ギャルゲの世界で二重人格!

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第八話

「ぷはぁ……」

 部屋に戻ってきた俺は、そのままベッドにダイブした。

「緊張したぁ…………どこかおかしくなかったかな?」

 さっきの憐華さんと話すのは、どこか緊張した。
 なにか住む世界が違うような感じで、まさしく高貴な人という感じだった。
 会ったことはないけど、王族というのはこんな雰囲気なのではないだろうか?

 一応設定だと、どこかの滅んだ国の王家の血を引いているらしいからな……そう思うのは当然なのかもしれん。
 そうなのっ!? やっぱり住む世界が違うのかなぁ……?
 そこはあれだな……これからお前が合わせて行って、相手にも合わせてもらえばいいんだよ。
 そんな簡単に言うなよ。
 忘れるなよ? この世界はギャルゲが元になっている世界で、お前は主人公で彼女はメインヒロインだぞ? お前さえしっかりしていれば、自然とうまくいくに決まっている。
 それは……まぁ疑っているわけではないんだけどさ? 本人を目の前にすると、どうしても……な?
 わからなくはないがな…………すべては気の持ちようだぞ? 水泳だって緊張とかで他人やその場の雰囲気にのまれたらうまくいかないだろ?
 ……確かにそうだな。
 だろ? だから、結局は慣れの問題なんだよ。
 ……そういうもんかね?
 そういうものだよ。

「うーんっ」

 寝返りをして仰向けになる。

「ふわぁ……」

このままひと眠りしてしまいそうになるほど、どこか眠い。
 意識がまどろんでいて、心地よさに身を任せてしまいたくなる。

「1時間くらいなら、大丈夫かな……?」

 俺の意識はそのまま落ちて行った。

・・・
・・


 …き…っ! お…ろっ! おきろっ!

「はっ!? 今何時だ!?」

 ようやく起きたか。もう時間になるぞ?
 マジで!? 今何時!?
 18時48分だよ。
 あと10分ちょっとしかないじゃん!? なんで起こしてくれなかったのさ!
 俺はちゃんと呼びかけたぞ? 起きなかったのは、お前が自分で思っている以上に疲れてたんだろ。
 そんなに疲れてたのか……? 気付かなかったよ。
 俺としては少し面白い体験ができたから、楽しかったがな……。
 面白い体験……?
 どうやら、お前が寝ている間は俺がお前の体を動かせるらしいぞ?
 ………………マジ?
 あぁ、マジだ。
 それって、何か変になったりしないよな……?
 多分大丈夫だろ? あの神様がやってくれたことだろうし、動かせるって言っても寝返りうったり眼を開けたり軽く手足を動かしたりできるくらいだからな。
 ……そうなんだ。
 ちなみに……

「うわぁっ!?」

 急に俺の手が意思とは関係なしに動く。

 さっき実際に動かしてみて、今気付いたんだが……お前の意識があるときでも、お前の意思に反しない程度なら動かせるみたいだ。
 ……びっくりさせるなよ!? やるとしても先に言ってくれ!
 すまんすまん……ちょっとふざけすぎたな? もうしないよ。
 ……それならいいんだけどさ。
 ただ、この後はコース料理だぞ? 食べ方……ってか、ナイフやフォークの使い方大丈夫か?
 ……自信ないです。
 だろうな。
 ど、どうすればいい?
 大丈夫だよ、さっきのメンバーがフォローしてくれるし……最悪俺が助けてやるよ。
 テーブルマナーできるのか!?
 それなりにはな?
 ……それじゃあ、もしもの時はお願いするよ。
 そんなに気負わなくても大丈夫だぞ? 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥っていうだろ? わからないことやできないことは、その場で素直に言えばいいのさ。
 ……そんなものかな?
 実際、ゲームではそうだったぞ? 何かわからないことにぶつかるたびに、まわりに助けてもらってたよ。
 なら良いのかな……?
 こっちの勝手はわからなくて当然なんだから、緊張しないように難しく考えないほうがいいぞ? さっき言っただろ? すべては慣れだってな。
 ……それもそうだね。
 ……よしっ! なんだかんだで良い時間だぞ、身だしなみを軽く整えてから食堂に向かうぞ。
 わかった。

「まずは鏡で身だしなみチェックと……」

 俺は洗面所に行って鏡の前に立つ。

「………………よしっ! 大丈夫そうだな」

 寝癖などがないことを確認した俺は、着ている服を整えてから部屋を出た。

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