夏の想い出~メモリアルDAYS~

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キャンプと友情のカレー

「とうっちゃ~く!」

「お疲れ~。準備できてるよ?」

 小学校三年の夏休みも一週が過ぎた今日、俺は幼馴染みのこいつと地域主催のキャンプに来ていた。

「調理器具含めて用意してあるとは聞いたけど、まさか寝具関係は持参なんてね」

「おかげでこっちは疲れたぜ。じゃんけんで負けたとはいえ、二人分の布団とかを背負ってきたからな」

 布団を背負うために、わざわざ父親から大きなリュックを借りることになったし、かなりの重労働だった。
 まぁ実際は、近くの駐車場まで車で送ってもらったんだけどな。

「まずは集合してオリエンテーション。その後はグループに別れてテントの作成。それが終わったら夕飯の調理だね。夕飯を食べたら肝試しがあって、九時には就寝だったかな」

「どうせなら小学校の敷地なんかじゃなくて、山とかでキャンプしたかったよなぁ……」

 地域主催のこのキャンプは学校毎に開かれており、三年生は強制参加。
 学校の校庭にテントを作り、夕飯を自分達で作る夏の行事の1つなのだ。

「さてと、荷物は置き場に置いてきたから、オリエンテーション会場の体育館に集まろう?」

「そだな。んじゃ行くか」

 俺は幼馴染みに促されると、二人で体育館へと向かった。

………………
…………
……

「テント設営完了っと」

「お疲れ。意外と簡単だったね」

 現在時刻は午後四時過ぎ。
 これから夕飯を作ると考えると、丁度良い時間だろう。

「お次はおまちかねの夕飯作りだ。学校で一番美味いの作るぞっ!!」

「大きく出たね……けど賛成。もちろんそのつもりだよ」

 学校の先生や地域のボランティアさんが用意してくれている調理場へとついた俺たちは、ここからが本番だとばかりに気合いを入れる。

「カレーの調理に使える時間は一時間半です。それでは始めてください」

 監督の先生が合図をすると、調理場の生徒たちが一斉に動き出す。

「分担は?」

「いつも通り、君が調理で僕が準備」

「オッケー。んじゃ手早く頼むぜ?」

「任せといて。十分以内に終わらせるっ」

 俺と幼馴染みの二人は、家が隣同士なことと、互いの両親が
夜の帰りが遅いこともあり、二人で夕飯を作っていた。
 その際の分担が、今言った調理と準備。
 俺は味見などをしながら料理を作っていく事が好きで、あいつは逆に切るなどの作業が好き。
 うまく噛み合った俺たちは、互いの領分はサポートに勤め、好きな作業を楽しくやれていた。

「やっぱりピーラーがあると早いね。五分もかからなかったよ」

「おめぇの手際がいいんだろうよ。他のグループはまだな所ばっかだぜ」

 幼馴染みは担当である野菜や肉の下準備を数分で終わらせると、俺へとバトンタッチ。
 俺は完璧に下準備されたそれらを用いて、カレーの調理を開始した。

「まずはみじん切りの方の玉ねぎをしっかりと炒める」

 まずは飴色になるまで強火で炒め、玉ねぎの甘さを引き出していく。

「一度玉ねぎを取り出して、肉を炒める」

 適当な大きさに切られた豚バラ肉を多めの油で色が変わるまで炒めていく。
 同時にここで、塩コショウなどの味付けもしておくとベスト。

「そしたら次はジャガイモを炒める」

 肉を入れたままの鍋にジャガイモを追加し、ジャガイモが油でコーティングされるまで炒めていく。

「ここでニンジン。同じように炒めていくっと」

 ニンジンもジャガイモと同じように炒めていき、油でコーティング。

「そしたら、くし切りの方の玉ねぎを投入」

 こちらの玉ねぎは食感を楽しむためのものなので、軽く混ぜたらすぐに火を止める。

「具材がひたひたになる程度の水を入れて……強火で煮込むっ」

 煮込んでいる間は常にかき混ぜて、均等に火が通るように。

「あくを取り除き、ここでカレールー」

 今回は調理時間が短いため、早い段階でカレールーを入れてしまう。

「カレールーか溶けたら、みじん切りの方の玉ねぎを投入。よく混ぜたら火を止める」

 ここで一度火を止めることで、具材に味がしみる。
 煮物系は、冷めるときに味がしみるのだ。

「残り一時間です」

「ペース配分ばっちり。後は火を止めるのと煮込むのを繰り返すだけっと」

 煮込むのと冷ますのを繰り返すことで、簡易的に二日目のカレーの味に近づける。

「へへっ、完璧だぜ」

 俺は鍋をかき混ぜながら、カレーの出来に確信を持った。

………………
…………
……

「調理終了です」

 キッチンタイマーの音がなり、監督の先生から調理終了の宣言がされる。

「お疲れ。今日も美味しそうだね」

「あったりまえよ。俺を誰だと思ってるんだ」

 幼馴染みの言葉に、会心の出来であるカレーを見ながら答える。

「それじゃ、食べよっか」

「あぁ。ご飯の方は先生が用意してくれてるんだろ?」

 今回のキャンプの目的の1つに、飯盒炊飯を体験する事がある。
 これは皆でお米をとぐことから行い、飯盒にセットしたら後は先生が見ていてくれるのだ。

「それじゃ、いただきます」

「いただきますっ」

 学校に備えてあるお皿によそったカレーを、二人で頬張る。

「「んぅ~美味しいっ」」

 作り方の工夫により、ジャガイモとニンジンは柔らかく。
 くし切りの玉ねぎはシャキシャキ。
 肉は豚肉なので、火を通した時間の分だけ美味しくなる。

「「ごちそうさまでした」」

 二杯目からは別のグループのカレーを食べるのが推奨されており、俺のカレーは大人気だった。
 俺はその結果に目を細めると、幼馴染みと喜びを分かち合ったのだった。


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