「「勝負」」

「ですわ!」「よ!」

 二人が同時に叫んだ。
 その後会場となる学校の中心、中庭で二人は対峙して開始時刻を待った。

『正午です。ジョブファイトを開始して下さい』

 審判役も兼ねている映像記録用ロボットからアナウンスが流れる。
 その言葉を聞いた二人が同時に叫ぶ。

「「フィールド展開」」

・・・
・・


 そして今にいたるというわけだ。

「しっかし、ホンマ罪作りな男やなお前は。男を取り合ってジョブファイト。しかも学生。こんなん史上初やない?」

 ユーキがいやみを言って茶化す。

「罪作りって……。そんな言い方するなよ。傷付くぞ?」

 さすがの僕もあんな事があった後なので少しへこんできた。

「よしよし。……泣かない……で?」

 泣きそうになった僕をトオカが慰めてくれた。

「っはぁー。言ってるそばからこれやもん。ホンマ天然ジゴロやな」

 またユーキが茶化す。

「ジゴロはないだろ? ってか天然でもない」

「天然やないなら計算か? 全て計画通りなんか?」

「それも違う! 僕は普通に接してるだけだ!」

「そんな事より動いたで。サキが仕掛けた」

「!?!?!?」

 俺は上を見上げた。すると半円になっているバリアの上のスクリーンにうつるサキが、まさに今サーシャに仕掛けた所だった。

「んでどうなんや? 実際サーシャは強いんか? 一対一でマナマスター使うからには得意なんやろ? マナマスター。」

 そう。
 マナマスターは魔法魔術が基本となる「魔」属性。
 サキのハイスペッカーは「戦」属性。
 相性が悪いのだ。
 それに

「サーシャはマナマスターはあまり得意じゃなかったはずだよ。いっつもハイスペッカーでおしていた。僕の記憶が正しければね。」

 そう。
 記憶が正しければなのだ。
 僕が知っているのは今の彼女じゃない。

「多分得意になったんじゃないのかな? そうじゃないとしたら」

「作戦か」

 ユーキが言う。
 そして僕はジョブファイトのルールを思い出していた。

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